石川祐希のAttack The World vol. 13 後編

(前編:ペルージャで感じた「力不足」と出番が減ったことでの新たな気づき>>)

 コッパ・イタリア、リーグの優勝を逃したペルージャだったが、欧州チャンピオンズリーグ(欧州CL)を制してシーズンを締めくくった。石川祐希は、シーズン全体としては控えに回ることもあったなかで、出場機会が多かった欧州CLをどのように戦っていたのか。

さらに、来季の目標も語った。

石川祐希が「大きな価値がある」と誇る欧州CLのタイトル 周囲...の画像はこちら >>

【リーグの結果は「最低限」の3位】

――今季は「全タイトルを獲る」という目標を掲げていたと思いますが、欧州CLは制したものの、リーグはプレーオフ3位、コッパ・イタリアは準決勝敗退となりました。

「コッパ・イタリアの時は、(オレフ・)プロトニツキ選手(ウクライナ代表)がケガをしてしまっていてサイドの控えがおらず、チームとして難しい状況にありました。個人的にもあまりいいプレーはできなかったです。もちろん負けてしまったことの悔しさはありますし、『もっといいプレーができたはずだ』とか、たくさん思うことはあります。

 その頃はまだリーグの前半戦が終わったくらいで、僕も完全にペルージャの一員として戦えていなかったというか、コートに入っている時の感覚がこれまでと違っていたように思います。勝たないといけないプレッシャーもあり、自分のよくないところが目立ってしまいました」

――リーグ戦は昨季プレーしていたミラノと同じ3位。ただ、昨季の3位と、今季のペルージャでの3位は、石川選手にとっては違う思いがあるのではないでしょうか。

「そうですね。昨季の3位は『うれしい3位』でした。でも、今季の3位は『最低限』です。うれしいよりも、悔しい気持ちのほうが大きいです。(3位決定戦で)勝って終われたことはよかったですけど、結果だけ見るとうれしいとは言えない。

やはり、目指しているものとは違った結果でしたから」

【欧州CLでチームを優勝に導く活躍】

――欧州CLでは、その悔しい思いをぶつけた、という部分もあったのでしょうか。

「悔しい思いをぶつけたわけではありません。シーズンを通して欧州CLを戦うなかで、僕が出場する機会が多かったので、『試合に出続けた大会』という印象のほうが強いです。自分が結果を残して勝っていったので、準決勝まで上がった時に『準決勝以降も出たい』と準備していました。

 結果的に、(カミル・)セメニウク選手(ポーランド代表)がケガをしたこともあり、僕とプロトニツキ選手がメインとなって試合をすることになりました。そうして、チームとしても僕個人としても初めての欧州CL優勝を経験することができました」

――準決勝ではMVPに輝き、決勝でもすばらしいプレーを見せて勝利に貢献しました。プレーの自己評価はいかがですか?

「準決勝は全体的によかったと思います。決勝は前半があまりよくなかったですが、試合が進むにつれて調子が上がり、スパイク決定率も上がってきました。第4セットの最後にミスをしてしまったんですけど、しっかり立て直して第5セットを戦えたところは評価できると思います」

――その第5セットでは、マッチポイントを握った場面でサーブが回ってきましたね。どんな気持ちでしたか?

「ただ『勝ちたい』という思いだけでした。正直に言うと、少しだけサービスエースを狙いにいったんですよ。エースにはならなかったですけどね。ラリーになってバックアタックのチャンスがきたんですけど、決められませんでした(笑)。

あそこは、しっかりと締めたかったですね」

――最後の長いラリーを制して勝利が決まると、石川選手はじめ、全員が喜びを爆発させていましたね。

「ペルージャとしても初めての欧州CL優勝でしたからね。(シモーネ・)ジャネッリ選手(イタリア代表)も、アンジェロ(・ロレンツェッティ)監督も今回が初めての優勝でしたし。僕は1年目ということもあって実感がわかない部分もあったんですが、みんながものすごく盛り上がっていたので、『それだけすごいことをしたんだな』と感じました」

【日本の男子選手として初の偉業】

――最後、石川選手は足をつっていましたね。

「そうですね。準決勝でも足をつって途中でコートを出てしまったんですが、ハードな試合の連続でした」

――日本の男子選手として、初めて欧州王者になりました。

「僕が一番最初に欧州CLで優勝を経験した日本の男子選手になった、という事実はもう変わらない。それは単純にうれしく思います。誰もやったことがないことを僕が最初に成し遂げたことは、大きな価値があると感じています」

――今季にやり残したこともあると思います。来季はどんな目標を持って戦いますか?

「コッパ・イタリアとリーグ戦のプレーオフを、しっかりと勝ちきることです。そのために、まずはすべての大会で決勝に進むことを目標にしたいですね。もちろん、その先には優勝がありますが、先を見すぎることなく一歩ずついきたい。

今季も決勝まで進んだ欧州CLは優勝できているので、まずは決勝に進むことが大事だと思っています」

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのペルージャ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍している。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場し、29年ぶりに決勝トーナメントに進出。2024年のパリ五輪でもキャプテンとしてチームをベスト8に導いた。

公式X(旧Twitter):@yuki14_official>> 公式Instagram>>

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