AIG女子オープン(全英女子)で山下美夢有が優勝し、4月のシェブロン選手権を制した西郷真央と、今季は日本勢が海外メジャー2大会で栄冠を手にした。そのほか、今季から米女子ツアー参戦を果たした竹田麗央、岩井千怜がすでにツアー優勝を飾っている。

また、山下が勝ったAIG女子オープンでは、勝みなみが2位タイ、竹田が4位タイという好成績を残し、まさに今、世界の女子ゴルフ界で日本勢が躍動。際立った存在感を示している。女子ゴルフ界において、日本勢はなぜここまで強くなったのか。村口史子プロに、その理由についても話を聞いてみた――。

◆山下美夢有の全英女子制覇を村口史子プロが分析>>


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――AIG女子オープン(全英女子)では、優勝した山下美夢有選手のほかにも、勝みなみ選手が2位タイ、竹田麗央選手が4位タイと奮闘しました。

村口史子(以下、村口)勝選手も、竹田選手もいいプレーを見せていましたよね。あの風のなか、ふたりとも自分のゴルフができていて、いいショットも出ていました。相当な自信になったと思います。また、こうした結果が(今後の)米女子ツアーで戦う日本人選手たちにも刺激を与え、相乗効果となって表われるのではないでしょうか。

――今季は、今回の山下選手と4月のシェブロン選手権で優勝した西郷真央選手と、日本勢ふたりがメジャー大会を制しました。こうした日本勢の躍進をどう見ていますか。

村口 どんなコースでも、どんな芝でも、力が出せるというのは(今の日本人選手たちの)技術が本当にすごいのだな、と思いますね。

もちろん、それは日本人選手に限ったことではありませんが、今回のAIG女子オープンでも、山下選手や勝選手、竹田選手らが慣れない芝やブッシュなどの厳しい条件のなか、自分のプレーをして、うまく(スコアを)まとめてきました。そういった姿を見ていると、(今の選手たちは)"ゴルフ力"というのが、かなり高いレベルにあるのだろうなと思います。

――以前も、日本のトッププレーヤーが数多く米ツアーに挑戦してきました。しかし、日本とは異なるアメリカの芝や環境などに対応できず、日本ツアーで頂点に立つような選手であっても、結果を出せずに苦しんでいる姿がよく見られました。それが今の若い選手たちは、米ツアーに挑戦してすぐに結果を出しています。これまでの選手たちとは、何かが違うように感じるのですが、いかがでしょうか。

村口 明らかに(今の若い選手は)"違う"と思いますよ。自分を信じているというか、自らの力に対して自信を持っているような気がします。

 それに、人に対するプレッシャーがまったくないですよね。物怖じしないというか。昔だったら、米ツアーに行くとすごい選手、有名な選手がいっぱいいて、「あっ、あの有名な選手だ」と思って気後れしてしまったり、そういう選手たちの雰囲気にのまれて萎縮してしまったり、というのがあったのですが、今の選手にはそれがない。

 向こうの選手たちも若くなっているのもあるかもしれませんが、強烈なパワーヒッターの選手がいても、何とも思わない。

以前なら「うぁ~」となって、ちょっと腰が引けてしまうようなこともあったと思うのですが、今の選手たちは気持ちの強さもあって、まずは自分がやるべきことをきちんと分析することに注力しています。そのうえで、目の前のコースに対して、どういうプレーをして、どう攻略していくか、ということに集中しているような気がします。

――確かに、今の若い選手たちからはメンタル面の強さを感じます。

村口 現在の日本勢の躍進においては、おそらく周囲の支えも大きいと思います。選手の家族をはじめ、コーチやトレーナーなど"チーム"で米ツアーに挑んでいて、選手たちはゴルフ以外のところで余計なことを考えずに済む。ゴルフ以外で余計なストレスを抱えていない、というのも今の好成績につながっているのではないでしょうか。

 昔は、それこそ岡本綾子さんや小林浩美さんらが米ツアーで戦っていた頃とか、その少しあととかは、ひとりで米ツアーにやってこないと、向こうの人たち(選手や関係者、メディアやファンなど)から受け入れてもらえない雰囲気があったように感じます。でも今は、そういったことはなくなって、ほとんどの選手が"チーム"で戦っている。選手たちの精神面において、その存在は本当に大きいと思います。

――現在の日本勢の活躍を見ると、隔世の感を覚えます。メジャーを勝つことも当たり前、という時代になったような気がします。

村口 そうですね。

渋野日向子選手がAIG全英女子オープンを勝って(2019年)、笹生優花選手が全米女子オープンを2度制して(2021年、2024年)、今の若い選手たちの間では「私も頑張ればメジャーで勝てる」という流れになってきている、というのはあると思います。そして、現在日本で戦っている選手たちも、これからプロを目指している選手たちも、それが目標になっている。日本で勝つことはもちろん、世界で勝つことも現実的に見据えていると思うんですよ。

 それはやはり、今の時代というのは、テレビやインターネットなどから、どんな情報でも入ってくるようになったから。世界中のツアーの試合も、世界トップクラスの選手の技術も、すぐに見ることができるじゃないですか。おかげで、世界がすごく身近になっていると思うんです。そういった変化というのは、すごくいいなと思いますし、今後の日本人選手たちの活躍がますます楽しみになりますよね。

――今後、日本勢のさらなる飛躍が期待できますね。

村口 ちょうど10年前(2015年)、チョン・インジ選手(韓国)が全米女子オープンで優勝したとき、私はラウンドリポーターとして彼女のプレーを間近で見ていたのですが、彼女は最終日の最後の上がりホールでも、ピンを狙って打っていたんです。後続に1打差か、2打差か、つけていたと思うんですが。そのプレーぶりを目の当たりにしたとき、日本人にはまだこういうプレーをする人はいないな、と思ったんですよ。

 でも今は、日本のツアーで戦う選手たちの多くが、自らがリードしている状態にあっても、最後まで果敢にピンを狙ってくる。

ロングホールでは、たとえ2オンできなくても刻むことなど考えず、グリーン近くまでどんどん打っていって、3打目でピンを狙って(カップに)入れようとしてくるんです。ここ5年くらいでしょうか、日本でもそういう流れに変わってきたのは。そういった状況を見て、まさに世界と同じ流れになっているな、と感じます。そういう意味でも、(今後の日本勢の活躍が)本当に楽しみですよね。

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