連載『ハイキュー!!×SVリーグ』は、2024年10月から『web Sportiva』でスタートした。

好評連載【ハイキュー!!×SVリーグ】で全24チームの選手に...の画像はこちら >>

 パリ五輪取材の熱も冷めない間に動き出した企画だった。

男子日本代表はイタリアをあと一歩まで追いつめ、メダルに手を掛けながら"パリの涙"と形容される逆転負けを喫した。しかし五輪競技のなかで最高視聴率を叩き出し、石川祐希、髙橋藍、西田有志などのスターの台頭により、時代の転換期のような気配を見せていた。

 そこで、超人気漫画『ハイキュー‼』と、新たに立ち上がった『SVリーグ』を合体させ、選手たちのバレー人生に迫る連載が始まったのだ。

 一回目の取材は、群馬グリーンウイングスの道下ひなの、髙相みな実だった。道下は『ハイキュー‼』のキャラクターのフィギュア持参で満面の笑み。作品への愛情が強く伝わってきた。

 SVリーグ開幕を控えて、埼玉上尾メディックスは都内で撮影中だった。リベロの岩澤実育は漫画、アニメの大ファンで、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』は7回も映画館に通った強者。インタビューを行なった部屋の室温が上がるほどの"好き度"だった。

 岩澤は今年度の日本代表に選出されたが、他にも取材した選手が代表に入ったのは朗報だった。

 男子代表では山内晶大と永露元稀(大阪ブルテオン)、山崎彰都(ウルフドッグス名古屋)、後藤陸翔(東京グレートベアーズ)、安井恒介(日本製鉄ブレイザーズ)が選ばれ、女子代表では荒木彩花(SAGA久光スプリングス)、長内美和子(Astemoリヴァーレ茨城)、山口真季(KUROBEアクアフェアリーズ)、川畑遥奈(デンソーエアリービーズ)、宮部愛芽世(大阪マーヴェラス)、濵松明日香(埼玉上尾)が入っている。

 振り返って、選手ひとりひとりに感謝したい。

 男女24チームをすべてまわり、約8カ月で60人弱のインタビューを行なった。ひとりあたりの取材時間は平均約30分だったが、バレー人生を掘り下げられた。広島サンダーズの川口柊人や東レアローズ滋賀の谷島里咲など、1時間近く話した選手もいた。

 ヴィクトリーナ姫路の伊藤麻緒、PFUブルーキャッツ石川かほくの細沼綾はアイドル顔負けの容姿も話題になっている選手だが、共に『ミドルブロッカーとして立ちはだかる姿は鬼だろうな』と想像した。エアリービーズの大﨑琴未はケガ後のリハビリ中にもかかわらず、輝く笑顔で応対してくれた。心から復帰を願う。東レアローズ静岡の小野寺瑛輝は、少年時代に経験した東日本大震災の記憶を明かしてくれて、取材者として千金に値した。

 シーズン後、引退を決めた選手もいるが、それぞれが濃厚なバレー人生を生きていた。

パリ五輪前から取材している山内に訊いたことがあった。

――人生で一番、バレーをしていると感じたのはいつでしょうか?

「よくも悪くも、パリオリンピックのイタリア戦は"バレーをしていた"と思います。3セット目、あと1点取りきれなかったわけですが、"まさにバレー"というのを体現できました。結果はよくないほうに出たんですけど。

あと1点取れるか取れないか、というバレーの難しさと面白さを感じました」

 その答えはコートで戦ってきた実感がこもっていた。

 今回の連載では選手だけでなく、各クラブのスタッフにも助けられた。

 ヴォレアス北海道は旭川で、廃校の体育館を練習場に利用していた。交通の便の悪い場所にあったが、人はみんな温かく、市内の中心地まで男性スタッフの車に同乗し、いろんな話を聞かせてもらった。アクアフェアリーズは、女性広報が颯爽と駅まで車で送ってくれたし、アランマーレ山形の広報は空港まで送り迎えしてくれて恐縮した。群馬の女性広報は練習見学中、自分に飛んでくるボールを機敏な動きですべて叩き落し、"くノ一"に守られる戦国大名の気持ちになった。

 訪れた街では、現地の食事も堪能した。どこも甲乙をつけられないほど、おいしい食事ばかりだったが、広島『まるみ食堂』のエビフライ、旭川『らーめんや 天金』の正油ラーメン、名古屋『名北飯店』の麻婆豆腐、富山『ガッツリ!えびすこ』の富山ブラック、『白えび亭』の白えび天丼、金沢の『まいもん寿司』は出色だった。

 そしてVC長野トライデンツの取材では、高遠そば『華留運』でご馳走になったのだが、カウンターにいた女性店員のお孫さんが『ハイキュー‼』の大ファンで、展覧会にも一緒に行ったという。高遠町(現・伊那市)は、筆者の母方の生家がある福島県会津市と結びつきが強く(高遠藩の保科正之が会津藩当主に)、移り住んだ人も大勢いるだけに、会計の際に「ハイキューとSVリーグのおかげで再会できたのかも!」と言われ、時代を超えた縁を感じた。

 連載はいったん終了。原稿は、5月末に発売された「Sportiva バレーボール特集号Vol.3」の本誌と別添付録のビジュアルブックに掲載されている(選手を3人インタビューしたチームの原稿は紙幅の都合上、それぞれ半分ほどに縮小されているので、ぜひwebで完全版を読んでほしい)。

ただ、『ハイキュー‼』が好きなSVリーガーはまだまだ多く、新たに入団した選手もいるだけに......ぜひ、連載第二弾も!

(※)選手の所属は2024-2025シーズン時点のものです。

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