町田瑠唯(バスケットボール)×志田千陽(バドミントン)
異競技スペシャル対談・後編
◆町田瑠唯×志田千陽・前編>>「あまり球技が得意じゃなくて...」「得意科目は体育でした(笑)」
◆町田瑠唯×志田千陽・中編>>「パートナーとケンカしない?」「全然ありましたよ」
町田瑠唯選手は東京オリンピックで銀メダル、志田千陽選手はパリオリンピックで銅メダルを獲得している。トップアスリートしか知ることができない世界を、ふたりはどう感じたのだろうか。
オリンピックと向き合った競技者としての視点だけでなく、ひとりの女性としてのオフタイムの話まで、ふたりが交わす会話のネタは尽きない。
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── ナショナルチームの話が出ましたが、志田選手のように同じパートナー(松山奈未/取材日=ペア解消発表前)ではなく、バスケットボール日本代表は各チームから選手が集まるので、イチからコミュニケーションや信頼関係を築くのは苦労がありそうですね。町田瑠唯(以下:町田) そうですね。みんなそれぞれ違うチーム、違うルーティンでやってきているので、それをひとつにまとめて同じ方向を向くのは、けっこう時間がかかると思います。
志田千陽(以下:志田) でも、ひとつにまとまった時がすごそうですね。
町田 バスケットIQの高い選手が多いですし、まとまり出したら一気に一体感が生まれて動き出すので、そこにはすごく醍醐味を感じていました。
志田 その瞬間、絶対に楽しいでしょうね。まわり出した、みたいな。
町田 それが東京オリンピックだったし、全員が同じ意識を持ってハマったって感じだったんです。
志田 なるほど。それであの銀メダルにつながったわけですね。でも本当、オリンピックって特別な舞台ですよね。
町田 本当にそう思います。
志田 私が初めて出場したのはパリオリンピックなんですけど、コートに立ってみなければわからないすごさ、というのを感じたんです。これまでいろいろ大きな大会に出てきましたけど、オリンピックの雰囲気は一番楽しかったし、特別なものだったんです。人間としても成長できたし、ああいった経験ができたのはすごい財産になりました。
町田 自分が最初に出たのはリオオリンピックだったんですけど、小さい時からの夢だったし、「オリンピックってこんな雰囲気なんだ」ってシンプルに楽しみましたね。
志田 観客の方がすごく盛り上げてくれて、スタンディングで拍手してくれたり、スタンドを見ると笑顔ばかりで、なんか緊張よりも楽しさが勝ったオリンピックでした。みんなに「変なの」って言われますけど、楽しかったし、特別な時間でした(笑)。
【インスタのフォロワーが10倍に】
町田 わかります。ただ、リオ大会はプレッシャーもなく楽しめたんですけど、東京大会はちょっと違いましたね。やっぱり自国開催ですし、結果を残さなければいけないという気持ちで。
リオ大会の時は若手のひとりで、先輩たちについていくだけでした。でも、東京大会の時は上から2番目の年齢で、楽しむことよりも責任感のようなものが芽生えてしまって......。結果、メダルが取れてめちゃくちゃうれしかったのと同時に、ホッとしたのを覚えています。
志田 あの時、めちゃくちゃ応援していました。
町田 オリンピックの影響力ってすごいですよね。東京大会が始まる前は、女子バスケットはあまり注目されていませんでしたが、勝ち進むたびにだんだん大きな話題になっていって、地上波でも放送されました。大会前はInstagramのフォロワーが2万人ぐらいだったんですけど、大会が終わる時には20万人ぐらいになっていて「えっ、すごっ!」みたいな感じになりました(笑)。
志田 わかります(笑)。

志田 でも、東京大会は1年延期したから、調整とか大変だったと思うんです。私も代表選手のスパーリングパートナーをやったりしたので、プレッシャーも含めてすごく難しい状況なんだろうなって想像できました。なので本当に、町田さんたちの活躍には感動したんです。
町田 ありがとうございます。オリンピックで結果を出せるか出せないで、今後の人生が違ったものになるなと実感できた大会でした。
志田 そうですね。
町田 全然ないんですよ。
志田 えっ、バスケットボールの人気、すごいじゃないですか。
町田 身長の高い選手は声をかけられるみたいですけど、私は(身長が低くて)紛れちゃうから(笑)。志田さんは声をかけられるでしょ?
志田 いや、国内は余裕で堂々と歩いていますよ(笑)。逆にバドミントン熱の高い中国やインドネシア、マレーシアのアジア地域だと、しょっちゅう声をかけられたりします。
町田 へえ~、そうなんですね。
【町田はインドア派。志田はアウトドア派】
── ところで話は変わりますが、志田さんは乃木坂46や日向坂46の大ファンで、特に山下美月さんの大ファンだとか。
志田 はい。小さい時は男性アイドルとか、ほかには韓流女子とか好きだったんですけど、中高生の時に西野七瀬さんを知って「かわいい!」って思って、そこからハマりました。その後、乃木坂に山下美月さんが加入して、めっちゃかわいくて、知れば知るほど好きになってしまって、推しに......。
楽曲も含めて、憧れの女子が詰まっているんですよ。ドキュメンタリー映像を見ても、裏ではすごく努力しているので、私ももっとがんばろうってすごくパワーをもらえるんです。町田さんは、好きなアーティストとかいるんですか?
町田 あいみょんさんが好きで、ふだんはもちろん、試合前も気持ちをリラックスさせるために聴いたりしていますよ。オリンピックが縁で、あいみょんさんとは仲良くさせてもらっているんですけど、まだライブに1回しか行ったことがなくて、毎年行きたいなと思っています。

町田 私はけっこうインドア派なんですよ。あまり外に出かけず、家にいることが多いですね。でも、夜に友だちと食事に出かけたり、ドライブが好きなので車で海のほうに行ったりしますよ。
志田 おしゃれだ。私は今、熊本に住んでいるんですけど、逆にアウトドア派です。お買い物に行ったり、美容とかもすごく好きなので、そういうのを調べて足を延ばしたり。休みが2日あったら1日は休養にあてて、もう1日は遊んでいる感じですね。
町田 アウトドア、いいですねえ(笑)。
── では、最後に今後の展開や目標を教えてください。
町田 あまり先のことを見ることができるタイプじゃないので、とにかく目の前の目標をクリアしていくことですね。まだ引退も考えていないですし、行けるところまで行きたいと思っています。
志田 カッコいい......。
【バスケとバドの楽しさを知ってもらいたい】
町田 ただ、コロナ禍で活動できない時に、引退後のセカンドキャリアを考えて会社を立ち上げたんです。自分のやりたいことを、一緒にやりたい人とやっていけるのが楽しいだろうし、そのほうが自分らしいかなって。
アスリートのサポートであったり、アパレルなどもやっていますし、今後はクリニックなどのイベントもやっていこうと考えていて。バスケットの楽しさをたくさんの人に知ってもらうための活動をしていこうと考えています。
志田 すごいですね。私はまだ世界選手権で結果を出せていないので、ふたりで乗り越えていけたらなって。
あとは、たくさんの人にバドミントンの会場に足を運んでもらいたいですね。現地観戦でないと感じられない駆け引きとかスピード感とかがあって、きっと手に汗握る展開があると思うので、ぜひ体験して、バドミントンの楽しさを多くの人に知ってもらいたいと思います。
町田 がんばってくださいね。
志田 ありがとうございます。今日は町田さんとお会いするのがすごく楽しみで、実際に話をしてみると、まわりを生かすために自分はどうあるべきかという考えも聞けましたし、本当に人間的に尊敬できるし、優しくて素敵で、完全にファンになっちゃいました。試合にも行ってみたいし、これからも応援しています。
町田 ありがとうございます。こういう機会がないと話をすることもなかなかできなかったので、貴重な時間になりました。志田さんの魅力もすごく感じられたし、バドミントンの奥深さも感じられて、もっと知りたいなと思いました。世界選手権、全力で応援しますね!
<了>
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【profile】
町田瑠唯(まちだ・るい)
1993年3月8日生まれ、北海道旭川市出身。ポジション=ポイントガード。札幌山の手高3年時に高校バスケ3冠を達成。卒業後の2011年に富士通レッドウェーブに加入し、初年度にWリーグのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞する。2021年の東京五輪はPGとしてチームを牽引して準優勝に貢献。2022年2月にワシントン・ミスティクスと契約し、日本人4人目のWNBAプレーヤーとなる。コートネーム=ルイ。身長162cm。
志田千陽(しだ・ちはる)
1997年4月29日生まれ、秋田県南秋田郡出身。6歳からバドミントンをはじめ、青森山田中・高時代は女子ダブルスで日本一に輝く。高校卒業後の2016年に再春館製薬所に入社。1学年下の松山奈未との「シダマツ」ペアでワールドツアー優勝を重ねる。2024年のパリ五輪では3位決定戦に勝利して銅メダルを獲得。2025年9月より混合ダブルスで五輪2大会銅メダルの五十嵐有紗と新たなペアを組む。世界ランキング最高位2位。身長162cm。