J1リーグも後半戦に入り、5試合を消化。リーグの上位、下位グループが明確になってきたなかで、各クラブの夏の補強は、ここからの戦いにおいて重要になる。

 夏のウインドーは8月20日まで開いているが、サマーブレイクが明け、リーグが再開するこのタイミングまで、印象的な補強を行なったクラブをまとめる。

【Jリーグ】J1夏の移籍で得したクラブは? 上位に即戦力加入...の画像はこちら >>

【上位で効果的な補強をしたクラブ】

 現在首位を走り、リーグ3連覇がかかるヴィッセル神戸は、6月の特別ウインドーで横浜F・マリノスからDF永戸勝也を補強。左サイドバックは、2月に初瀬亮が移籍して以来、主軸が定まらない状況が続いていたが、ようやく経験豊富な実力者を加えることができた。

 続いて今季、J2のブラウブリッツ秋田で22試合10得点とブレイクしたFW小松蓮を獲得。大黒柱の大迫勇也、武藤嘉紀を負傷で長期間欠いているなかで、貴重な得点源を確保した。9月にはACLエリートが始まるため、日程はより厳しくなる。小松がJ1でも通用するストライカーであることを証明できるか注目である。

 3位の柏レイソルはリカルド・ロドリゲス新監督のもと、攻撃的なサッカーでリーグを席巻し、2011年以来のJ1優勝が狙えるポジションで、興味深い補強を行なった。6月に川崎フロンターレからベテランのMF瀬川祐輔が4年ぶりに復帰し、アルビレックス新潟から突破力のある若手のMF小見洋太を獲得。

 7月には徳島ヴォルティス時代の教え子であるMF小西雄大をJ2のモンテディオ山形から加えた。巧みなパスワークを武器とする柏にとって、中盤のクオリティは生命線のひとつ。長らくケガで離脱していた原川力も復帰し、熊坂光希が長期離脱のなかでも、中盤の選手層は分厚い陣容となった。

【戦力流出を抑え、即戦力を補強】

 4位の京都サンガF.C.もクラブ初の優勝を狙える重要なシーズンとなっている。そんななか、米本拓司が第22節ガンバ大阪戦のケガで全治3~4カ月の長期離脱となり、7月にはキャプテンの川﨑颯太がドイツ1部のマインツに移籍。

MFの重要な戦力をふたり失っている。

 しかし、川﨑の移籍に備えて、6月のウインドーでJ2のジュビロ磐田からMFレオ・ゴメスを獲得し、すでに主力の活躍を披露している。7月に神戸からMF齊藤未月、ブラジル2部のアヴァイFCからMFグスタボ・バヘットの補強も発表した。

 長期間のリハビリを経てようやく復帰した齊藤は、どれほどコンディションを取り戻しているかは未知数。かつての恩師である曺貴裁監督のもとで復活を果たせれば、京都にとっては大きな後押しとなることは間違いない。

 5位サンフレッチェ広島は、現状はふたりの補強にとどまっているが、ふたりとも十分にインパクトがある。ひとりはジャーメイン良が1トップで負担の大きかったところで柏から木下康介を補強。すでに6試合で3ゴール1アシストと存在感を示している。

 また、FCソウルから韓国代表DFのキム・ジュソンを獲得。広島の最終ラインといえば佐々木翔、荒木隼人、塩谷司の鉄板3人の代えが利かないという課題をずっと抱えてきた。その牙城をキム・ジュソンが崩し、一角を担えるかは注目だ。

 6位FC町田ゼルビアは、ここまで昨季のような目立った大型補強は行なっていない。

一方で、中山雄太や韓国代表のオ・セフン、オーストラリア代表のミッチェル・デューク、ドレシェヴィッチなど、各国代表クラスを控えに抱えながら、戦力流出は髙橋大悟のギラヴァンツ北九州(J3)移籍のみにとどめている。

 唯一獲得したのがJ2のV・ファーレン長崎で主軸として活躍していたMF増山朝陽だ。クラブ初のACLエリートを見据えて、強力な戦力の上積みとなった。流出を最小限に抑え、複数ポジションをこなせる即戦力の補強に成功した。

【下位で積極補強したクラブ】

 残留争いを完全に抜け出したい14位FC東京も積極的に動いている。まずは手薄になっていたサイドバックに、ドイツ2部のハノーファーから5年ぶりにDF室屋成が帰還。急務だったストライカーには浦和レッズからFW長倉幹樹を補強し、松橋力蔵監督との再会となった。

 また、ベルギー1部のロイヤル・アントワープへ移籍した野澤大志ブランドンの後釜として、Jリーグでの実績も豊富なGKキム・スンギュ、さらに失点の多い守備陣の立て直しにはDFアレクサンダー・ショルツに白羽の矢を立て、即戦力を的確に加えた。

 降格圏にいる名門の横浜F・マリノスは、ストライカーのアンデルソン・ロペス、DF永戸の退団が、ひとつのサイクルの終焉を象徴する動きだった。降格の危機に瀕しているなかで、J2のいわきFCでブレイクしたFW谷村海那を新たなストライカーとして迎えた。

 さらにイスラエル代表FWのディーン・デイビッド、ブラジル人MFのユーリ・アラウージョを補強。守備陣には1年半ぶりにDF角田涼太朗の復帰が決まった。

 最下位の新潟は稲村隼翔や小見、太田修介、秋山裕紀、宮本英治という主力級がごっそりと抜けて厳しい状況に追い込まれていた。しかし、7月に失った戦力を上回る7人を獲得。充実した新戦力の勢いで、奇跡の残留は実現するか。

>>後編「J1夏の移籍で損しているクラブ」へつづく

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