サマースプリントシリーズ第2戦のGIII北九州記念(小倉・芝1200m)が7月6日に行なわれる。
このレース、過去10年の結果を振り返ってみると、なんと1番人気は0勝。
それゆえ、配当的な妙味はたっぷり。現に、3連単は過去10年すべて万馬券だ。しかも、2017年の107万8270円を筆頭に、2024年の79万8750円、2022年の49万3580円など、高配当が続出している。
これまで8月中旬に施行されていたレースは、昨年から1カ月半ほど前倒しとなったが、先にも触れているとおり、昨年の一戦も大荒れ。そういう意味では、波乱傾向のレースであることに変わりはない。
となれば、今年も"荒れる"ことを前提として、狙い目を絞っていきたいところだが、ポイントのひとつとなる馬場状態はどうなのか。デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう解説する。
「今年は、4月、5月で涼しい日が多かったこと、さらにエアレーションの影響もあって、(開幕週では)芝が少し生えそろっていなかったりして、クッション値も低めでした。そのため、全体的に時計は思った以上に速くありませんでした。
しかし、芝のクッション値はそこから徐々に上がっており、天候のいい日が続く今週は路盤硬化が一段と進行する見立て。先週よりもスピード競馬が堪能できるのではないでしょうか。
ただ、出走メンバーを見渡してみると、1分8秒前後の時計で好成績を残している馬が数多くいます。はたして、それらがどこまで速い時計に対応できるのか。
また、馬場が高速化すれば、逃げや前づけ有利がセオリーですが、ジョッキーたちのなかでその意識が過剰になってしまうと、前半3ハロンが32秒台~33秒台前半のハイペースな争いになることは必至。そうなると、(前を行く馬たちの)押し切りを望むのは酷かもしれません」
では、そうした状況にあって、どんなタイプが台頭するのか。
「時計が速い馬場ではハンデ差が利いてきますから、一瞬の脚を秘める軽量馬に妙味を感じます。すんなり隊列が決まる形であれば、ある程度前づけしても最後にキレ味が炸裂すると見込んでいます」
吉田記者はそう言って、2頭の穴馬候補をピックアップした。1頭目は、初の重賞に挑むヤマニンアンフィル(牝6歳)だ。
「先週の3勝クラス・佐世保S(6月29日/小倉・芝1200m)を快勝。そこからの連闘策となりますが、かなり面白い存在と見ています。ムラ駆けタイプの6歳牝馬ですが、近走の芝1200m戦に限れば、1着、4着、3着、2着、1着と好走を続けています。4着だったのは、昨夏の3勝クラス・長篠S(中京・芝1200m)で不良馬場での結果。3着に敗れたのも、年末の荒れた馬場で行なわれた3勝クラスの知立S(中京・芝1200m)でした。
それ以外は、1分7秒3、1分7秒7、1分7秒8と、好時計をマーク。速い馬場で結果を出している点は、強調材料になると思います。
暑熱対策で馬房にクーラーの付いている小倉は人馬ともに過ごしやすく、ヤマニンアンフィルも水曜日の運動では体が締まっていて元気いっぱい。(連闘でも)体調はすこぶる快調と言えます。
前走は斤量55kgで勝ち上がりましたが、今回は昇級戦のうえ、初重賞ということもあって、2kg減のハンデ53kgで出走できるのは魅力。しかも、さらに気温が上昇する今週、長距離輸送のない滞在競馬での参戦は大きなアドバンテージとなります。
前走同様、前が引っ張ってくれる展開を中団あたりでスムーズに運ぶことができれば、まとめて面倒を見るシーンがあってもおかしくありません」
吉田記者が推奨するもう1頭は、ヤマニンアンフィルの半弟で、同じく斉藤崇史厩舎が管理するヤマニンアルリフラ(牡4歳)だ。同馬も前走の3勝クラス・淀S(5月4日/京都・芝1200m)を勝って、今回が重賞初挑戦となる。
「先週の追い切りでは、坂路でビシッと追ってラスト1ハロン11秒5を計測。今週もラクな手応えでラスト1ハロン11秒6をマークし、状態のよさは際立っています。昨秋から芝・ダートの短距離戦で好走を続けており、ここに来ての充実ぶりは目を見張るものがあります」
ヤマニンアンフィルの他にも、3つ上の兄にはリステッド競走で奮闘しているヤマニンサンパがいて、ひとつ上の兄はダートの重賞勝ちがあるヤマニンウルス。兄姉の多くがオープン入りを果たしており、潜在能力の高さは明らかだ。
「ヤマニンアルリフラは芝・ダートを問わず結果を残していますが、今の充実ぶりからして、芝1200mの時計も大きく詰められる算段。ハンデ55kgも手頃ですし、攻め気配のよさから新たな一面を見せて、勝ち負けを演じる可能性も十分にあると見ています」
今年も波乱必至の北九州記念。"ヤマニン"姉弟の大駆けがあるのか、注目である。