ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――今週から夏の新潟開催がスタート。その幕開けを飾る重賞は、サマーマイルシリーズ第2戦となるGIII関屋記念(7月27日/新潟・芝1600m)です。

今年から開幕週開催に前倒しされて、ハンデ戦となりました。

大西直宏(以下、大西)夏の新潟の開幕週といえば、最近は芝「千直」のGIIIアイビスサマーダッシュというイメージが定着していて、昨年まで開催3週目に行なわれていた関屋記念が初っ端、というのは少し違和感がありますね。

 また、別定戦からハンデ戦へと条件が変更。どんな結末になるのか、興味深いところです。

――夏の新潟では、昨年から暑熱対策として「競走時間帯の拡大」が実施されるようになり、今年は今回の関屋記念を含めて、番組面でも大幅な改革が施されました。

大西 サマーシリーズの充実をはじめ、その他の開催との兼ね合いなど、いろいろな事情があるのでしょう。来年以降もさまざまなことを考慮して、開催番組の変更などはその都度なされるかもしれませんね。

――先週のサマー2000シリーズ第3戦のGIII小倉記念では、9番人気のイングランドアイズが51kgの軽ハンデを生かして快勝。関屋記念もハンデ戦となったことで、そういった波乱が起こる可能性が増すのでしょうか。

大西 基本的には、その可能性は高まると思います。そもそも夏の重賞は、実績馬にとっては秋の大目標を見据えたうえでの臨戦。その分、仕上げにおけるさじ加減の難しさ、という面がどうしてもありますから。

 そこへもってきて、(実績馬は)重いハンデを背負うわけですから、勢いのある上がり馬や賞金加算を狙ってくる軽ハンデの伏兵馬をねじ伏せるのは、決して簡単なことではありません。となれば、当然波乱の決着になりますよね。

――舞台となる新潟・芝マイルコースについて、何か特徴があったら教えてください。

大西 自分の現役時代の感覚から指摘しておきたいことは1点。新潟の外回り・芝マイルは、同じ左回りで直線が長い東京コースと比較して語られることが多いのですが、最後の直線で内ラチ沿いを突こうとすると、(前が)詰まって抜け出せないケースが時々ある東京と違って、新潟の場合はバラけやすい印象が強いです。

 もちろん、出走頭数や展開、馬のタイプにもよりますが、東京コースよりも新潟の外回りコースのほうが枠順やコース取りの有利・不利が少ない、ということは頭に入れておいてもらいたいですね。

――さて、今年の関屋記念の出走メンバーをご覧になっての率直な印象を聞かせてください。

大西 サマーマイルシリーズ第1戦のGIIIしらさぎS(6月22日/阪神・芝1600m)組から回ってくる馬がそれなりにいるだろうと予想していたのですが、結局、そこからの臨戦は4着ダイシンヤマト(牡5歳)と10着シヴァース(牡4歳)だけでした。

 そうしたこともあって、中距離のGIII新潟大賞典(5月17日/新潟・芝2000m)やGIII府中牝馬S(6月22日/東京・芝1800m)、GIIIエプソムC(5月10日/東京・芝1800m)からの参戦もあり、幅広い路線から出走馬が集結。しかも、各世代の実力馬がエントリーし、バラエティに富んだ面白いメンバー構成になったと思います。

 なかでも注目されるのは、ボンドガール(牝4歳)です。重賞勝ちこそないものの、GI秋華賞(京都・芝2000m)2着をはじめ、重賞2着が5回。

大舞台での好走実績は、メンバー随一と言えます。

 それに、新潟外回りの芝マイルという条件は、かなり合いそうなイメージ。鞍上も名手クリストフ・ルメール騎手。その手腕をもってすれば、悲願の重賞初制覇を果たしてもおかしくありません。

――そのボンドガールを脅かす存在として、気になる馬はいますか。

大西 イミグラントソング(牡3歳)です。

【競馬予想】関屋記念で人気のルメール&ボンドガールを脅かすの...の画像はこちら >>
 GIIニュージーランドトロフィー(4月12日/中山・芝1600m)で、GI朝日杯フューチュリティS(京都・芝1600m)の覇者アドマイヤズームを下して重賞勝ちを決めました。今回、どれぐらいのハンデを背負わされるのか心配していたのですが、年長の古馬相手に55kgなら悪くはありません。

 前走のGINHKマイルC(5月11日/東京・芝1600m)は11着と惨敗。位置取りを問わずリズムよく運べば、最後はいい脚を使える馬ですが、人気のアドマイヤズームを意識して好位で運んだことが敗因だったかもしれません。思いのほかペースが速くなって、悪い意味で差し・追い込み向きの展開にハマってしまいましたからね。

 その後、この中間はノーザンファーム天栄でリフレッシュ。

帰厩後の動きは良好です。

 鞍上を務める石川裕紀人騎手にとっては、GIで一度、主戦の座を奪われた身。自らが騎乗して勝ったニュージーランドトロフィー以来の再タッグですから、ここで燃えないわけがありません。バカンス明けのルメール騎手&ボンドガールのコンビを倒して、人馬ともにアピールしたいところでしょう。

 石川騎手はもっとスポットライトを浴びていい、若手実力派ジョッキーのひとり。そんな彼の奮闘にも期待して、関屋記念ではイミグラントソングを「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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