男子バスケ16歳の超大物・白谷柱誠ジャックの現在地とNBAに...の画像はこちら >>

6月13日から行なわれたバスケットボール男子日本代表ディベロップメントキャンプ。2028年ロサンゼルス五輪を目指すチームにおいて、若手有望株の発掘や戦術浸透などを目的としたそのキャンプに、最年少の16歳で呼ばれたのが白谷柱誠(ちゅそん)ジャック(福岡大附属大濠高1年)だ。

中学時代から世代の枠を超えたプレーと存在感を発揮してきた逸材だが、目標であるNBA入りを果たすための課題は何なのか? 

後編:男子バスケ16歳・白谷柱誠ジャックのこれから

【「彼が本当にNBAに行きたいのなら......」】

 白谷が、少なくとも日本においては特別な能力――あるいは「可能性」としたほうがいいか――を持った選手であるのは間違いなく、周囲も彼を着実に育てるべき存在であるというふうに扱っている。

 それは、白谷の身長も少なからず関係している。白谷は現在194cmでディベロップメントキャンプロスターではスモールフォワード(SF)として登録されているが、本人いわく身長の伸びは「止まりかけて」いるそうだ。それを踏まえ、福大大濠高の片峯聡太コーチやトム・ホーバスHCは、白谷がアメリカを目指すのならばガードでのプレーに取り組む必要性を説いている。

「伸びるかどうかわからないんです、身長が」

 白谷が究極的にNBAを目指すうえで今後、どういったものを習得していくことが肝要か問われたホーバスHCは、こう切り出してから話を続けた。

「彼が本当にNBAに行きたいのなら、ボールハンドリング、シューティングといった外のスキルをやっていったほうがいいと思います。(現時点でも)全然、悪くはないです。けど、次のステップはそこですよ。40%の3Pシュート(成功率)とか、ペイントアタックができるとか、そういう2番(SG、シューティングガード)のファンダメンタルが大事だと思います」

 白谷自身は、フィジカル面では負けているとは思っておらず、ディベロップメントに参加している選手たちとも「イーブン」にやれていると自負を示した。一方で、俊敏さやシュート力に関しては「全然、負けている」と現状を認識している。課題として挙げたこうした点は、改善していけばいいというものではなく自身をアメリカ、NBAで勝負ができる俎上にのせるためには、必ず高いレベルに持っていかねばならないだろう。

 体躯や技術と同等に、いや、ある意味でそれ以上に大切なのが「中身」だ。換言すれば「意識の高さ」である。

体の大きさに恵まれる者、群を抜く身体能力を持つ者はバスケットボールの本場、アメリカにはあり余るほどいるというのが現実だ。

 そのなかでふるいにかけられても落とされずに、勝ち残っていくためには飽くなき向上心が必要であろう。白谷の身長がここから大きく伸びることがないのであれば、それはなおさらだ。でなければ、埋もれてしまう。それは、年々新たな才の出現が増えつつある日本代表においても言えることだ。

【「第2の八村塁」と呼ぶには早いが、潜在能力はピカイチ】

 このことは昨シーズン、メンフィス・グリズリーズとの2ウェイ契約を結び、日本史上4人目のNBAデビューを飾った河村勇輝が証明したといっていい。彼は身長172cmと到底、体格に恵まれているとは言えないにもかかわらず、高校、Bリーグ時代から見せていた人一倍の向上心と妥協を許さない信念、コーチやチームメートらと積極的にコミュニケーションを取る姿勢などで身体的不利をカバーし、世界最高峰の舞台に立つことを実現させた。

 ホーバスHCは白谷という人間の印象として「すごく優しい」と述べた。もちろん、一般生活において優しいことに悪いことなどない。が、最高峰のレベルでバスケットボールの選手として競争を勝ち抜き、名を馳せていくにはがむしゃらなまでの闘争心を要するだろう。

「年下というのもあるので遠慮している部分もあるんですけど、自分が年下だからこそできること、一番に走ったりエナジーを出したりっていうのを心がけてはいます。

 優しすぎるとは言われるんですけど、その分、試合中はもっとアグレッシブになって相手を潰そうという気持ちで、マインドセットを変えてやっているので、そこに関してはどんどん気持ちを強くしていきたいというのもありますし、オン・オフの変え方に気をつけていけたらなと思っています」

 ホーバスHCが「優しい」と評していたことを踏まえて、自身の競技における精神面について問われた白谷はこのように話した。

柔和な表情の彼から「潰そう」という刺激的な言葉が出てきたのはいいことだ。

 四日市メリノール学院中学の山﨑修コーチは、「卒部式」で彼くらいの素材の選手はアメリカには「ざらにいる」という厳しい言葉で、白谷を送り出した。白谷がきつい練習をおざなりにすることもあったことも、同コーチはつけ加えている。

 無論、白谷がNBAへ行くことを希望として掲げ、彼がそれを願ってもいい才の持ち主だからこそ、そのように伝えたに違いない。

 メディアはなかば無責任にも、「第2の八村塁(NBAロサンゼルス・レイカーズ)」、「怪物」といった惹句で白谷を表現する。

 おそらくそうした表現を用いるのは、少し早い。あくまで本当の勝負は、これからだからだ。

 もちろん、白谷のこれからの成長過程を見届けることは周囲からすれば楽しみであり、世界の強豪と伍して戦うことを目標とする日本代表チームにとっても重要な選手となってくるかもしれない。

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