夏の甲子園2025優勝予想 前編

 いよいよ第107回全国高等学校野球選手権大会が始まる。なんといっても注目は、この春の選抜大会を制した横浜が、松坂大輔(元西武ほか)らを擁した1998年以来となる春夏連覇を達成できるかどうかだ。

その一方で、選抜準優勝の智辯和歌山、選抜ベスト4の健大高崎、昨夏の優勝校・京都国際など実力校が揃い、例年以上に混戦になりそうだ。はたして、今夏の甲子園を制するのはどのチームなのか。気鋭のライターに優勝チームを予想してもらった。

【夏の甲子園2025】ベテラン記者が優勝校をズバリ予想! 横...の画像はこちら >>
楊順行氏(ライター)

優勝予想:横浜

 昨夏の決勝は京都国際と関東一。この欄では、「京都国際も総合力が高いといわれている」とまあ、競馬でいえば優勝校にいちおう▲はつけたが、関東一の「カ」の字もなかった。この夏はなんとか的中させたい。

 となると、やはり2度目の春夏連覇がかかる横浜を推すべきか。神奈川大会準々決勝では、阿部葉太が9回裏に逆転サヨナラ二塁打、東海大相模との決勝では、3点を先行されながらひっくり返したように、どんな展開になっても勝負強い。

 近年の甲子園で優勝するには、複数のエース格が必須。横浜には最速152キロの2年生右腕・織田翔希、ハートの強い左腕・奥村頼人という二枚看板がいる。さらに山脇悠陽、前田一葵、片山大輔も、センバツで登板経験があるのは心強い。

 打線も阿部葉が3番、神奈川大会で3本塁打の奥村頼が4番に座り、5番・小野舜友、6番・池田聖摩の2年生コンビはいずれも打率5割超と切れ目がない。

 対抗は健大高崎と、秋、春の近畿王者・東洋大姫路。センバツ4強の健大高崎は、春の関東大会を制し、確実にレベルアップしている。最速158キロの石垣元気、安定感のある左腕・下重賢慎らの投手陣は盤石で、群馬大会では前橋育英との決勝以外は無失点だ。石垣元、下重ともに北海道出身で、気になるのは猛暑だが、昨年センバツVの原動力・佐藤龍月がヒジの故障から復帰したのは心強い。

 東洋大姫路は注目の右腕・阪下漣をヒジの故障で欠くが、センバツ以降、木下鷹大がエースに成長。兵庫の決勝では報徳学園打線に6失点も、打線の援護で7対6と制するなど総合力が高い。

 ほかにセンバツ準Vの智辯和歌山は、和歌山大会5試合で36得点と強力打線は相変わらずで、失点もわずか3と投手力も飛び抜けている。連覇のかかる京都国際は、サウスポー西村一毅がチームを引っ張り、2年連続4強の神村学園は、4度目の甲子園となる今岡拓夢が打線の軸だ。令和に入り、3回の出場で13勝とハイペースで勝ち星を積み重ねる仙台育英にも注目。

 というわけで......◎横浜、○健大高崎、東洋大姫路、▲仙台育英、京都国際、智辯和歌山、神村学園。月並みでスミマセン。

戸田道男氏(編集者兼ライター)

優勝予想:沖縄尚学

 全49代表校が出揃ったうえでの優勝予想は、横浜、健大高崎、智辯和歌山の「3強」が中心になるとの見方がもっぱらだ。

 今春センバツでは横浜、健大高崎、東洋大姫路を「3強」とするのが大方の予想だったが、今夏は智辯和歌山が東洋大姫路に代わって「夏の3強」を形成する格好か。

 選抜優勝で2度目の春夏連覇を目指す横浜、センバツ4強で春の関東大会を制した健大高崎、選抜準優勝で春の近畿大会も準優勝の智辯和歌山の3校は全国的にもそのまま実力トップ3と言っても過言ではなく、この3強を外して夏の甲子園本番の優勝予想をするとすれば、3強を自力で倒す可能性を秘めたチームであることが必須条件だ。

 そこで、実績、実力、今夏の勝ち上がりなどを判断材料に、3強を押しのけての優勝候補を選ぶとなると、沖縄尚学が浮上してくる。

 2年生の150キロ左腕・末吉良丞が安定感抜群でマウンドを守り、比嘉大登、真喜志拓斗らU18日本代表候補が中軸の打線も完成度が高い。横浜に7対8と惜敗した選抜当時から着実にチーム力もアップ。何より全国のトップを切って7月13日に代表決定と休養十分で臨めるのが大きなアドバンテージだ。ライバルとなる3強とはむしろ大会序盤で激突し、自力で勝ち上がる展開になるほうが道は開けるだろう。

 横浜、健大高崎、智辯和歌山ら強豪に共通するのは、選手層が厚く、スタミナも十分で、大会終盤になればなるほど当然のように実力を発揮してくること。3強と戦うにあたっては、沖縄尚学に限らずどのチームでも大会序盤のほうがチャンスはある。

 東洋大姫路、広陵、仙台育英といった実力校、昨夏甲子園の決勝を戦った京都国際、関東一などは言うに及ばず、左腕・江藤蓮の未来富山、気迫の右腕・高橋大喜地がいる豊橋中央あたりの初出場校が大暴れして、大会を盛り上げてくれることに期待したい。

元永知宏氏(ライター)

優勝予想:広陵

 2023年夏から2025年春のセンバツまでの4大会で準決勝に進出した高校を挙げると、現在の勢力図がよくわかる。

2023年夏 慶應義塾(神奈川)、仙台育英(宮城)、土浦日大(茨城)、神村学園(鹿児島)
2024年春 健大高崎(群馬)、報徳学園(兵庫)、星稜(石川)、中央学院(千葉)
2024年夏 京都国際(京都)、関東一(東東京)、青森山田(青森)、神村学園(鹿児島)
2025年春 横浜(神奈川)、智辯和歌山(和歌山)、健大高崎(群馬)、浦和実業(埼玉)

 16校のうち8校が関東勢で、昨夏の甲子園以外はすべて優勝を果たしている。

今春の選抜を制した横浜(神奈川)と、横浜に春連覇を阻まれた健大高崎(春季関東大会王者)が優勝候補の一番手として挙げられるだろう。

 最速152キロ右腕の織田翔希とサウスポーの奥村頼人、強打の阿部葉太を擁する横浜、選抜で好投したサウスポーの下重賢慎、プロ注目の石垣元気、トミー・ジョン手術を経て復活した佐藤龍月が揃う健大高崎は、投手力、攻撃力が抜きんでているという印象だ。そのなかで、優勝候補の本命として広陵(広島)を推したい。

 チームを牽引してきた高尾響、只石貫太というバッテリーが卒業し大物はいないが、広島大会で背番号10をつけた投手の堀田昂佑を中心に守りが固い。

 広島大会決勝は、崇徳に1点リードを許して9回表に突入。一死一塁で代走に起用された背番号14のキャプテン・空輝星が1球目に二盗に成功し、堀田の二塁打で同点のホームを踏んだ。空の盗塁はノーサインだったという。

 1対1で迎えた9回裏の二死二塁のピンチで4番打者を敬遠せず、堀田は真っ向勝負を挑んでピンチから脱出。10回裏、一死二、三塁の場面でも敬遠策を取ることなく無失点で抑えて勝利を手繰り寄せた。中井哲之監督は「うちにはスーパースターはいないけど、練習で積み重ねてきたことを信じた」と語った。指導者と選手との絆の強さがわかる決勝戦だった。

 今大会もロースコアの試合が多くなることが予想される。

タイブレークでの決着も増えるだろう。接戦で勝負を分けるのは緊迫した場面での思い切った走塁と守備力だ。圧倒的な戦力を誇る関東勢に対して、広陵は緻密な野球で勝負する。

つづく

編集部おすすめ