J1はシーズン後半戦がスタートしたところ。勝ち点差の少ない混戦状況ではあるが、徐々に上位と下位の差は開いている。

そこで気になるのは残留争いだ。下位6チームの状況を追った(数字は6月15日の第20節終了時)。

【Jリーグ】早くも気になるJ1の残留争い 下位6チームの現状...の画像はこちら >>

【厳しい状況の横浜F・マリノス】

 2025シーズンのJリーグもあっという間に前半戦を折り返し、6月の代表ウィークを挟んで後半戦がスタートした。今季は例年と比べ大混戦のリーグテーブルとなっており、クラブW杯開催に伴って設けられた6月の特別登録期間でも積極的に補強へ動くクラブなど、各クラブの目指すところは徐々に見えてきている。

 そんななかで、「残留」が現実的な目標となってきているクラブもある。その筆頭は、現在最下位の横浜F・マリノスだろう。今季ここまで19試合を消化して3勝5分11敗で勝ち点14。消化試合数が1試合少ないものの、19位に5ポイント差をつけられている。名門のここまでの大不振は予想外である。

 4月18日にスティーブ・ホーランド監督を解任し、後任にはヘッドコーチを務めていたパトリック・キスノーボが就任。その後もACLE準々決勝や過密日程のなかで修正は効かず、リーグ5連敗と黒星が続いた。

 それでも5月21日のヴィッセル神戸戦から割りきったカウンター主体のスタイルに舵を切ると、翌第18節鹿島アントラーズ戦、第19節FC町田ゼルビア戦で2連勝。首位を叩いて復調の兆しを見せ、代表ウィークの中断期間に入った。

 しかし、天皇杯2回戦ではJFLのラインメール青森FCに敗れ、後半戦1戦目となる第20節では残留を争うアルビレックス新潟に0-1で敗戦。すると、キスノーボ監督が退任となり、大島秀夫ヘッドコーチが暫定指揮を執ることになった。後任監督の話はまとまっていない。せっかく現実路線で復調の目処が立つかと思われたが、未だクラブとして方向性が定まらない。

 さらに追い討ちをかけるように、今夏にアンデルソン・ロペス、ヤン・マテウスという主力流出のニュースも報じられた。この状況で夏の補強までどうしのぐのか。現場とフロントが一枚岩になれなければ、より厳しい状況に追い込まれてしまうだろう。

【チャンスの数が少ない横浜FC】

 昇格組の横浜FCは、2020シーズンのJ1以降、昇格・降格を繰り返す、いわゆるエレベータークラブとなっている。今季残留を目指すなかで、現在は5勝4分11敗、勝ち点19で19位となっている。

 ただ、残留圏の17位FC東京とは勝ち点差1(FC東京は1試合未消化)しかなく、16位湘南ベルマーレとも勝ち点差は3しかない。1試合の結果によっては、順位が3つは上がる混戦状態にある。

 ここまで21失点と全体で9番目に少なく、守備に関しては上位クラブと比べても遜色ない数字。四方田修平監督が整える5-4-1の守備ブロックは一定の成果を挙げている。

課題となっているのは、やはり攻撃面である。

 冬の補強ではFWは鈴木武蔵のみと、お世辞にも十分とは言えなかった。それでも3月にガンバ大阪からMF山田康太、湘南からFWルキアンというタレントの獲得に成功した。しかし、20試合で13得点は東京ヴェルディと並んでリーグ最少得点。複数得点はわずか2試合しかない。期待のルキアンも3得点にとどまり、得点力不足の解決には至っていないのが現状である。

 スタッツを見るとシュート総数19位、チャンスクリエイト数20位と、わかりやすくチャンスの数が少ない。降格圏を抜け出すには、築き上げた守備のベースを生かしながら、どのようにチャンスの数を増やしていくかだろう。

【移籍・補強が今後を左右しそうな2チーム】

 消化試合数が1つ少ないものの、横浜FCと同じく勝ち点19で18位につけるのが新潟である。シーズン序盤は守備で粘れず、後半に失点を重ねて勝ち星をことごとく逃してきた。それでも第9節神戸戦の勝利をきっかけに、第13節にはサンフレッチェ広島にも勝利するなど、粘り強く勝ち点を積み重ねてきた。

 しかし、6月の補強期間にFW小見洋太を柏レイソルに引き抜かれ、さらには大卒ながらすでに欠かせない主力DFである稲村隼翔が、今夏でセルティックへ移籍という報道が出た。

 稲村は第20節横浜FM戦で、見事な左足のロングフィードからダニーロ・ゴメスのゴールをアシストしたばかり。

遅かれ早かれ、欧州クラブに引き抜かれていく逸材ではあるが、この苦境に出ていかれるとなればチームとしては大ダメージだ。決して潤沢ではない予算のなかで、攻守の主力を引き抜かれた穴をどう埋めることができるか。

 新潟と勝ち点差1で残留圏の17位につけるのがFC東京。松橋力蔵新監督のもと、新しいスタイルに挑戦するも定着に難儀し、不安定な戦いが続いてきた。とくに守備に関しては、28失点とリーグ最多。得点19も決して多くない。攻守に歯車が噛み合っていないのが今の順位を表わしている。

 第20節セレッソ大阪戦では、これまで続けてきた3-4-2-1のシステムから4-2-3-1に変更。2-2で引き分けたものの、ミドルブロックの守備からのカウンターが、マルセロ・ヒアンらタレントのポテンシャルを引き出していた。

 6月の補強期間では、不足していたSBにハノーファーから室屋成が5年ぶりに復帰。さらにカタールのアルワクラSCからDFアレクサンダー・ショルツ、浦和レッズからFW長倉幹樹を獲得するなど、積極的にピンポイントの補強を行なった。守備が整えば、浮上できる兆しは見えてきそうだ。

【まだまだ混戦。連敗であっという間に降格圏】

 開幕3連勝でスタートダッシュに成功した湘南だったが、3月中旬以降は複数失点が続いて、気がつけば16位で降格圏が目前に迫っている。深刻なのは得点力不足だ。第10節以降、1失点でも喫すれば勝てない状態がずっと続いている。

 そんななか、FW福田翔生が今夏に海外クラブへ移籍の可能性が出てきている。もちろん、降格圏に入らないためには守備の改善も必須である。ただ、それ以上に勝ちきるための得点源の確保は急務となりそうだ。

 勝ち点23で15位の名古屋グランパスは、絶望的なシーズンスタートから立て直し、攻守が噛み合うようになってきている。第20節神戸戦に敗れるまで、国立で行なわれた第14節清水エスパルス戦の3-0での勝利を皮切りに3勝3分と6試合負けなしだった。下から這い上がってきた名古屋は、この勢いを失わなければさらなる浮上の可能性は大いにある。

 今季は名古屋より上のクラブもまったく安心できる状況ではない。1試合未消化の18位新潟と、10位清水の勝ち点差はたった7ポイントしかない。

この間にいるクラブは、連敗をしようものならあっという間に降格圏に飲み込まれる可能性は十分にある。

 今夏にどれだけ補強できるかが、残留争いの行方を占うのは言わずもがな。その移籍ウインドーが開く7月7日(月)までの3~4試合を、各クラブが今の戦力でどのように乗りきるかも見逃せない。過酷なサバイバルが、ここから佳境に入っていく。

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