予選7位から、たった1秒の差でピットインを逃して下位に沈んだベルギーGP。

 あれから4日。

角田裕毅(レッドブル)はほんのわずかなインターバルで気持ちを切り替えて、ブダペストのハンガロリンクにやってきた。スパ・フランコルシャン(ベルギー)とは違い、夏らしい陽気で半袖とサングラスがよく似合う。

 スパで爆発させたフラストレーションは、その後も数日間は引きずってしまったと角田は明かした。

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「スパではもっとうまくやれたことが多々ありました。僕がピットエントリーをすぎてターンインした直後にピットインの指示が出たりと、少し不運なところもあった。正直に言って、そのフラストレーションを数日は引きずりましたし、今も少しあるかもしれません。

 でも、あのようなことを繰り返すわけにはいかない。エンジニアとはすべてをレビューし、二度と起きないようにするため、これからはどんなプロトコル(手順、決め事)にするべきなのかを見直しました。今週末もまた同じような天候で、コンディションが刻々と変わるような展開になりうるので」

 なぜあのようなコミュニケーションミスが起きてしまったのか、その詳細を明かすことはなかった。だが、チーム内で再発防止策を講じられたのは、チームとして成長できたということだ。特に角田と担当レースエンジニアのリチャード・ウッドにとっては、4月の日本GPで急遽コンビを組んでからまだ4カ月の関係でしかない。

 それ以上に大きかったのは、予選から新型フロアが投入され、マシンの挙動が目に見えて良くなったことだ。

それによって角田のペースが上がり、ようやく自身の成長が「結果」という形で証明できた。

「フラストレーションを感じたのは事実です。ああいったことでポイントを逃すのは、まったくもって理想的なことではないですから。でも、僕にとってよかったのは、ガレージのエンジニアたちにも大きな改善が見られて、ペースがよくなっていることがデータ上でハッキリと見えていることです。

 それが(決勝の)リザルトという目に見える形にならなかったのは残念ですけど、パッケージが新しくなればこうしてペースが出せるんだ、ということは証明できた。本来あるべきポジションに戻れるんだとわかったことは、大きな収穫でした」

【ハンガリーの雨は変化が激しい】

 スパで見えなかったのは、角田が「ここ数戦で最も大きな課題だ」と言い続けてきた、ロングランでのタイヤマネージメントだ。

 新型フロアを使うことで、これがどれだけ改善されるのか。

 そして、角田自身のドライビングで足りていないのはどこなのか。

 予選一発の速さを引き出すとのは違い、長い周回数を重ねるなかで、タイヤをいかにいたわりながら速いペースを維持するのか。

 スパでは超薄型ウイングを装着したピエール・ガスリー(アルピーヌ)に抑え込まれ続け、本来のペースで走ることは一切できなかった。路面コンディションもウェットからドライへと乾いていく不安定な状況だった。

 しかし今週末のハンガリーGPでは、3日間を通して新型フロアで走り、最大の課題であるタイヤマネージメントの現在地を把握し、そこからさらに改善方法の模索にフォーカスしていくつもりだと角田は語る。

「ベルギーGP決勝のロングランに関しては、路面コンディションがどんどん変わっていく状況でしたし、ずっと前のクルマの後ろにスタックしていたので、旧型に比べてどうだったのか純粋なパフォーマンス比較は何とも言えません。

だけど、そこは今週末でさらにハッキリと見えてくるんじゃないかと思っています。

(ロングランで苦戦する)マシン特性が少しまだ残っているのは事実ですけど、それも以前に比べれば大幅に解消されているように思います。ただ、それですべての問題が解決するとは思っていないので、そこがどうなるか。

 実際のフロアの効果がどのくらいなのか、今週末はそこを安定したドライコンディションで確認したいと思っています。土曜・日曜は雨絡みになる可能性もありそうなので、FP2でそれができることを願っています」

 天気予報は日曜の午前中が雨で、レッドブルは土曜午後の予選後半も雨だと読んでいる。ハンガリーの雨は長くシトシトと降る雨ではなく、急に激しく降ったかと思えばあっという間に上がり、晴れ間も広がる雨が多い。

 そうなれば、レースはまた波乱の展開になる。

【過去の出来事は変えられないが...】

 レッドブルにとって苦手とする、長く回り込むような中速コーナーの連続するハンガロリンクは得意なサーキットとは言えない。だが、そんな天候の波乱が今回、角田の味方につくことを願いたい。スパで味わった失敗からの改善がそこにつながれば、それこそフラストレーションに満ちた過去の意味も変わってくる。

「予選では前回と同じかそれ以上の走りをして、ポイントも長らく獲れていないので、今週は絶対にポイントが獲りたいと思っています。週末の全セッションを通して、いかに安定したパフォーマンスを発揮できるかが重要です。

夏休み前の最後のレースなので、いい形で夏休みに入れるようにしたいと思います」

 過去は変えられないが、そこからどんな未来を創り出すかによって、過去に起きたことの意味は変えられる。

 そんなシーズン前半戦最後のレース週末になることを願いたい。

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