甲子園名門校の歴代ベストナイン~北海編

 連日、熱い戦いを繰り広げている第107回全国高等学校野球選手権大会。これまで高校野球の歴史に名を刻んできた伝統校から甲子園初出場を果たした新鋭校まで、49の代表校が揃った。

そのなかから、これまで甲子園で数々の名勝負を繰り広げ、多くの名プレーヤーを輩出した名門校の「歴代ベストナイン」を40年以上にわたり現場取材を続ける戸田道男氏に選出してもらった。

 今大会最多の41回の出場を誇る北海は、NPB通算2173安打を放った大打者から、甲子園で1試合5盗塁をマークした韋駄天まで実力者が揃った。

北海 歴代ベストナイン

1 (中)谷木恭平
2 (遊)佐藤兼伊知
3 (左)若松勉
4 (右)吉沢勝
5 (一)川村友斗
6 (三)佐藤龍世
7 (捕)村井英司
8 (二)中村之保
9 (投)岡崎光師

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【今も破られぬ1試合5盗塁の大記録】

 夏の甲子園41回目の出場は歴代最多。2023年夏には2勝を挙げ、大正、昭和、平成、令和の「甲子園4元号勝利」を達成した。創部100年をゆうに超えて「北の古豪」であり続ける名門・北海は、数々の名選手を野球界に送り出し続けている。

 歴代のベストナインをオーダー順に選んでいくと、まずは63年春準優勝に貢献した1番センター・谷木恭平。立大から新日鉄室蘭を経て中日入りし、74年にリーグ優勝した中日応援歌の元祖「燃えよドラゴンズ」に「2番谷木が送りバント~」の歌詞で登場する。63年春は個人9盗塁。準決勝・早稲田実戦での1試合5盗塁は今も破られぬ大会記録だ。

 2番ショートにはロッテのバイプレーヤーとして長く活躍した佐藤兼伊知(健一)。高校時代はエースを務め、77年夏の南北海道大会決勝で札幌商(現・北海学園札幌)に敗退、甲子園の土は踏めなかった。

 3番レフトは言わずと知れたレジェンド・若松勉。電電北海道を経てヤクルト入りし、NPB通算2173安打で生涯打率(4000打数以上)は歴代2位の.319。

北海道が生んだ最大のバットマンとして名高い。甲子園出場は3年時の65年夏に背番号14で出た一度だけ。初戦で佐賀商に敗れたものの、3番ライトで出場し、4盗塁を記録する快足ぶりを見せた。

 4番ライトには63年春準優勝のエース左腕・吉沢勝を抜擢する。長野県佐久市から親類の縁を頼って「野球留学」。181センチ、74キロの堂々たる体躯で2年時の62年から甲子園のマウンドに立ち、63年春はエースで4番。準決勝の早稲田実戦では自ら劇的なサヨナラランニング本塁打を放ち、北海道勢初の甲子園決勝進出を決めた。各球団の争奪戦の末、巨人に入団するも、プロ6年間で通算1勝と伸び悩んだのは惜しまれる。

 5番ファーストには現ソフトバンクの川村友斗、6番サードは現中日の佐藤龍世とNPB現役選手が並ぶ。川村は2年時の2016年夏準優勝のチームで5番ファーストを務め、3回戦、準々決勝と2試合連続本塁打をマーク。

 佐藤龍世は甲子園不出場ながら富士大を経てドラフト7位で西武入団。右の強打者として日本ハム--西武と渡り歩き、今年6月に中日に移籍した。

【夏の甲子園2025】北海・歴代ベストナインを選出! 1試合5盗塁の韋駄天にプロ通算打率3割超えレジェンドまで多士済々
1994年に2年生エースとして32年ぶりベスト8の立役者となった岡崎光師 photo by Nikkan sports

【先発マウンドを任せるのは...】

 7番キャッチャーの村井英司は3年時の67年に主将を務め、チームは夏の甲子園出場を果たしながら自身は骨折によりベンチ入りメンバーからも外れる不運。電電北海道で捕手として3年連続都市対抗出場を果たし、日本ハムではおもにDH、代打の切り札として活躍した。

 8番セカンドの中村之保は3年時の62年春夏に主将を務め、1番ショートで甲子園出場。法大に進み、右投げ左打ちのシュアな打撃で神宮でも活躍し、66年二次ドラフトで南海の1位指名を受けてプロ入り。71年に阪神に移籍するもプロ生活は7年間と短かった。

 最後に選出する9番ピッチャーが難しい。60年センバツ4強のエースでNPB通算50勝をマークする佐藤進(のちに国鉄ほか)をはじめ、有倉雅史(のちに日本ハムほか)、鍵谷陽平(のちに日本ハムほか)らプロで実績を残した右腕や、2016年夏準優勝のエース・大西健斗ら歴代のベストナイン投手にふさわしい人材は数多いが、ここは94年夏の2年生エース・岡崎光師に先発マウンドを任せよう。

 173センチの上背から切れ味鋭い速球をテンポよく投げ込んで3勝を挙げ、32年ぶり夏ベスト8の立役者になった。先発回避した準々決勝でチームは佐賀商に3対6で敗れて快進撃はストップ。結局、初回無死から救援マウンドに立った岡崎が9回を投げ抜いただけに、「岡崎先発なら結果はどうなっていたか......」と思わせた。

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