ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――北海道シリーズの総決算であり、夏競馬唯一のGII戦、札幌記念(札幌・芝2000m)が8月17日に行なわれます。

大西直宏(以下、大西)昔はダート戦でしたが、1990年から芝で行なわれるようになり、1997年にGIIIからGIIへと昇格しました。

自分が現役だった時代にも、夏の大一番といった位置づけで、秋競馬に向けて重要なレースとなっていました。

 自分は、夏は新潟開催が主戦場だったので、札幌記念に乗ったのは一度だけ。2000年にミヤギロドリゴに騎乗して9着でした。機会があれば何度も乗りたいと思うような、華やかさと重みのある重賞と言えますね。

――過去10年の結果を振り返っても、勝ち馬にはネオリアリズム(2016年)、ブラストワンピース(2019年)、ノームコア(2020年)、ソダシ(2021年)、ジャックドール(2022年)など、GIウイナーや、のちにGI馬となった馬たちの名がズラリと並んでいます。今年も好レースが期待されますが、出走メンバーをご覧になっての、率直な印象を聞かせてください。

大西「スーパーGII」とも称されるだけあって、毎年豪華メンバーが集う札幌記念。しかし今年は、GI馬がステレンボッシュ(牝4歳)1頭のみ。全体的に小粒感は否めませんが、各馬の力量差は接近しており、馬券的には穴馬の探し甲斐のある面白いレースと言えるのではないでしょうか。

 サマー2000シリーズの王者争いの行方も含めて、例年よりも攻略ポイントは多岐にわたっています。ひと筋縄とはいかない一戦で、思わぬ結末になっても不思議ではありません。

――今年はかなりの混戦模様と言えそうですが、中心視される存在はどのあたりになるのでしょうか。

大西 札幌の芝2000mというのは、あまりクセのないコースで、能力のある馬がパフォーマンスを発揮しやすい舞台と言えます。となれば当然、格上のステレンボッシュには敬意を払う必要がありますが、今の勢いや洋芝への適性を考えると、ヴェローチェエラ(牡4歳)のほうが高い確率で首位争いに絡んでくるのではないか、と見ています。

――ヴェローチェエラは、前走のGIII函館記念(6月29日/函館・芝2000m)で1988年にサッカーボーイがマークしたレコードを37年ぶりに更新。重賞初勝利を飾りました。

大西 同馬は3歳時から安定感のある競馬を見せて、3歳秋にはオープン入りしましたが、重賞ではワンパンチ足りない走りで善戦止まり。距離も2400m前後がベストといったイメージでしたが、2000m戦の前走では3角からのロングスパートによって、鮮やかな勝ちっぷりを披露しました。

 同レースでは、若い鞍上の佐々木大輔騎手が迷いのない乗り方で、パートナーの脚を使いきって勝利へと導きました。佐々木騎手は、先週もGIIIエルムS(ペリエール)、GIII CBC賞(インビンシブルパパ)と土日の重賞を制して絶好調。今が伸び盛りの人馬の勢いは見逃せません。

――ヴェローチェエラは信頼できる軸馬と言えそうですが、伏兵として気になる存在はいますか。

大西 ココナッツブラウン(牝5歳)です。前走のGIIIクイーンS(2着。

8月3日/札幌・芝1800m)から中1週というタイトなローテですが、同馬はずっと札幌滞在なので、コンディション面で大きく割り引く必要はないでしょう。

【競馬予想】「スーパーGII」札幌記念にしては小粒なメンバー...の画像はこちら >>
 もともと高い潜在能力を評価されていた馬。それが、期待ほど結果を出せなかったのは"輸送でイレ込みやすい"という弱点の影響が大きかったようです。その意味では、現地滞在で臨めた前走こそが、陣営の理想に近い走りと言え、再び滞在競馬で臨む今回も期待できるのではないでしょうか。

――今回は牡馬相手の重賞で、初の2000m戦。そのあたりの見通しはいかがでしょうか。

大西 前走に比べてハードルが上がるのは確かですが、札幌記念は牝馬の活躍が目立つレースです。距離についても、クイーンSでは直線で馬群をさばくのに手間取って、少し脚を余していました。その点で、200mの距離延長も心配はいらないでしょう。

 展開的に見ても、アウスヴァール(せん7歳)、ケイアイセナ(牡6歳)といった逃げ候補がいて、前々で運ぶホウオウビスケッツ(牡5歳)もおり、ある程度ペースが流れそうなのも、末脚を秘めるこの馬には間違いなくプラスです。

 滞在競馬、展開など、今回はさまざまな面で理想的なシチュエーションにあって、陣営が重きを置いているのは、秋よりも"ここ"と見ます。ということで、充実の5歳牝馬、ココナッツブラウンを札幌記念の「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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