【MLB】「菅野智之は放出される」トレード期限まで1カ月 オ...の画像はこちら >>

【「最初の2カ月間は、すばらしかったと思う」】

 MLBのトレード期限(現地7月31日)まであと約1カ月――。今年は誰が所属チームを変えることになるのか、日本人選手の動向も気になるところ。なかでもトレードに含まれる可能性が少なからずありそうなのが、ボルチモア・オリオールズで先発ローテーションを守ってきた菅野智之だろう。

 メジャー1年目の菅野は最初の12回の先発機会でチーム最多タイの5勝、クォリティスタート(6回以上の投球回で自責点3以下)は同最多の6度と好投。35歳の"オールドルーキー"は、一時は地元メディアからオールスター候補と目されるほどの働きぶりだった。それと同時に、年俸1300万ドル(18億8500万円)の1年契約で今季終了後にFAになること、オリオールズが低迷していることなどから、プレーオフを目指すチームにシーズン中にトレードされるのではないかという予測も囁かれてきた。

 6月に入ると少々疲れが出たか、5度の先発機会で防御率6.20と調子を崩しているのは気になるところ。それでも『BaltimoreBaseball.com』の大ベテラン記者、リッチ・ダブロフ記者は「私はスガノはトレードされると思っている」と話す。

 その理由はどこにあるのか? 6月下旬、ダブロフ記者に菅野とオリオールズの状況を詳しく説明してもらった。

「最近のスガノがやや苦しんでいるのは、相手チームが"スガノ対策"を見つけたのか、あるいは彼自身がアメリカの暑さへの対処方法を見つけきれていないのか。そのどちらかか、あるいは両方ではないかと考えている。6月に入ってスガノの全登板を現場で見てきたが、正直、最近は力を出しきれていない。

 ただ、最初の2カ月間のピッチングは、メジャーのルーキーとしてすばらしかったと思う。チームがドン底だった時に、状況がそれ以上はひどくならないように食い止めていた。スガノの頑張りがなかったら、オリオールズはもっと厳しい状態になっていたかもしれない。

 現在のオリオールズのチーム状態は、開幕直後よりも上向きだ。そんななか、スガノがチームと足並みをそろえるようにレベルアップできていないのは残念ではある。

 今後を予想すると、やはりスガノはトレード期限までに放出されると見ている。買い手が見つからない事態にならない限り、オリオールズの近未来を考えれば、それ以外の選択肢は考えにくいというのが正直なところだからだ」

【菅野を取り巻くオリオールズの事情】

【MLB】「菅野智之は放出される」トレード期限まで1カ月 オリオールズ番記者が語る「チーム建て直し」のシナリオ
チーム事情も踏まえて菅野のトレードの可能性について語ってくれたダブロフ記者 photo by Sugiura Daisuke
 メジャーでは、シーズン中に強豪チームに引き抜かれる選手を "A Hired Gun(雇われガンマン)"と称すことがある。後半戦の戦いを期間限定で助ける存在という意味で、そのような形でトレード候補に挙がるのは名誉でもある。

 菅野の場合も移籍とすれば、もちろん戦力として期待されてということになるのだろう。それと同時に、オリオールズの現状もシーズン中に"売り手"になることをサポートする。

 過去2年連続プレーオフに進んだチームは、今季は6月30日現在37勝47敗と苦戦。主砲アンソニー・サンタンダー、エースのコービン・バーンズが抜けた穴を埋められず、このままではプレーオフ進出は難しい。だとすれば、来季以降をにらんでのチームづくりを視野に入れるのは、当然の流れだろう。ダブロフ記者は続ける。

「オリオールズは間違いなく大規模な形でベテラン選手を放出すると思う。

現在、チームは勝率5割を大きく下回っている。今後1カ月の間、ドラマチックな形で巻き返し、勝率5割に近づきでもしない限り、売り手に回るだろう。2025年が契約最終年の選手のほとんどが放出候補になるはずで、そのなかにスガノが入ってもまったく驚かない。

 具体的には、野手ではライアン・オハーン(31歳)、セドリック・マリンズ(30歳)が最大のトレード要員。もしかしたら来季はチームオプションのラモン・ロリアノ(30歳)も含まれるかもしれない。先発投手ではザック・エフリン(31歳)、チャーリー・モートン(41歳)、そしてスガノといった実績ある投手たちが放出候補だ。リリーフ投手ではセランソニー・ドミンゲス(30歳)、グレゴリー・ソト(30歳)が注目の存在になると思う。これらのベテランをトレードすれば、それなりの見返りを手にするチャンスがあるに違いない。

 もっとも(次のオフに)"ファイヤーセール(投げ売り)"に取り組むからといって、オリオールズが現在のコアメンバーでの優勝争いをあきらめたわけではない。アドリー・ラッチマン捕手(27歳)、ガナー・ヘンダーソン遊撃手(24歳)のおかげでセンターラインがしっかりしており、二塁手のジャクソン・ホリデー(21歳)がオールスター候補になるほど成長してきたことは好材料だ。

 投手陣にもいい素材がいないわけではない。だからここでベテランを大量放出し、代わりに好選手を獲得しておければ大きい。

さらに故障者が復帰し、若手が伸びてくれば、来年にはプレーオフ争いに戻れる可能性が十分にある。

 特に投手陣には、今季後半に何人かの実績ある選手たちが復帰してくる。昨年トミー・ジョン手術を受けたカイル・ブラディッシュ(28歳/2023年12勝7敗、防御率2.83)、タイラー・ウェルズ(30歳)のカムバックは近く、グレイソン・ロドリゲス(25歳)、アルバート・スアレス(35歳)も戻ってくるかもしれない。オリオールズの首脳陣は今後に備え、ケイド・ポビッチ(25歳)、トレバー・ロジャース(27歳)、ブランドン・ヤング(26歳)、チェイス・マクダーモット(26歳)といった20代の投手たちをもっと見ておきたいと思っているに違いない。

 そういった背景を考えれば、35歳の1年契約選手であるスガノが放出候補になる理由も見えてくるはずだ。オリオールズがトレード期限に精力的に動くとしても、"再建(リビルド)"という言葉が相応しいとは思わない。それよりも、チームの"立て直し(リツール)"と捉えたほうがいいと考えている」

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