ロッテ寺地隆成インタビュー 後編
(前編:寺地隆成が語る現状と課題 「一番大事にしているのは試合で感じること」>>)
攻守で存在感を発揮し、ブレイクを予感させるロッテのキャッチャー、寺地隆成。インタビューの後編では、バッティングで大事にしていることや手本としているバッターなどについて聞いた。
【剣道の経験も生かした"縦振り"の強み】
――左打者として右腕の使い方が非常に巧みな印象がある一方、左腕はあまり使っていないように見えます。どのような意識でスイングしていますか?
寺地隆成(以下:寺地) 左腕は極力使いたくないんです。前でさばきたいタイプなので、右腕だけでなんとかしたいなと。インパクトの瞬間だけ、左腕で押すイメージです。ミートポイントが後ろ(ボールを捉える位置が体に近くなる)になってしまった場合でも、ガーンと打つのが自分の特徴でもありますが、詰まったりするのであまり体の近くでは打ちたくないんです。
――右肘の抜き方が上手く、インコースの球をさばくのが得意に見えますが、いかがですか?
寺地 いや、それが全然得意じゃないんです(笑)。「インコースに来た球はくるっと回りながら打てればいいかな」くらいのイメージですし。逆に、アウトコースはめっちゃ好きです。
――引っ張った打球も逆方向(センターから左)の打球も伸びるのは、インパクトの瞬間の左腕の押し込みが効いている?
寺地 そうですね。特に逆方向に打ちたい時は、右腕を先行しつつ、左腕による最後の押し込みが大事なのかなと。インパクトの瞬間までほとんど左腕は使いませんけどね。
――お父様は世界選手権で3度優勝されている剣道家ですが、小さい頃に剣道を教わる機会はありましたか?
寺地 小学生時代に基礎だけは習っていました。僕はバットを振り上げるアッパースイングではなく、上から下に振り下ろす"縦振り"なので、同様に縦振りである剣道の動作が活かされているんじゃないかなと。
アッパースイングだとミートポイントが短くなりますが、縦振りは早い段階でボールの軌道にバットを入れるので、前・中間・後ろとミートポイントを長く確保できますし、ボールを芯で捉えやすくなってライナー性の打球が打ちやすくなります。それが縦振りの強みだと思っています。
――いつ頃から縦振りを取り入れましたか?
寺地 高校(明徳義塾高)に入ってからですね。監督さん(馬淵史郎監督)に教えてもらってから取り入れています。調子がいい時はミートポイントを長く保てるのですが、悪くなってくると短くなってしまい、ボールを芯でとらえにくくなってしまう。なので、ミートポイントを極力長くすることを常に意識しています。
【バッティングで一番大事にしていること】
――強い真っすぐに対応できている印象です。最短距離でボールをとらえやすい縦振りの作用と考えていますか?
寺地 それもありますが、一番は意識の部分じゃないですかね。ピッチャーが一番多く投げるボールは真っすぐですし、それを弾けないと。特にボールが強いピッチャーに対しては、真っすぐを弾けなくなってくると、どうしても変化球を当てにいってしまいがちです。
――タイミングは、基本的に真っすぐに合わせている?
寺地 ピッチャーによりますね。140キロ後半や150キロを超えてくるピッチャー、真っすぐが多いピッチャーであれば真っすぐに合わせますが、日本ハムの加藤貴之さんや山﨑福也さんのような変化球の多い左の技巧派の場合は、あまり真っすぐが来ない。インコースを見せてから外の曲がり球という配球だったり、クイックも入れてくるので、なかなか自分の"間"では打てません。
――バッティングで一番大事にしていることは?
寺地 絶対的にタイミングです。タイミングが合わなければ、どれだけいいフォームで打っても差し込まれて全部ファウルになってしまいます。あと、空振りは本当にしたくなくて。タイミングさえ合わせられれば、あとはなんとかなるイメージがあるので。
それと、トップに位置をしっかり作ることです。少しでも前に寄ってしまうと、トップの形を維持できずにスイングに入ってしまうので。ただ、一番はやっぱりタイミングですね。
――どのピッチャーに対しても、ある程度タイミングを合わせていく自信はある?
寺地 少しずつですが、昨年に比べると上達してきたかなと感じています。
【手本にしているバッターは?】
――対右ピッチャー(打率.233)に比べ、対左ピッチャーの打率(.333)のほうが高いですが、これに関してはどう考えていますか?
寺地 対左ピッチャーの打率が高いのは、打席数が少ないこともあると思うのですが、どうなんですかね......あまりわかりません(笑)。ただ、左ピッチャーに対して苦手意識はないですし、ピッチャーの右・左を特に意識していることもないです。
――6月に入ってからは2番での出場が続いていますが、1軍で下位をまかされる時との意識の違いは?
寺地 チャンスで回ってくることが多くなりましたが、打順によって意識が変わることは特にないです。
――お手本にしているバッターはいますか?
寺地 左バッターで挙げると高橋由伸さん(元巨人)です。面が長くて(ミートポイントが安定し、バットの芯でボールをとらえる時間が長い)、タイミングを合わせることがめちゃくちゃうまいですよね。
右バッターで挙げると、和田一浩(元西武、中日)さんです。藤川球児さん(現阪神監督)から打ったセンターへのホームランとか、めちゃくちゃ打球が伸びていたじゃないですか。センター前ヒットかなと思ったら、そのまま伸びてスタンドに入った。あれはすごすぎます。
――ライナーを打つのが理想ですか?
寺地 そうですね。あれくらいの低弾道でスタンドまで届くのであれば、打ち上げる必要はないですから。
――4月18日、楽天モバイルパーク宮城で早川隆久投手から打ったプロ第1号ホームランは、けっこう低弾道でしたね。あれは理想に近いバッティングですか?
寺地 理想ですね。インコースにきたボールだったのですが、あの時はたまたまくるっと回れたんです。
――その試合では、その後の打席で2本目のホームランを打ちました。右腕をうまく使って拾い上げた技ありの一打でしたね。
寺地 その打席では真っすぐを狙いつつ、浮いた変化球をとらえられたら、という感覚でいて、たまたまボールが浮いてきてくれたので打てたのかなと思います。試合に出るためには守りはもちろん、打つことも大事ですし、これからもどんどん打っていけるように頑張ります。
【プロフィール】
寺地隆成(てらち・りゅうせい)
2005年8月19日生まれ、東京都出身。177cm・82kg、右投げ左打ち。捕手。小学校1年生の時に硬式野球を始め、中学時代は城東ボーイズでプレー。3年秋に明徳義塾中学校に転校し、明徳義塾高校に進学。2年夏の甲子園に4番・サードとして出場。同年の秋に捕手に転向した。