ビーチバレーの国内トップツアー『ジャパンビーチバレーボールツアー2025 第5戦グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会』(7月4日~6日)が、横浜赤レンガ倉庫特設コート(横浜市中区)で行なわれた。
注目のルーキーペア「のあめい」こと、宇都木乃愛(うつぎ・のあ/18歳。
「のあめい」は6月、日本代表としてタイ・ローイエットで行なわれた『AVCアジアU21ビーチバレーボール選手権』に出場。日本女子チームとして2017年以来となる表彰台は逃したものの、4位に入賞して、『2025FIVB(国際バレーボール連盟)ビーチバレーボールU21世界選手権』(メキシコ・プエブラ、10月開催)への出場権を獲得した。
U21アジア選手権では、中国やニュージーランドなど、高さや体格で勝るチームを相手に奮闘。宇都木は「もう少しのところでメダルが獲れず、とても悔しい」と口にしたが、プレーの幅が広がり、自信もつけた。その分、帰国後に挑んだ今回の国内トップツアーでは、「のあめい」の成長ぶりに大きな関心が寄せられていた。
大会初日の予選の相手は、本村嘉菜(30歳)&成優(26歳)の姉妹ペアだった。まだツアー優勝はないものの、嘉菜が身長177㎝、成優が身長178㎝という大型ペア。海外ツアー転戦経験もあり、息の合ったチームだ。第1セット、序盤から「のあめい」のプレーは嚙み合っていなかった。
この日の横浜は、南南東5~6m/sの浜風。赤レンガ倉庫の脇に建てられた特設コートは、倉庫に当たった風が回り込んで吹き抜け、強さも方向も常に変化する、難しいプレー環境だったことも影響したのだろう。
そうした状況のなか、相手のミスもあって中盤までのスコアは拮抗していたが、終盤になって一気に離されて16-21で第1セットを落とす。動きに精彩を欠いていた「のあめい」はイージーなミスも目立ち、"らしさ"は影を潜めていた。
それでも、第2セットでようやくエンジンがかかり始めた「のあめい」。U21アジア選手権でのプレーを経て、課題のひとつに挙げていたサーブで立ち上がりから相手を圧倒した。森の3連続サービスエースでポイントを取ると、宇都木の真骨頂、ツーアタックも決まるようになって、21-10でセットを取り返した。
これで、「のあめい」が完全にゲームを掌握したと思われたが、第3セットでは再びミスを連発。パス、トスの精度が下がり、強打が打てなくなると、試合の主導権を失った。難しい風のなか、攻撃に有利な風下側(グッドサイド)と、不利な風上側(バッドサイド)で攻守の緩急もつけられず、攻め手を欠いて10-15。最終セットを落とし、セットカウント1-2で予選敗退となった。
試合後、「調子が悪いなか、すべてのプレーを向上させようとするのではなく、(最も改善すべきポイントに)フォーカスして最低限のプレーをするべきだった」と森。難しい風にも対応しきれず、「グッドサイドでのサーブのミスが多かったり、攻撃で相手にプレッシャーをかけられなかった」とうなだれた。
一方、宇都木も「課題としていた立ち上がりの悪い部分がまた出てしまった」と唇と噛んだ。また、同大会ではサブコートがなく、試合前のウォームアップでは各選手が苦労していたが、「試合で100%を出せるようなウォームアップをする意識が必要だった」と反省の弁を口にした。
2度目のトップツアー挑戦で上位進出が期待された「のあめい」だったが、ゲームの組み立てや風の読みなど、経験が必要な部分で、相手を上回ることができなかった。ただ、それらについては彼女たちもよくわかっている。宇都木が言う。
「ずっと同じテンポでスパイクを打ってしまっていた。もっとリズムを変えて打つなど相手にプレッシャーをかけないといけない。相手のウィークポイントをどんどん突いていくように考えてプレーしないと......」
ともあれ、U21アジア選手権を経て、成長したプレーも随所に垣間見えた。森のサーブはチームにとって大きな武器のひとつとなっており、宇都木の強打も相手に脅威を与えていた。ディフェンス力も着実に向上していた。
今後も、今シーズンの「のあめい」にとって最大のターゲットとなるU21世界選手権へ向けて、レベルアップを重ねていくだけだ。
「世界選手権に向けては、もっとしっかりとゲームメイクすることを意識しないといけない。プレーのなかで状況が変化しても対応できるようにならないと」と宇都木が語れば、森も「安定したプレーがずっと課題だが、安定させるのはもちろん、その水準をもっと高いところに上げていきたい」と大一番へ向けて気持ちを引き締めた。
10月の世界戦へ、課題は明確になっている。残り3カ月あまりだが、若きペアの吸収力は大きく、伸びしろは十分にあるはずだ。
さらに成長を重ねた「のあめい」が、世界でどんな戦いを見せるのか。その過程をしっかりと見届けていきたい。