町田瑠唯(バスケットボール)×志田千陽(バドミントン)
異競技スペシャル対談・中編
◆町田瑠唯×志田千陽・前編>>「あまり球技が得意じゃなくて...」「得意科目は体育でした(笑)」
ふたりが競技を始めたきっかけからスタートし、学生時代はお互い体育館で見ていた相手の競技について盛り上がったスペシャル対談の前編。
中編では、バスケットボールとバドミントンという競技を選び、それを突き詰めることで感じるようになったアスリートとしての考え方を語ることで、さらに新たな発見をする展開に──。
◆町田瑠唯×志田千陽フォトギャラリー>>
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── おふたりの話を訊いていると、まずは仲間のサポートに徹することに注力しているようですね。非常に大事な役割だと思います。志田千陽(以下:志田) 感覚が優れた選手は、読みが鋭かったり、言われたことがすぐできてしまったりするんです。だけど私の場合は、本当に時間を人一倍かけないと身につかないというか、スキルがあまりないので、そういう部分はフォローすることやメンタルでカバーしています。
自分自身、選手としての才能はあまりないと思っていたんですけど、努力することとか、パートナーと協力することでメダルに届いたり結果につながると、やっぱり努力っていうのは報われるのかなって思ったりするんですよ。
町田瑠唯(以下:町田) わかるような気がします。私も、自分が輝くことより、周りのみんなが輝くほうがうれしいんです。影の存在でいいんですよ。でも、みんなを生かしたいという気持ちでプレーしているけど、結局のところ、みんなに自分が生かされているんです。自分がやることをやって、最後はみんなが決めてくれる。
志田 お互いを生かし合えているってことですね。
町田 そうですね。
志田 まわりの人たちに支えられることは多いですよね。選手生活をしてきて、心が折れそうな時は何度もあったんですけど、山口茜ちゃんとか仲のいい、なんでも話せる同期がたくさんいて、そういう人たちすごく助けられたし、本当に出会いに恵まれたなって思っているんです。
それにいろいろ経験していくと、必ず気持ちは戻ってくるってわかったんですよ。心が折れそうになっても妥協せずにがんばっていれば、気持ちが戻ってきた時に、ちゃんとそこは生かされるんだって。最近もパートナー(松山奈未/取材日=ペア解消発表前)がケガをしてしまってモチベーションが難しい時期があったんですけど、経験上、気持ちはちゃんと戻ってくるはずだって、あまり気にしなくなりましたね。
【パートナーがいると喜びも2倍】
町田 私も気持ちが折れたことはないですね。でも、一番イヤなのはバスケットができないことなので、ケガをして長期離脱した時はモヤモヤした気持ちになります。
志田 たしかに、プレーできないのが一番きついんですよね。
町田 でも、逆に「絶対に強くなって戻ってやる!」って気持ちになるので、結局プラスなんですよね。メンタルの維持として考えるのは、うまくいかない時や悩んでいる時期って「バスケットを楽しんでいない」ということだから、そうなったらシンプルにバスケットを楽しもうという気持ちで練習や試合をやるようにしています。

町田 憧れはなかったですね。というか、自分に自信がなくて、ひとりでなにかをやるって感覚がなくて、「チームでプレーするから楽しい」みたいな感じなんです。
志田 ああ、自分のためだけにがんばるのって難しいですよね。
町田 だから個人競技にはたぶん、向いていないと思うんです。
志田 私はシングルスよりダブルスをずっとやりたいと思っていたんです。日本の女子ダブルスはお家芸というかオグシオ(小椋久美子・潮田玲子)さんを小学生の時に見て憧れたので、いつかはダブルスをやるんだって思ったんです。
もちろんシングルスも経験はあるんですけど、やっぱり自分のためにがんばるのって限界があって、パートナーがいると、苦しい時はふたりで共有できるし、喜びも2倍になる。ダブルスならではの難しさっていうのは確かにあるんですけど、ふたりで結果を残したうれしさはあります。
たぶん性格上、シングルスをやっていたら、ここまでの結果は残せていないと思います。そうだ、町田さんに聞きたいことがあるんですよ!
町田 どうぞ、何でも聞いてください。
【カバーし合えるのがチームスポーツのよさ】
志田 私はダブルスをやってきて10年ぐらい同じパートナーと組んでいるんですけど、コミュニケーションを取るのは大事だと理解しつつも、やっぱり人と人なので、互いのモチベーションやコンディションが一致するのが年に何回あるかなって感じなんです。
片方が本調子じゃない時、カバーし合うのがダブルスの面白さなのですが、町田さんの場合、それがコート上に5人いて、それ以外の選手もいるわけですよね。大人数でひとつのモノを作り上げていくのは、本当にリスペクトしかないんですけど、コミュニケーションを取る際に何を気にしているのかなって。

うちは15人ぐらいメンバーがいるんですけど、誰かひとりが全体を引っ張るというよりは、各々が関係性をもってチームが動いている感じですね。ただ、私も年長になってきたので、付き合いも長くなって信頼関係ができている選手にはビシッとストレートにモノを伝えられるんですけど、最近の若い選手はけっこう難しかったりします(苦笑)。
志田 ああ、難しいですねえ。
町田 本当に考え方が違うというか、でも、そこでこっちがあきらめてしまうのではなく、タイミングを見計らって声がけをしたり、ご飯やカフェに一緒にいったり、時にドライブなんかも行ってコミュニケーションを取るようにしていますよ。
志田 えー、すごいですね。コミュニケーションって本当に大事で、プレーに反映されますよね。いや本当、町田さんは優しいですね。
町田 いや、そんなことないですよ。チームなんで、最悪ひとりがダメでも、ほかのみんなががんばればいい。カバーし合えるのがチームスポーツのよさだし、自分の調子が悪くてもほかにできることを見つけて、それぞれが自覚を持って動き出したらチームとしても強くなれる。
志田 そうですよね。
【「解決するまで、ひたすら話そう」】
町田 そういう意味で、ふたりでプレーしているほうがすごいと思いますよ。人数が少ないほど、ごまかしがききませんからね。
志田 そうなんですよ。試合でも調子が悪いひとりが狙われたら終わりなんで......。
町田 そう思います。ふたりはケンカとかしないんですか?
志田 全然ありましたよ。ただ、私生活においてはないです。やっぱりプレーに関することですよね。
これは若い時の話なんですけど、ふたりでナショナルチームに行った時、頼れる人も少なかったし、環境も違うので、けっこう難しいことがあって......。仲がいいからこそ、雰囲気が悪くなると思って躊躇してしまい、伝えたいことがうまく伝わらなかったり、それでぶつかり合うことはありました。
町田 どうやって解決したんですか?
志田 とにかく「解決するまで、ひたすら話そう」みたいな感じになりました。
町田 いや、難しいことも少なからずありますけど、チームが一丸となって結果が出た時には、これ以上にうれしいことはないですよね。
(つづく)
◆町田瑠唯×志田千陽・後編>>「街中で声をかけられるでしょ?」「国内は余裕で堂々と歩いています(笑)」
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【profile】
町田瑠唯(まちだ・るい)
1993年3月8日生まれ、北海道旭川市出身。ポジション=ポイントガード。札幌山の手高3年時に高校バスケ3冠を達成。卒業後の2011年に富士通レッドウェーブに加入し、初年度にWリーグのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞する。2021年の東京五輪はPGとしてチームを牽引して準優勝に貢献。2022年2月にワシントン・ミスティクスと契約し、日本人4人目のWNBAプレーヤーとなる。コートネーム=ルイ。身長162cm。
志田千陽(しだ・ちはる)
1997年4月29日生まれ、秋田県南秋田郡出身。