浦和レッズは3連敗。2年ぶりのクラブワールドカップは、あっけなく終わりを告げた。

 初戦はリーベル・プレート(アルゼンチン)に1-3、2戦目はインテル(イタリア)に1-2、そして3戦目はモンテレイ(メキシコ)に0-4。どの試合も、スコア、内容ともに「完敗」と言わざるを得ない戦いだった。

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 モンテレイ戦を終えて、浦和のマチェイ・スコルジャ監督は「今日の目標は、より攻撃的にいくことだった。チャンスは作れたと思う」と強がった。

 だが、たとえばシュート数だけ見ても、浦和の12に対してモンテレイは17。枠内シュートも、浦和の1に対してモンテレイは7。個人の技術、判断のスピード、戦術の浸透度など、さまざまな面で圧倒的な差を見せつけられたというのが、試合を現地取材した側の率直な感想だ。

 問題点は、いくつもあるのだろう。3試合を通して、メンバーはひとりしか変わらなかった。リーベル戦、インテル戦で右SBを務めていた石原広教が、モンテレイ戦では関根貴大に変わっただけ。インテル戦終了時点で敗退が決まっていたこともあり、スコルジャ監督はモンテレイ戦前日会見で翌日のメンバー変更を示唆したが、その動きは最小限にとどまった。

 選手層の薄さもあるだろうが、指揮官の思考が硬直したという見方も否定できない。

スコルジャ監督は「我々には国際経験が必要」と話したが、時間を必要とする経験不足をどうにか別の形で補うのが外国人監督に求められる資質と考えると、その手腕にも疑問を感じざるを得ない。

 とはいえ、国際経験が不足していたことは事実であり、世界との差をイヤと言うほど感じさせられた大会となった。では、選手たちはどのあたりにそれを感じたのだろうか。

 たとえば、原口元気。2018年のロシアワールドカップでゴールを奪い、ドイツで長年さまざまな状況に対応してきた彼は、落ち着いていた。

「それはもともと、そんなに意識していない。『名前負け』みたいな感じはしていなくて、やってやろうっていう気持ちがすごく強かった。リーベル戦はクロス1本に合わせてくるようなクオリティにやられた。そういう部分は本当にいい勉強になったと思う」

【原口が気づいた仲間の異変】

 原口が今大会で唯一、出場したのはリーベル戦の88分から。ピッチに立った時間は短く、多くの時間をベンチから見守ることになった。

 ただ、外から眺めている状況のなかで、仲間たちの異変にも気づいていたという。

「試合(リーベル戦)後に(チームメイトに)話したりもしたけど、固くなっていた選手も何人かいた。自分では気づいていなかったけど。

でも、それは自然なことだと思う。そんなことも想定をしていたなかで、相手のクオリティで失点してしまって......。『ありがちな展開だな』と思いながら見ていました」

 選手が固くなることも、相手がクオリティで上回ってくることも、原口は想定内だったという。だが、その想定を覆す戦いはできなかった。それが現実だ。

 4失点したモンテレイ戦で、GK西川周作は気を吐いた。

 34分に2失点目を決められると、フィールド陣のムードは一気に落ち込み、下を向いた。それでも、西川は後方から味方を鼓舞し続け、83分にはスーパーセーブも見せた。

 39歳の守護神は、世界との差を感じられたこと、そのものが「この大会参加の収穫だった」と言う。

「世界との差を感じられたことがひとつの収穫で、この差をどう埋めるかが大事。Jリーグでどうプレーするかが大事で、ゆるい、ぬるいプレーを続けているようでは、結果は出ないと思う。Jリーグで大丈夫でも、こういう場所では通用しないことは、全員が感じたと思います。

日本に帰ってどれだけ高い意識で、与えられた環境のなかで、自分たちがやるか、やらないかだと」

 モンテレイ戦の1失点目、3失点目のミドルシュートは、確かにJリーグでは見ない類(たぐい)のものだった。しかし、Jリーグでは滅多に経験できないようなピンチであっても、国際大会では防げるように、環境のせいにせず、まずは自分たちに意識から、という話だった。

【どんどんシュートも打てばよかった】

 また西川は、試合中に感じたことのひとつとして「対応力」を挙げた。

 クラブワールドカップでは、Jリーグとは違うボールが使用されている。そのことに関しての質問が出た際、今大会のボールは遠くに飛ばすことや強いシュートに向いており、モンテレイ戦で関根に蹴ったロングボールは想定外に長くなったと、西川は説明する。そのような性質のボールに3戦目で慣れてきたのならば、もっとできることがあったはずと言う。

「こっちもどんどん、シュートを打てばよかった。いいシュートを持っている選手はいるので、もっと足を振るとか、入らなくてもシュートを打つことで、流れは変わるので。今後はそういう試合運びをリードしていきたいと思っています」

 松本泰志はリーベル戦で80分から、インテル戦で79分から、ラストのモンテレイ戦で46分から出場した。対戦相手の印象を聞くと、実にシンプルだった。

「(ピッチの)外から見ていた感じでは、組織というよりも個の能力が高いと思いました」

 モンテレイ戦では、前半に2本のミドルシュートを決められた。

「自分ではああいうのを打てないと思う。

そこの能力の差だったり、シュートだけじゃなく、ボール運びや守備でも、(相手は)申し分なかったです。ドリブルも取れそうだなと思ったら、チョンと足が出てきたりして、そういう個人としての能力の差を感じました」

 松本はクラブワールドカップを経験して、個人能力の差を痛感したようだ。

 ワールドカップ最終予選の結果を見てもわかるとおり、日本代表のアジアでの実力は抜きん出ている。しかし、その結果を残しているメンツはほとんどが海外組で、優秀な日本人選手は国内を飛び出し、Jリーグは空洞化していると言われている。その問題が浮き彫りとなって、あらためて可視化されたような大会でもあった。

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