F1第14戦ハンガリーGPレビュー(前編)

 いいニュースと、悪いニュースがある。

 いいニュースは、ベルギーGP予選で角田裕毅(レッドブル)がマックス・フェルスタッペンにわずか0.163秒差という僅差まで迫ることができたということ。

 悪いニュースは、それが8位(フェルスタッペン)と16位(角田)だったということ。

【F1】角田裕毅はフェルスタッペンと0.163秒差でも笑顔な...の画像はこちら >>
「(ベルギーGPの予選で)新型パッケージを投入してからはクルマがまともになって、マックスと近いタイムで走ることができています。データ上で見れば、特にショートランに関しては着実にギャップを縮められているのがわかっています。

 今回の予選は0.1秒差でした。それって(フェルスタッペンの)過去8年間のチームメイトたちのなかで、最もマックスとの差が小さかったレースのひとつだと思います。ここまで迫ることができたドライバーはいないので、僕もそのことは誇りに思うし、チームもポジティブに捉えてくれています」

 角田はハンガリーGPを終えてそう語ったが、笑顔はなかった。あまりに多くの問題が、その誇らしい事実を覆い隠してしまったからだ。

 レッドブルがハンガロリンク(ハンガリーGP)で苦戦するであろうことは、レース週末を迎える前からわかっていた。RB21が苦手とする中速コーナーが大半を占め、逆に得意とするストレートはほとんどない。そして弱点であるリアタイヤにも厳しい。

 それに加えて、この週末はタイヤのグリップをうまく引き出すことができなかった。第9戦スペインGPで角田だけが見舞われたのと同じように「マシンバランスは悪くないものの、グリップがまったくない」という症状をどうやっても改善できなかった。

 そのふたつの要素が絡み合って、レッドブルはフェルスタッペンですら予選8位、決勝ではレーシングブルズを抜けずに9位に終わるという、前代未聞の不振に見舞われてしまったのだ。

【2018年のリカルド以来の僅差】

「チーム内で顔を見合わせて『何が起きているんだ?』という空気だった。すべての低速コーナー、中速コーナーのボトムスピードがとにかく遅かったんだ。マシンバランスの問題というよりも、もっと根本的な何かがおかしかった。マシンを適切な作動ウィンドウに入れることができず、タイヤを全然スイッチオンできなかった」

 ローラン・メキース代表がこう語るように、チームとしてはあらゆる手立てを講じたものの、ハンガロリンクでタイヤのグリップを引き出すことはできなかった。

 1週間前のスパ・フランコルシャン(ベルギーGP)のスプリントで優勝したことからもわかるように、レッドブルが急に遅くなったのではない。スパのようなサーキットではトップ争いができるが、ハンガロリンクのようなサーキットでは苦戦を強いられ、さらにタイヤを使いこなせなければ中団に飲み込まれてしまうということだ。

 角田にとって不運だったのは、ようやくフェルスタッペンとまったく同じ仕様のマシンで戦うことになり、0.163秒差まで迫ることができたのが、チーム自体が不振にあえぐそんなグランプリ週末だったということだった。

 しかし、フェルスタッペンもQ1、Q2ともに0.15秒程度の僅差でからくも通過するほどで、0.163秒差というのは正真正銘の実力差だ。過去のチームメイトでフェルスタッペンにここまで肉薄できたのは、2018年までのダニエル・リカルドだけだった。

◆つづく>>

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