木村沙織 インタビュー
バレーボール女子世界選手権展望 後編(全2回)

木村沙織が世界バレーを展望 注目の18歳・秋本美空を「伸びし...の画像はこちら >>

 まもなくタイで開幕するバレーボール女子世界選手権(8月22日~9月7日)、女子日本代表は金メダルをかけて臨む。エースの石川真佑を筆頭に、それだけの実力のあるチームと言える。

「ネーションズリーグを見ていても、世界バレーでメダルに絡める要素はたくさんあるし、すごく楽しみです!」

 日本女子バレーを背負ってきた木村沙織は、明朗な声で語っている。彼女の持つ生来的な明るさこそ、もしかすると日本女子バレーの強さの源泉なのかもしれない。明るさは希望だ。たとえば18歳の秋本美空(みく)は、新代表を象徴するひとりだ。

【秋本美空は「伸びしろしかない」】

ーー木村さんも「スーパー女子高生」とメディアで騒がれましたが、18歳の秋本美空選手も共栄学園高時代からとても注目されてきました。彼女自身、もの怖じせずにプレーし、メディアとも向き合っている印象。こうした若手が出てくるのも、よい兆しと言えるでしょう。

木村沙織(以下同) (秋本)美空ちゃんには、伸び伸びやってほしいなと思います。「高さ、高さ」とメディアでは言われますけど、もちろん彼女は高さもありますが、世界と戦っていくことを考えた場合、日本人選手のなかでは高くても世界では普通。だからこそ、これから試合経験をたくさん積んでいってほしいです。

 なぜなら彼女自身は高さだけでなくセンスも優れているし、上から打つだけの選手じゃない。いろんなコースに打てるスパイクの幅もあって、ポジショニングも上手だなと思うので。とにかくたくさん試合に出て、いろんな相手と戦って、経験するところを見たいなと思います。

ーーネーションズリーグ日本ラウンドでは「初めて狙ってブロックアウトを打つことができました」と手ごたえを感じていたようです。やっぱり、日本の高校生同士だとブロックアウトを狙う必要もなかったんでしょうか?

 そうですね。高校の時はたぶん上から打てちゃいますから。「春高バレー」の美空ちゃんを見ていましたが、上から打つか、ブロックのサイドを抜いていました。それに、相手選手はみんな彼女の強打を待ち構えているから後ろへ下がって、フェイントしても決まっちゃうといった状況でした。

 これからSVリーグや代表で海外のチームと対戦する時、自分より高いブロックを経験すると思いますが、そこで自分がどう得点を取っていくか、じっくりと経験して技術を身につけられるはず。美空ちゃんは、伸びしろしかないから今後が楽しみです。

【「個人的に好き」というミドルブロッカーとは?】

ーーミドルブロッカーというポジションは、島村春世、山田二千華、荒木彩花、宮部藍梨と候補が多いですが、大型選手が多い海外のチームとどう対戦すべきでしょうか?

 日本は、ミドルもレベルが上がっていると感じます。そこをどうセッターが使うか。あまりプレッシャーをかけたくはないですが、どう組み立て、最後にどこに託すのか、そのゲームメイクでミドルが生きるかどうかも変わってくると思います。

 セッターとミドルが阿吽の呼吸のレベルで、目の合図で「こっちへ、あっちへ」というのを、それこそ竹下佳江さんと大友愛さんのコンビみたいに! 私はそのふたりをずっと近くで見ていましたけど、他のセッターとミドルとは関係が違っていて、阿吽の呼吸があるのを感じていました。メダルがかかったような試合は、そういう一本がとても大事になってくるので、練習のなかからどれだけ意識できるかが大事ですね。

ーーミドルで期待するプレーとは?

 みんな、それぞれいいですよね。

ネーションズリーグはジョン(島村)が大活躍していました。あれほど何度もブロード攻撃を決めているのは見たことなかったです。彼女は年齢が上がっているけど(33歳)、それにつれて運動量も上がっていて。見るたびに成長していると感じるので、すごいです。年齢とともに成長が止まらないっていうのは、(荒木)絵里香さんっぽいというか、雰囲気が似ていると感じます。

ーー宮部選手とは、現役時代に少しだけプレーした時期が重なっていますね。

 彼女がサイドだった時に少しだけですけどね。個人的に、私は(宮部)藍梨が好きです(笑)。キャラクター的なこともありますが、手の出しが早いところや、サーブもよい選手ですし、クイックも打つタイミングが人より少し早い。藍梨には頑張ってほしいと思っています。

【頼もしい石川真佑と佐藤淑乃の存在】

ーー木村さんにとって下北沢成徳高校の後輩であるリベロの岩澤実育選手はネーションズリーグで拾いまくっていました。

 正直に言うと、ネーションズリーグで初めて彼女の試合でのプレーを見たんですけど、岩澤選手はめちゃめちゃ拾いますね! 石川真佑選手と同じ高校なのもあるかもしれませんが、チームとの相性もよさそう。

キャラクター的に明るいですし、またいいリベロが出てきたなって楽しみです。

 どのポジションも競争は激しくなっていますが、リベロはとくにすごい争い。ネーションズリーグでは1試合ずつ替えられていて、そこで結果を残していかないといけない。すごくハードだと思いますが、これからの見どころです。

ーー最後に世界選手権の展望をお願いします。イタリア、ポーランド、ブラジルは好選手をそれぞれ擁し、かなり手ごわい印象です。そこで優勝へのキーマンになりそうな日本選手は?

 みんな金メダルを目指して頑張っているでしょうし、それだけの力があるチームだと思います。なかでも、石川選手と佐藤淑乃選手のふたりは今までの代表のなかでも、打ちきって得点にする力を持っているので期待したいです。ふたりともサーブがいいので、サーブで得点を取りにいけるのは頼もしい。

 今までは点差がついてしまうと、なかなか追いつけませんでしたが、石川選手、佐藤選手とサーブから得点できる選手がいるだけに、みんなで拾って頑張っていれば、それも不可能ではありません。その意味で、ふたりの存在は非常に大きいですね。ふたりが日本女子バレーのレベルを上げてくれているなと思います。

そして彼女たちにパスを託せたら、きっと何とかしてくれるという希望も感じられて。そこは大会を通して期待したいです。

終わり

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【profile】
木村沙織 きむら・さおり/1986年生まれ、東京都出身。2003年、アジア選手権で代表デビュー。2005年、東レアローズに入団。2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得。2012年に世界最高峰リーグであるトルコの「ワクフバンク」に移籍し、ヨーロッパチャンピンズリーグ優勝を経験。2016年リオデジャネイロ五輪でキャプテンとしてチームを牽引した。2017年に引退。現在は、子育てとともにメディア出演などマルチに活躍する。夫は元バレーボール選手の日高裕次郎氏。

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