夏の甲子園2025優勝予想 後編
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いよいよ開幕する夏の甲子園。春夏連覇に挑む横浜高校をはじめ、智辯和歌山、健大高崎、京都国際、仙台育英など、日本一経験のあるチームが揃い、混戦は必至だ。
優勝予想:沖縄尚学
選抜優勝の横浜、準優勝の智辯和歌山、ベスト4の健大高崎。春に実績を残した強豪が夏も甲子園に帰ってきた。これは、簡単なようで簡単ではない。選抜4強のチームのうち、3校が夏も甲子園に出場するのは常葉菊川(現・常葉大菊川)、大垣日大、帝京が出場した2007年以来18年ぶりのことだ(4校すべて出場はなし)。裏を返せば、それだけこの3校は力があるといえる。
秋の明治神宮大会からの全国大会3連覇がかかる横浜は県大会の準々決勝で9回二死から逆転サヨナラ勝ち。準決勝も3点差をひっくり返した。準決勝、決勝で3本塁打を放った奥村頼人は打撃で覚醒した感があり、勝負強い主将の阿部葉太も健在。
投手陣も県大会で8人が登板する豊富さを誇る。県大会は「勝たなければいけない」という重圧もあっての苦戦だったが、甲子園までたどり着いたことで吹っ切れるか。それとも、3連覇の重圧に押しつぶされるか。
健大高崎も横浜に負けず劣らずの分厚い戦力。最速158キロの石垣元気が県大会で投げたのは2試合わずか5イニングだけ。準決勝まですべてコールド勝ちしたのに加え、6投手が登板したため、最多投球回は山田遼太の12回。酷暑の夏に投手陣が疲弊していないのは大きい。
この2校が優勝争いの先頭を走る。これに智辯和歌山、夏の甲子園2年連続ベスト4の神村学園、春の東北大会王者の仙台育英の5校がトップグループといえる。
個人的に期待したいのが沖縄尚学。選抜では横浜と7対8の接戦を演じた。その際、比嘉公也監督が悔やんでいたのが相手を大きく見すぎたこと。それが初回の阿部葉の3ランを含む序盤の5失点につながった。2年生の左腕・末吉良丞は力があるだけに、選抜で一発を浴びた右腕・新垣有紘が春の経験を生かして末吉の負担をカバーできるか。
トップグループに挙げた5校は、全国から有望な選手が集まっている学校(背番号ひとケタの県内出身者の数:横浜=1、健大高崎=0、智辯和歌山=1、神村学園=1、仙台育英=0)であることは事実。このほか、スカウティングに長ける山梨学院も背番号ひとケタの県内出身者の数は0。今に始まったことではないが、「有望な中学生獲得=3年後の甲子園の好成績」の図式が近年はより色濃くなっているように感じる。
そんななか、沖縄尚学はレギュラー9人中8人が沖縄出身者。沖縄からも多くの有望選手が流出するなか、比嘉監督が鍛えて全国でも上位に進出できる力をつけている(前回出場の23年はベスト8)。今年は戦後80年の記念の年。スカウティングありきの現状に風穴をあける意味でも、沖縄尚学の奮闘に期待したい。
菊地高弘氏(ライター)
優勝予想:聖隷クリストファー
今夏の横浜は神がかっている。神奈川大会準々決勝(平塚学園戦)で死線をくぐり抜けて以降、劇的な勝利が続いている。東海大相模との決勝戦を取材した際、試合前から横浜の応援スタンドの異様な熱気に圧倒された。スタンドを含めて「横浜は勝つ運命にある」と信じ切っているかのようだった。甲子園でも、何かを起こしてくれそうな予感がする。
そんななか、優勝予想として聖隷クリストファーを挙げることに「逆張り」という批判もあるだろう。ただ、トーナメントは一発勝負である。すばらしい投手と対戦し、打てなければ即敗退になる。
「初見で点が取れない投手」は誰か。自分のなかでふたりの投手が頭に浮かんだ。髙部陸(聖隷クリストファー)と西村一毅(京都国際)である。
昨夏はチェンジアップを武器にする左腕を擁するチームが、上位進出した。昨夏に優勝を経験した西村はもちろん、髙部もチェンジアップをマスターして投球の幅を広げている。
実績があり、研究される西村よりも、ニューフェイスの髙部のほうが勝ち上がる可能性がある。そう考えて、聖隷クリストファーを予想させてもらった。
今夏の静岡大会で初めて髙部を見た時には、衝撃を受けた。
聖隷クリストファーは甲子園初出場だが、髙部のワンマンチームというわけでもない。2番手投手の上田一心は右のサイドハンドで、髙部と個性がまったく異なる。シュート質のストレートとスライダー系の球種を使って、ホームベースをワイドに使える。今夏の静岡大会は15イニングを投げて無失点と好調をキープしており、頼もしい存在だ。
守備も強肩捕手の武智遥士を中心に、センターラインが堅い。打線は突出した打者はいないものの、全体的にスイングは力強く、バランスは取れている。
難を挙げるとすれば、2回戦を勝って以降は中1日が続く日程面になりそうだ。序盤戦を髙部、上田の二枚看板で消耗を抑えられたら、旋風の予感が漂ってくる。
チームバランスの取れた沖縄尚学、西日本短大付もダークホースになると予想する。