林陵平×倉敷保雄 ラ・リーガ2025-26展望 前編

 ラ・リーガの新シーズンを、試合中継の解説と実況でお馴染みの林陵平と倉敷保雄両氏が展望する。バルセロナ、レアル・マドリードの陣容と今季への期待を語った。

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【10番をつけたラミン・ヤマル】

 昨シーズンはバルセロナが強かったですね。守備はわかりやすくハイラインにしてプレッシャーもハイプレス。攻撃はペドリとフレンキー・デ・ヨングがうまく絡みながら、前線にはタレントがいると。そういう流れのなかで、今シーズンはハンジ・フリック監督がプラスアルファで何を出してくれるかは、非常に楽しみですね。

倉敷 楽しみですよね。だって昨シーズン、彼には時間がなかったわけですよ。シャビ・エルナンデス監督が続投するんだと思っていたら、フリック監督になりました。でも、準備する時間が短かった。

 アメリカでのプレシーズンではカンテラーノ(育成組織出身の選手)をたくさん使って、今年のバルサはこれでやるのかな、カンテラーノだから時間がかかるだろうなと思っていたら、たくましくなった選手が何人も出てきた。それであのハイプレス、ハイラインだからびっくりしました。それも研究されたから、多くの解説者の方も「もう通用しませんよ」とおっしゃったけど、修正して工夫していって、結局やりきってゴールインしちゃいました。

 本当ですよね。まあ、チャンピオンズリーグは惜しくも準決勝で敗退となりましたけど、本当にギリギリの戦いのなかでそのハイラインも微調整しながらあそこまでやり続けるのは簡単ではない。

 今シーズンもあれを見せてくれるのかと思うと、なんかすごいワクワク感もあり、心配な部分でもあります。

倉敷 今シーズンはラミン・ヤマルが10番を引き継いで、さあ、彼はリオネル・メッシの道を歩んでいくのかというのは、一番注目のポイントだと思うんです。バロンドール取りますよ! 5回も、6回も。

 林さんの目から見て、ヤマルはいかがですか?

 昨シーズンから、もうとんでもなかったですね。ボールを持つと違いを見せられる選手だし、ゴールやアシストなど結果も出すようになっていた。本当に怖い選手になったなと。なんかもう年齢を感じさせないですから。

 そうして昨シーズンは、パウ・クバルシもそうですが若い選手がいいプレーを見せました。今シーズンも基本的には昨シーズンとベースが一緒だと思うんですけど、プラスアルファで何を生み出すかというのと、マーカス・ラッシュフォードが加入したのでどれだけフィットしていくかは楽しみですね。

倉敷 ラッシュフォードに関して言うと、バルサは誰かを出さないと彼を登録できない問題があります。そのなかでカンテラーノが出ていくとなると、ラッシュフォードの立場は難しくなってしまう。うまく着地しないと、またバルサはフィールド以外のところで面倒なことを背負ってしまう感じがします。

【今年はチャンピオンズリーグも期待できる】

 あと一番前がロベルト・レバンドフスキなのか、フェラン・トーレスなのかという話があります。

倉敷 プレシーズンを細かくチェックされたと思いますが、「9番」はどんな感じですか?

 基本的にはレバンドフスキが軸にはなると思いますが、昨シーズンはゴール決めながらもちょっと疲れが見えるなか、シーズン後半はフェラン・トーレスがめちゃくちゃよかった。だから、世代交代がどうなるのか。まあ、レバンドフスキは絶対そこに負けないとなりますから。

 GKはジョアン・ガルシアが入りましたね。ベースとして一番は彼になるんですかね?

倉敷 エスパニョール時代にちょっとモノが違うなと思ったんですけど、エスパニョールの時の周りに常に誰かセンターバックがいてくれる関係から、バルセロナのサッカーって「おーい!」って言わないと誰もいなくなる状態になるじゃないですか。だからそこのところの寂しさに慣れるのかなって思います。

 確かにそうですね。昨シーズンのボイチェフ・シュチェスニーは途中から加入しましたが、前に出るタイミングとかもよかったし、その点うまくやりましたよね。

 まあ、リーグもそうですし、チャンピオンズリーグも今年バルセロナは狙っていくんじゃないかなと思います。

倉敷 そうですね。チャンピオンズリーグは期待できるんじゃないですか。

 今シーズンは何が起こるかというと、アフリカネーションズカップがあって、ワールドカップのヨーロッパ予選もかなり真面目なところに来て、なかにはプレーオフを戦うチームも出てくると。

そういうことを考えると、代表ウィークのところをどうするか、ケガ人なく過ごしていくかがすごく大事というなか、フリック監督はドイツ代表の経験もある監督だからうまくやっていくんじゃないかと。

 そうですね。簡単じゃないとは思うんですよね。やっぱりリーグの試合も多いし、チャンピオンズリーグも入ってきますから。過密日程ではターンオーバーもしないといけない。でも、それは昨シーズンある程度もう選手を知っているし、このぐらいのタスクを与えればできるというのがわかっているから、より運用しやすいところは出てくるのかなと思っています。

【レアル・マドリード新チームのキーマンは?】

 レアル・マドリードに関して、クラブワールドカップで見えたのは、シャビ・アロンソ新監督は4-3-3もやるし、3-4-2-1もやるっていうところです。ここをどう運用していくのかはちょっと楽しみですね。基本がどっちになるのか。

倉敷 3バックベースから4枚にするのと、4バックベースから3枚にするのって、どちらが有利とかはあるんですか?

 基本的には3枚のほうが、初期配置のところで固定はされやすいんですよ。だから4バックよりは柔軟に動かしにくくなる。だけど、キリアン・エムバペとヴィニシウス・ジュニオールのことを考えた場合、4バックで前にふたりを残すと後ろの4-4ブロックでは守りきれなくて水漏れしちゃうと。

 そこを3バックにすると、後ろで5-3のブロックを作れるのでちょっとは堅くなるんですね。

だから僕は3枚でスタートしたほうが、やりやすいんじゃないかと思っています。

倉敷 プレシーズンを見ていて面白かったのは、トレント・アレクサンダー=アーノルドが入って、右にジュード・ベリンガムを置いた形は、コンビネーションとかで考えると可能性があるのかなと思ったんですけど。

 絶対に合うと思います。この前の試合は3-4-2-1で右のウイングバックにアレクサンダ=アーノルド、右のシャドーにベリンガムでした。やっぱりイングランド人同士の関係性もありますし、すごくいいコンビネーションが生まれると思いますね。

 そうしたなかで、やっぱりツーボランチのところ。トニ・クロースの抜けた穴がいまだに言われちゃうじゃないですか。それでルカ・モドリッチもいなくなった。じゃあ、誰がその役割をするの? っていう意味では、アルダ・ギュレルに対しての監督の期待はすごいです。

倉敷 彼にはクロースがアドバイスをしていて、「守備は免除されない」と。「キミが得意でないのはわかっている。ただ、勝ちたいのであれば、このクラブにいるのであれば、キミは守備から免除されないからね」って。

頑張れよというエールを送っていました。

 ただ、アルダ・ギュレルもトルコ代表になると、また違ったタスクになっちゃうから、難しくないですか?

 難しいと思うけど、あのレベルになるとどっちでもできると思います。頭のいい選手ですし、クロースが話したように守備の部分がもっとできるような、すごくパワーアップした選手になると思います。

倉敷 彼が真ん中に入った時の強度はどうなのか。倒されても取り返すみたいな力とかフィジカルで負けないような強さというものを、短期間に身につけることができたら、これは本当に強いと思うし、マドリーが欲しかったゲームを作る人ですね。

【規則性のなかに不規則は組み込めるのか】

 あとはDFラインにディーン・ハイセンが移籍してきました。すぐにフィットして中心選手になりそうです。

倉敷 彼のよさってどんなところですか?

 やはりビルドアップの能力ですよね。左右両足であそこまで運べる選手っていないですし、フィードもいい。サイズがあって守備もある程度しっかりできるという。

倉敷 3バックで考えると、誰になります? アントニオ・リュディガー、エデル・ミリトン......。

 それとハイセンじゃないですかね。

あとはオーレリアン・チュアメニをどこに置くかなんですよね。3バックの真ん中でプレーできるので。攻撃になったらチュアメニを1列前に上げちゃえば、4-3-3みたいにできるし、守備時にちょっと耐える時にはそのままチュアメニをDFラインに吸収させて5枚で守るなど。

倉敷 シャビ・アロンソ監督が面白いなと思うのは、もう自分自身が本当に超一流の選手で、いろんな名監督のもとで大事にされてきた選手だった。それがマドリーに戻ってきたということですね。だから、マドリーの中がもうどれだけ面倒くさいかということを、彼はわかってるわけですよ。

 このクラブにいるってことは、もう優勝しなかったらファンから「出て行け!」って言われる。「1年目? 関係ないでしょう」って言われるようなプライドの高いクラブに入ったわけですよね。

 シャビ・アロンソ監督は基本的にスリーバックベースにしながら、選手の立ち位置を状況に応じて変えられる。シーズン通してベースができて、また違うBプランができたら、なんかAとBが混ざりながらプレーするような感じもありました。

 でもマドリーって、やっぱり昔から戦術がないのがマドリーって言われてきて......。

倉敷 だから今年どうなるのかなんですよ。シャビ・アロンソ監督になると、それこそ林さんが「こうですね」って目に見える形で解説してくれるようなパターンを作るのかどうかって興味あります。

 再現性を作れる監督ですし、規則性は出てくるんですよ。だけど、マドリーってずっと不規則で勝ってきた部分があるんですね。その不規則が消えちゃったらマドリーじゃないとなれば、その規則の中に不規則をどう組み込むかもすごく注目している部分です。

倉敷 そこって何なんですかね? つまり、遊び心から生まれるものなのか、遊び心を許す環境から生まれるものなのか。「インスピレーション」って、言い換えればわがままだと思うし、それをどこまで許容するか。

 ベースは間違いなく作れると思うので、そのベースの中にさらに不規則の遊び心みたいなところが出てくると、マドリーは今年すごい楽しみだなってなりますよ。

>>後編「補強充実のアトレティコ、久保建英のレアル・ソシエダはどうなる?」へつづく

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