J1リーグは上位から下位まで、夏場の移籍市場で効果的な補強や積極的な補強をして後半戦に臨もうとするクラブがある一方で、戦力アップの足りないクラブや戦力流出したままのクラブもある。

 夏のウインドーは8月20日まで開いているが、はたしてこうしたクラブにさらなる補強はあるのか?

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【優勝を狙うには不十分】

 現在2位の鹿島アントラーズは、5月に安西幸輝と関川郁万という絶対的な主力ふたりをケガによる長期離脱で失った。関川の穴はキム・テヒョンで埋めていたが、安西の穴は簡単には埋まらない状況が続いた。

 6月の特別ウインドーでセンターバックに東京ヴェルディから千田海人、左サイドバックにはシント・トロイデンから小川諒也という即戦力を補強した。

 ただ、優勝を狙うためにはこれだけでは不十分だろう。とりわけ左サイドの突破を担っていた安西の穴は、タイプの違う小川でも埋めきれず、攻撃力低下は解決していない。横浜F・マリノスのヤン・マテウス獲得の噂もあったが、現状は千田と小川のふたりのみとなっている。

 前節は柏レイソルとの上位対決に勝って連敗を脱出したとはいえ、連勝していた前半戦のような勢いを取り戻すためには、残りの移籍期間で突破力のあるアタッカーを獲得できるか。鹿島のここからの優勝争いにおいて、ここが大きな焦点になりそうだ。

 8位浦和レッズは、クラブワールドカップ出場のため、今オフから積極的に補強を行なってきた。大会直前の6月にはFW小森飛絢を獲得し、入れ替わるように長倉幹樹がFC東京へ。大会が終わると、さらにFW陣では二田理央が湘南ベルマーレ、髙橋利樹が清水エスパルスへ移籍した。

 前線は余剰戦力のため移籍はやむを得ないが、DF井上黎生人をセレッソ大阪に放出したことで、センターバックの控えは若手の根本健太のみとなった。マリウス・ホイブラーテンとダニーロ・ボザという主軸のふたりに不測の事態があった場合、井上がいなくなったことは大きな不安材料だ。

 当然、ここの補強には動いていると推測するが、現状はまだない。

首位と勝ち点8ポイント差と、優勝争いにはギリギリ踏みとどまっている。ここから十分な体制で巻き返すためには、センターバックのバックアッパーの確保は必須である。

【今夏の移籍市場でもっとも影響を受けたクラブ】

 FC東京同様に、残留争いから抜け出したい15位名古屋グランパスは、6月にブラジル1部のフルミネンセからFWレレを期限付き移籍で獲得した。しかし、FIFAが定める移籍に関する規定に抵触し、まさかの今季の公式戦出場不可という事態に陥った。

 深刻な得点力不足が続くなか、8月に入って東京ヴェルディからFW木村勇大を獲得。得点力があり、ターゲットになれるストライカーをようやく加えることができた。レレの騒動がどれほど影響したかは定かではないが、新しいストライカーの加入が2カ月も遅れた影響は小さくないはず。

 今夏の移籍市場でもっとも影響を受けたのは東京Vかもしれない。6月に千田が鹿島へ移籍したことは、そこまで大きな影響はなかっただろう。しかし、7月に不動のウイングバックであるMF翁長聖が、J2のV・ファーレン長崎へ電撃移籍したことは大きな衝撃を受けた。

 8月になってJ2 のブラウブリッツ秋田からDF井上竜太、同じくJ2の水戸ホーリーホックからFW寺沼星文を獲得。しかし、前述したように木村が名古屋に引き抜かれたばかりか、先日の東アジアE-1サッカー選手権で日本代表に選ばれた主軸中の主軸である綱島悠斗がベルギー1部のロイヤル・アントワープへの移籍でチームを離れた。

 今季のチームを軸として支えてきた綱島と翁長が流出した穴は、簡単に埋まるとは思えない。

降格圏の横浜FMとの勝ち点差はわずか7ポイント。城福浩監督の手腕でこの苦境を乗り越えることができるか。

【厳しい補強状況】

 17位で降格圏と紙一重の位置にいる湘南は、この夏に福田翔生がデンマーク1部のブレンビー、畑大雅がベルギー1部のシント・トロイデン、鈴木淳之介がデンマーク1部のコペンハーゲンと、主力の3人が欧州へと旅立った。

 海外志向のある選手たちを送り出すという面ではよかったが、湘南の置かれている状況としては非常に厳しい。浦和から二田、アルビレックス新潟からFW太田修介を獲得して福田と畑の穴埋めはできたかもしれない。

 ただ、日本代表DFである鈴木の後釜は、いまだ補強できていない。直近の失点の多さから見ても、鈴木の穴は大きい。守備者としての能力の高さだけでなく、ビルドアップの質もリーグ屈指のレベルだった。代わりのDFを見つけるのは簡単ではない。

 残留するためには、今の失点の多さをどう解決するかがキーになる。毎年苦しみながらも残留を果たしてきた湘南の粘り強い残留力を、今季も発揮できるか。

 19位の横浜FCは、2022年から指揮を取っていた四方田修平監督を7月23日に解任し、後任には三浦文丈コーチが内部昇格で就任した。

 リーグ再開に向けて補強を行なった。トルコ1部のコンヤスポルからJリーグで実績のあるGKヤクブ・スウォビィクを獲得できたことは大きい。ただし、直近6連敗のなかで2点しか取れていない深刻な得点力不足に対し、補強したのがブラジル人FWアダイウトンである。

 ジュビロ磐田やFC東京などで実績があるアタッカーだが、34歳という年齢から全盛期のようなキレやスピードを期待するのは難しい。残留に向けた起爆剤になれるかと言われると不安は残る。

 守護神スウォビィクを中心に失点を減らし、チームでどう得点力不足を補っていくか。そこが奇跡の残留への分岐点だろう。

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