ヨーロッパ各国でプレーする日本人選手は100人を超える勢い。そのなかで、今季もっともジャンプアップが期待されるのは誰か。
メンタル、フィジカル両面で強靭な左サイドバック
小杉啓太(ユールゴーデン)
浅田真樹●文 text by Asada Masaki
日本代表における長友佑都(FC東京)の扱いをめぐっては、さまざまな意見が聞かれる。
大まかに論点をまとめれば、いわゆる精神的支柱としての役割(だけ)で招集されることをよしとするのか否か。そして、いまだ一選手として日本代表にふさわしい力を備えているのか否かの2点である。
前者についてどう考えるかはともかく、日本代表において長友が長らく務めてきた左サイドバックの後釜、すなわち"ポスト長友"がなかなか現れてこない実情があるのは確かだろう。
森保一監督が主戦システムとして3バックを採用しているのも、これとまったく無関係ではないのかもしれない。
そこで期待したいのが、ユールゴーデン(スウェーデン)に所属する19歳、小杉啓太である。
U-17日本代表として、一昨年のU-17ワールドカップに主力としてはもちろん、キャプテンとして出場した小杉は、世界基準の相手に対しても強度の高いプレーを披露。このレベルでも十分に"戦える選手"であることを証明した。また、試合中に甘さが見えれば、チームメイトには躊躇なく厳しい言葉も投げかけるなど、リーダーシップがあり、メンタル的な強さを感じさせるのも彼の魅力だ。
身長172cmと体格的に恵まれているわけではなく、技術的にも目を見張るものがあるわけではないが、むしろメンタル、フィジカルの両面で、強度の高いプレーを継続的に発揮できる点は、海外向きの素材だと言えるだろう。
小杉は湘南ベルマーレのアカデミー出身であり、J2降格危機にあるクラブの現状を見ると、湘南は惜しい人材を手放してしまったものだとも感じるが、トップチームデビューを待たずに海外移籍へと踏みきったことは、むしろよりよい決断だったかもしれない。
「立ち上がり早々に自分のサイドから失点してしまって、名和田(我空/現ガンバ大阪)選手がいい形で取り返してくれたにもかかわらず、DFラインとして自分が責任をとるつもりだったけど、背後をやられて1点(決勝点)を決められた。(その後は)盛り返したつもりも、結局つもりで、そのまま終わってしまった。これが今の実力なんだなと感じた」
U-17ワールドカップのラウンド16でスペインに1-2と敗れ、そんな言葉で自身の不甲斐なさを悔いていた小杉は、「これが今の実力」と認めたうえで、さらなるレベルアップをなかば義務とし、早々に海を渡ったに違いない。
とはいえ、小杉が腕を磨く場はスウェーデンリーグ。ヨーロッパ5大リーグと比べれば、一段も二段もレベルが落ちる舞台であることは否定できない。現時点で日本代表にまで言及するのは、時期尚早だろう。
しかし、18歳で海を渡って1年あまり。すでに国内リーグでデビューを果たしたのはもちろんのこと、ヨーロッパカンファレンスリーグにも出場し、準々決勝では鮮やかなゴールまで決め、クラブのベスト4進出を大きく後押ししているのである。
日本という極東の島国で生まれ育ったティーンエイジャーとしては、十分すぎるほどの経験を重ね、成長の階段を着実に上がっていると言っていいだろう。
今夏にもステップアップの移籍があるのかもしれないという淡い期待はかなわなかったが、それでも小杉はまだ19歳だ。大きく体格に勝る相手との対戦を繰り返すことは、さらに自身の武器を磨くことにつながるだろう。
ヨーロッパでの新たなシーズンばかりでなく、その先も含め、彼の選択、そして挑戦を楽しみにしたい。