東京競馬場を舞台とした5週連続GI開催のラストを飾るのは、春のマイル王決定戦となるGI安田記念(6月8日/芝1600m)だ。
昨年は香港から参戦してきたロマンチックウォリアーが人気に応えて戴冠を遂げたが、1番人気が勝利したのは2015年のモーリス以来、9年ぶりのこと。
実際、過去10年の結果を振り返ってみても、単勝1倍台の断然人気の馬が何度となく勝利を逃している。2016年のモーリス(2着)、2019年のアーモンドアイ(3着)、2020年のアーモンドアイ(2着)、2021年のグランアレグリア(2着)がいい例だ。
おかげで、3連単の配当はすべて万馬券。10万円超える高額配当が4回も飛び出している。
はたして、今年はどうか。
これといった断然の主役は不在。どの馬にもチャンスがあると言われ、"荒れる"可能性は大いにある。
現に人気どころは、それぞれ不安要素を抱えている。前走の海外GIドバイターフ(4月5日/メイダン・芝1800m)でロマンチックウォリアーを撃破し、GI2勝目を挙げたソウルラッシュ(牡7歳)は、東京競馬場では未勝利。6戦して2着2回、3着1回、着外3回と決して相性がいいとは言えない。
そのソウルラッシュを2走前のGII中山記念(3月2日/中山・芝1800m)で下したシックスペンス(牡4歳)は、前走のGI大阪杯(4月6日/阪神・芝2000m)で1番人気に推されながら7着と大敗。
そうした状況を踏まえて、研究ニュースの藤田浩貴記者もこう言って波乱ムードを匂わす。
「GI馬5頭を含め、多士済々のメンバーが集まった印象があります。しかも、臨戦過程がさまざまで、非常に能力比較が難しい一戦になりましたね」
まさに激戦必至の様相。人気も割れそうな雰囲気で、今年はどういった組み合わせでもそれなりにオイシイ配当が期待できそうだ。
そこで、藤田記者は今回のレースで高配当の使者となり得る馬を2頭、ピックアップした。
「まず注目したいのは、エコロヴァルツ(牡4歳)です。
3歳時はクラシック路線を歩んで、GI皐月賞(中山・芝2000m)7着、GI日本ダービー(東京・芝2400m)8着、GI菊花賞(京都・芝3000m)9着に終わりましたが、その後は距離適性を重視して中距離路線にシフト。再浮上の兆しを見せています。リステッド競走のディセンバーS(12月15日/中山・芝1800m)を快勝すると、中山記念で2着と好走。前走の大阪杯でも10番人気ながら、4着と健闘しました。
マイル戦は、2歳時のGI朝日杯フューチュリティS(2着。阪神・芝1600m)以来ですが、前進気勢の強いタイプで、折り合い面を考えれば、競馬がしやすくなる公算が高いです。となると、さらなるパフォーマンスアップが見込めます。
もちろん、現在の状態面も言うことなし。1週前追い切りではミルコ・デムーロ騎手が騎乗して、長めから負荷をかけて好時計をマーク。今季3戦目でピークの出来にあると思います。
重賞勝ちがなく、実績面では見劣るものの、久々のマイル戦出走が吉と出れば、一気にGIタイトル奪取も夢ではないでしょう」
藤田記者が推奨するもう1頭は、昨年のGI高松宮記念(中京・芝1200m)の覇者マッドクール(牡6歳)だ。
「今回、新馬戦(3着。中京・芝1600m)以来のマイル戦となりますが、年齢を重ねて初速が鈍ってきている印象。その分、距離の融通性は利くようになっていると見ます。
追い込み決着となった昨年末のGII阪神C(2着。12月21日/京都・芝1400m)では、唯一先行して馬券に絡みました。展開や流れひとつで、もう1ハロン延びてもこなせる手応えを感じました。
この春の東京開催は例年以上に馬場コンディションがよく、スプリント適性が求められるレースが頻発。そういった状況も、同馬には後押しになると踏んでいます。
メンバーを見渡すとハナを主張する馬はおらず、先行馬も少数。スプリントGI勝ち馬ですから、スピード能力では最右翼。ラクに先手が取れれば、面白い存在になるはずです」
伏兵陣も食指が動く面々がズラリとそろった今年の安田記念。なかでも、ここに挙げた2頭は人気の盲点になりそうで、ビッグな配当を狙うならオススメだ。