【新たな顔ぶれのサイドアタッカー陣が躍動】
女子日本バレーボール代表は、7月9日から千葉ポートアリーナで開催される国際大会「FIVBネーションズリーグ」に臨む。6月上旬から始まった同大会は全3週の予選ラウンドのうち、すでに2週が消化され、この千葉大会が最終週となる。ファイナルラウンドは予選ラウンドの上位7チームと開催国(女子はポーランド)で争われるが、その切符をつかむためにも、日本は勝利を重ねなければならない。
ここまでの日本の成績は6勝2敗。予選ラウンド第1週は4試合すべてストレート勝ちを収めて好スタートを切ると、第2週は初戦でタイを相手に2セットダウンから逆転し、開幕からの連勝を5まで伸ばした。続くイタリア戦は一進一退の攻防の末、フルセットで勝利まであと一歩に迫るも初黒星。翌日の中国戦は相手の組織的なバレーの前に圧倒されて連敗となったが、最終チェコ戦は快勝して第2週を締めくくった。
ここまでの戦いぶりをひも解くと、強い印象を残しているのはサイドアタッカーたちだ。
昨年のパリ五輪をもって、チームの大黒柱を担っていた古賀紗理那が現役を引退。また、東京2020五輪以降、攻守で安定感をもたらしていた林琴奈(大阪マーヴェラス)が今年度は不在となっている。
そのように顔ぶれが変わるなかで、直近2大会で五輪出場を果たしているエースの石川真佑(ノヴァーラ/イタリア)が今年からキャプテンに就任。その対角には佐藤淑乃(NECレッドロケッツ川崎)、オポジットには佐藤と同じNECのチームメイトである和田由紀子が名前を連ねている。
佐藤は2022年の世界選手権、和田はパリ五輪と、これまでも国際大会を経験してきたが、本格的にレギュラーとしてプレーするのは今大会が初めて。それでも予選ラウンド第1週、チームの初戦となるオランダ戦で、さっそく佐藤は4本のサービスエースを含むチーム最多の18得点でストレート勝ちに貢献した。
その後も佐藤は、コンスタントにふた桁得点をマークしている。
一方の和田も、ここまで目覚ましい活躍を見せている。代表デビューイヤーとなる2023年のネーションズリーグでは、一試合32得点(2023年6月17日vs.アメリカ)を叩き出すなど得点力の高さは以前から証明済み。強烈なアタックとサーブ、勝負強さも備え、今大会でも予選ラウンド第2週を終えた時点でチームのトップスコアラーだ。
チーム最多の29得点をマークして逆転勝利に導いたタイ戦後、「まずは点をとることが自分の仕事。なかなか全員がリズムに乗れずに理想的な攻撃ができなかったなかでも、自分の役目を果たせたかなと思います」と語る口ぶりは頼もしかった。
戦術的なサーブから相手の攻撃を絞り、ブロックとレシーブの関係性を構築することで相手に決定機を許さず、そこから自分たちの攻撃を仕掛けるのが日本女子の戦い方。しかし勝利を手繰り寄せるためには、やはり海外の高いブロックをいかに攻略するかがカギとなる。その点で現在は、石川、佐藤、和田のサイドアタッカー陣の得点力は大きな武器となっている。
【国内組と海外組、各々の経験値が融合】
サイドアタッカー以外のメンバーでいえば、ミドルブロッカー陣はパリ五輪に出場した3名にベテランの島村春世(ペッパー貯蓄銀行AIペッパーズ/韓国)を加えた4名が中心。セッターは関菜々巳(ブスト・アルシーツィオ/イタリア)が一番手を担い、リベロは試合に応じて起用される選手が代わるという具合だ。
そうしたなかでも確かなのは、選手たち個々の経験値が、ひとつの武器として女子日本代表に備わっているということ。
今年から指揮を執るフェルハト・アクバシュ監督は大会前の会見で「SVリーグの質が上がっていますし、特にリーグのファイナルを戦った選手たちはとてもすばらしいパフォーマンスを披露していて感銘を受けました。国内組の経験は、チーム(日本代表)の勝利に貢献してくれるでしょう」と語った。実際に、リーグ優勝を果たした大阪マーヴェラスからはリベロの西崎愛菜が代表に選出され、ネーションズリーグにも出場。佐藤や和田も悔しい準優勝ながら、ファイナルを戦った面々である。
同時に、「海外リーグでプレーした選手たちが、そこで得たもの、実際に目の当たりにしたものも大事。一緒にプレーした選手が各国にいるわけですから、それらの経験値はチームにとっても大きな価値があります」とアクバシュ監督。2024-25シーズンは、石川と関(当時はコネリアーノ)、リベロの福留慧美(ミラノ/イタリア)がセリエAの強豪クラブでプレーした。
ネーションズリーグで戦ったイタリアの絶対エース、パオラ・エゴヌと福留はチームメイト。対戦にあたって福留は、エゴヌのアタックの傾向をチーム内で共有し、ディフェンス時の対応に生かしていた。各々が成長するために選んだ道で得た経験値を、代表活動で還元する。アクバシュ監督が期待していたものが体現された、ひとつのケースだった。
女子日本代表はこのネーションズリーグと夏の世界選手権で、まずは「好成績を残すこと」が今年の目標であり、アクバシュ監督は「ベストな選考をしていきたい。と同時に、選手たちには経験を積んでもらいたい」と語っている。もちろん最大のターゲットは3年後のロサンゼルス五輪で、そこに向けてチームは歩み出したばかり。メンバーや戦い方も、現状のまま進むことは決してない。
敗れはしたものの、中国戦では反撃の突破口を開いた初選出の北窓絢音(SAGA久光スプリングス)や、身長185㎝・最高到達点316㎝という高いポテンシャルを備えた"大友愛の娘"秋本美空(ヴィクトリーナ姫路)など、将来性の高い選手たちも続々と出てきている。
これから3年後、どんなチームへと成長してくのか。そうした期待とともに、ネーションズリーグ予選ラウンド第3週で国内初披露となる今年度の代表チームの戦いをご覧いただきたい。