林陵平×倉敷保雄 ラ・リーガ2025-26展望 後編
ラ・リーガの解説と実況でお馴染みの林陵平と倉敷保雄両氏が、新シーズンを展望する後編。バルセロナ、レアル・マドリードの2強に割って入るアトレティコ・マドリードと久保建英のレアル・ソシエダの見どころを語った。
>>前編「進化するバルセロナ、変化するレアル・マドリードの陣容」
【動画】林陵平×倉敷保雄 ラ・リーガ2025-26展望 後編↓↓↓【3チームでの優勝争いを狙うアトレティコ】
林 ラ・リーガはやはりバルセロナとレアル・マドリードの2チームが中心になるなかで、昨シーズンはアトレティコ・マドリードが一時首位になりましたね。
倉敷 いつもそうです。いつも騙されるんです。「今年のアトレティコは違いますよ」って言って何度失敗したか。多分今年もそう言うと思いますけど。
林 でも今シーズン補強は......。
倉敷 ちょっとすごいですよ。去年もびっくりしたんですよ。でも今年はすごいなと思って、ディエゴ・シメオネ監督が言っていたのは「4位のことを気にしないで戦えるシーズンにしたい」と。つまり3チームで優勝争いするんだ、僕らが4位になるかならないかとか関係ないなかで戦えるチームにと臨んで、若い選手をいっぱい取ったんです。
林 そうしたなか、アレックス・バエナを取りました。
倉敷 そうなんです。アレックス・バエナはラ・リーガに残っている数少ない10番タイプのひとりだと僕は思っていて。
林 まあ、結局スカッド的には、バルセロナとかレアル・マドリードとも遜色ない。
倉敷 チャンピオンズリーグの優勝を狙えます!
林 だから本当にシメオネ監督次第。
倉敷 アトレティコにちょっと欠けている部分は、勝者のメンタリティーだと思ってるんですね。シメオネ監督は優勝している監督だけど、周りにわかっている人間が何人かいてくれないとやっぱり難しい。
もうコケも晩年という形になるし、あそこのポジションを誰がやってくれるのかというのもある。入った選手もいる代わりに抜けた選手も多いという形のなかで、左サイドなんかは相当様変わりしてくるようで、そこが時間がかかるかな。
林 サムエウ・リーノ(フラメンゴ)とかロドリゴ・リケルメ(ベティス)も出しちゃいましたからね。
【シメオネは世界でもひと握りの幸せな監督】
倉敷 あと、アントワーヌ・グリーズマンはどう思います? 彼はありかなしかみたいなことをいろいろ言われるんですけど。
林 チームのために戦えるし、バランスを整えられる選手だと思うんですよ。昨シーズンは、確かにあんまりコンディションがよくないなって思う試合がありましたけど。
でも一番前に最高なフリアン・アルバレスが軸としているなかで、もうひとりを誰にするか。グリーズマンはチームの中心ですからね。
倉敷 クラブワールドカップでも、初戦にグリーズマンを使ってあまりうまくいかなくて。つまり安定しているかどうかってことだと思うんですよ。いい時のグリーズマンって、もうほかと比較できないぐらい何やってもうまい選手だけど、調子を落とした時のグリーズマンは「彼にかけていいのかしら?」となる。
でもアトレティコはすごいですよね。アレックス・バエナ取って、ダヴィド・ハンツコ、ティアゴ・アルマダ、マッテオ・ルッジェーリ、マルク・プビル取って、クレマン・ラングレはそのまま完全移籍。GKにはフアン・ムッソを取った。
林 あと、中盤で取ったジョニー・カルドソはいい選手です。
倉敷 だからハマったらアトレティコは......ほら、また言わされていますけど(笑)。
林 やはりシメオネ監督がどれだけうまく選手を使うか。戦術的にそこまで幅が広いタイプではないんですよね。守備的なのか? 攻撃的に行こうとつなごうとしたけどやめたりしたこともあったので。そこをどういうふうにやっていくのか。
倉敷 日本のメディアって、まあ僕たちの反省も含めてですけど、優勝というとすぐ「悲願」っていう修飾をつけるじゃないですか。でもアトレティコって「悲願」とは全然思ってないですよ。スタジアムにいるファンはシメオネのことを愛してます。彼はすごく信用されていて、支持されている人。だから、彼が何をやっても「いいんだ」と言ってくれる状態のなかですから、優勝はおまけなんです。
あの支えられてるなって感じで、自分の選んだ方法を支持してもらえると思ったら、シメオネ監督は本当に世界のなかでもひと握りの幸せな監督ですよね。
林 本当にそうですよ。
倉敷 だから左はだいぶいじったけど、右はそんなにいじってないんで、困ったら右から行ってどうするか。
あとは必殺のアレクサンデル・セルロートはいつ先発で使うんでしょう?
林 途中から出ても4点ぐらい取っちゃいますしね。難しいですね。最初から使うと意外と点を取らない。でも爆発する力、点を取る能力はある。
倉敷 番長系の強さありますよね。そこがアトレティコのいいところですよね。親分がいて、ほかもそれぞれちゃんと固めてますから。
林 2強のなかにアトレティコが本当に入ってきてほしいなと思いますね。
倉敷 シーズンのなかのどこかでは必ず。最終的には保証はできないけど(笑)。アトレティコファンはたぶん、幸せなシーズンを迎えるんじゃないかなと思いますね。
【補強が必要なレアル・ソシエダ】
林 あとはレアル・ソシエダ。セルヒオ・フランシスコ新監督になりました。
倉敷 大変心配ですね。下部組織から上がってきた監督になったということは、今までの路線を続けるということであって、新しいサッカーをしていくことではない印象がまずあります。それで、移籍も出すばっかりです。マルティン・スビメンディ(アーセナル)とかやっぱり出したよねとなって、久保建英はどうするのかなと。
久保は、今はないですよって話をしていて、クラブに関しても「今、このクラブは新しい選手が必要だ」と。「若手をどんどん上げてくるっていうのは構わないけど、経験を持った優秀な選手がいなければ戦えない」と。やっぱりそう言える久保は素敵だなと思いますし、言わないともうダメなんだろうなっていう感じには見えました。
何かイマノル・アルグアシル監督に頼りきっていたという感じがしていて、彼自身のサイクルの終わりがそのまま訪れて、このまま終わるのかと寂しい感じがありましたね。
林 僕はプレシーズンで、V・ファーレン長崎と横浜FCとの試合も見たんですけど、基本的にやっぱり変わらないですね。丁寧にボールをつなぎながら、前線に配給していく形で。4-3-3がベーシックな形で中盤ダイヤモンドの4-4-2も試していたけど、あんまりうまくはいってなかったです。
そのなかで久保は絶対的な中心選手になると思うんですけど、もう久保頼みだけにはしてほしくない。久保も間違いない選手なんですけど、やっぱり周りがあってさらに生きますから。
倉敷 ヘタフェというファウルが多い印象のチームあるじゃないですか。じゃあ、レアル・ソシエダとどっちが多いかというと、カードの数はダントツでヘタフェが多いんだけど、実はファウルを犯している数はレアル・ソシエダが多い。
レアル・ソシエダってそういうチームなんですよ。
林 ブライス・メンデスとかはいるんですけどね。
倉敷 ブライス・メンデスが久保の隣にいてくれたらいいんですけど、昨シーズン僕が思っていたのは、なんで順番に使うのよと。どうしてどっちか下げるのよって。
林 それは「イマノルあるある」なんです。
倉敷 そうですよね!
林 スカッド的にもやっぱりこれまで話してきた3チームと比べたら全然落ちるので、やっぱり補強はしないといけませんね。
【ラ・リーガの価値、面白さ】
倉敷 プレミアリーグっていうのは、すごくたくさんいい選手集まるじゃないですか。集まって価値を高めていくという考え方をするんですね。そうすると他のリーグっていうのは、ラ・リーガも含めて価値を落としたって考え方をする。
ラ・リーガが一番価値を落としたと言われているのが、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドがいなくなった時。それがやっと最近になってキリアン・エムバペやヴィニシウス・ジュニオール、ラミン・ヤマル、ロベルト・レバンドフスキみたいな形でちょっとずつ盛り上がってきているわけです。
今はバルセロナやレアル・マドリード、アトレティコもちょっと上に上がっていることもあるけど、他のところではレアル・ソシエダとか、バレンシアとか、あとはジローナとかはかなり評価を下げました。ヨーロッパでの実績、選手を放出してしまったマイナス、それからもうひとつはレンタル選手を返さなければいけなくなった。
そのなかで、ここからどうやりくりするかはラ・リーガの実力なんで、ここからギリギリで誰を取ってくるのかとか、どうやって底上げしていって戦えるチームにするのか。そうした志を持っているチームが出てくるはずです。
林 下位のチームでもいい選手がたくさんいるし、プレミアとはまたフットボールがちょっと違う部分もあります。スローに見えるんだけど、戦術的によく整えられているチームも多いので面白い。
倉敷 超速いプレミアがあって、ラ・リーガがあって、セリエAってもっと遅いですよね。それでもチャンピオンズリーグになると、この速さの組み合わせをどっちが使うんだっていう面白さがある。落としたいんだろうな、いや、落としたくないんですよっていうのはおかしいですね。
林 プレミアがすごい!って全部が強く見えるけど、じゃあラ・リーガのチームが戦うと、意外とうまく戦えちゃうみたいな。昨シーズンのインテルもそうでしたけど、なんかこう簡単に見ることができないのが、フットボールの面白さなんですよね。