第1回(全4回):2025-26シーズン プレミアリーグ展望

プレミアリーグの新シーズンが、現地時間8月15日にいよいよ開幕する。英国の高級紙『ガーディアン』で長年にわたって執筆し、同メディアのポッドキャスト『フットボール・ウィークリー』にも頻繁に出演するジョン・ブルーウィン記者が順位を予想し、注目選手を挙げ、日本人選手の期待値を示す(全4編)。

2025-26シーズン プレミアリーグ順位予想(上位10チーム)
1位 リバプール
2位 アーセナル
3位 マンチェスター・シティ
4位 チェルシー
5位 マンチェスター・ユナイテッド
6位 アストン・ビラ
7位 トッテナム・ホットスパー
8位 ニューカッスル・ユナイテッド
9位 ブライトン&ホーブ・アルビオン
10位 ボーンマス

プレミアリーグ開幕 英国高級紙で健筆を振るうベテラン記者が上...の画像はこちら >>

【大型補強のリバプールとアーセナルが優勝を争うか】

 開幕戦をホームで迎える王者リバプールは、大きく陣容を変えている。昨季はユルゲン・クロップ前監督が残した"遺産"とも言えるメンバーでリーグを制したが、その後のオフにはアルネ・スロット監督に多額の予算が与えられ、贅沢な補強を敢行した。

 攻撃陣には昨季ブンデスリーガで大活躍したウーゴ・エキティケとフロリアン・ヴィルツを、両サイドバックにはこちらもドイツで評価を高めたジェレミ・フリンポンと、ボーンマスで名を揚げたミロシュ・ケルケズを獲得。ディオゴ・ジョタを交通事故で失い、ルイス・ディアスをバイエルン・ミュンヘンに放出したが、戦力値は上がったと見ていいだろう。

「うちにはすでに優れた攻撃力が備わっている」と指揮官は言うものの、さらにニューカッスル・ユナイテッドのアレクサンダー・イサークを狙っているのは周知の事実。新戦力の適応がスムーズに進み、シーズン途中に行なわれるアフリカ・ネーションズカップでモハメド・サラーらが離脱した時にうまく対処できれば、クロップ時代よりも豪華に見えるチームが連覇を遂げてもまったく不思議ではない。

 3シーズン連続で2位に終わったアーセナルが、その壁を乗り越えるには何が必要なのか──。ミケル・アルテタ監督の回答のひとつは、市場の超人気銘柄ビクトル・ギョケーレスの獲得にあった。マルティン・ウーデゴーアやブカヨ・サカらの巧みなアシストから、現在27歳のスウェーデン代表FWが1年目から得点を量産する可能性はある。

 こちらも人気株のマルティン・スビメンディや、クリスティアン・ノアゴーアを加えて、中盤もさらにレベルアップ。これほど質の高い複数の新戦力を手にした指揮官に、言い訳は許されないが、それでも次点どまりか。

【疲弊気味のグアルディオラ監督はマンチェスター・シティを建て直せるか】

 ペップ・グアルディオラ監督のもと、マンチェスター・シティはかつての強さを取り戻せるのか──。今季プレミアリーグの最大のポイントのひとつだ。昨季は最後に巻き返して3位で終えたが、中盤戦でかつて見たことがないほどのスランプに陥った。

 オフにはケビン・デ・ブライネ、カイル・ウォーカーと、これまでの主力を放出した一方、ティヤニ・ラインダース、ライアン・アルト=ヌーリ、ラヤン・シェルキ、ジェームス・トラフォードらを獲得。これらの新戦力をなるべく早くチームに組み込むことが、成功のカギとなる。ただし、2027年の契約満了時にクラブを去ることを明言している指揮官は最近、ファッション誌のインタビューで疲労の滲む応対をしている。はたして、どこまで発奮できるだろうか。

 昨季のプレミアリーグを4位で終えたチェルシーが、その後に世界王者になった。その間に加入したジョアン・ペドロらニューカマーの活躍もあり、最高の形でシーズンを終えたが、長丁場のリーグ戦ではどうか。今オフも彼らを含めた多くの若手を迎え、逆に手放した選手も二桁を数える。

 継続的な大幅な選手の入れ替えはチームの成熟を妨げ、エンゾ・マレスカ監督が適切に対処できなければ、上位争いも難しくなるだろう。また世界一にはなったが、それは一番長いシーズンを送ったとも言え、コンディションにも不安が拭えない。それでも指揮官は、「こんな状況は誰も経験したことがないので、チームがどう反応するか楽しみだ」と楽観的だ。
 
 昨季15位──イングランドの名門中の名門、マンチェスター・ユナイテッドは過去50年で最悪のシーズンを送った。その反動からか、オフにはベンジャミン・シェシュコ、マテウス・クーニャ、ブライアン・エンブエモと、前線の好タレントを次々に獲得。

「今季の陣容には心から満足している」とルベン・アモリム監督は嬉しそうだが、堕ちた名門を立て直すのは簡単ではないだろう。

 昨季のチャンピオンズリーグ(CL)で8強に進出し、のちに優勝するPSGに敗れたアストン・ビラは、リーグ戦では最終節に黒星を喫して今季のCL出場権を逃した。また利益と持続可能性のルールにより、ウナイ・エメリ監督とスポーツディレクターのモンチは、移籍市場で本来の如才ない力を発揮できずにいる。ヨーロッパリーグ(EL)に出場する今季は、昨季と比べると負担は少ないが、ライバルが軒並み戦力を高めているなか、指揮官は「(マーケットの)最終週に編成が変わるかもしれない」と一縷の望みを抱いている。

【ブライトンとボーンマスの南部勢は今季も野心を燃やす】

 ELを制してもリーグ戦の17位は看過できなかったようで、トッテナム・ホットスパーのフロントはアンジェ・ポステコグルー監督を更迭し、ブレントフォードからトーマス・フランク監督を引き抜いた。新指揮官は選手の力を十全に引き出し、戦術的な幅も広い智将と評されるが、多くの選手が入れ替わったチームを託されて難しいミッションに挑む。「継続的に勝てるチームになるには、時間を要すかもしれないが、間違いなく望む形になるはずだ」と意気込むフランク監督は、高井幸大の成長にも手を貸すはずだ。

 ニューカッスル・ユナイテッドはサウジアラビアのオイルマネーに支えられているが、フロントと現場の意思が統一されていない。移籍を志願しているエースのアレクサンダー・イサークの代役候補と見られるアンソニー・エランガを獲得したものの、それ以上の補強は遅々として進まない。「あと6人は新戦力がほしい」と指揮官は公言するも、事態が好転するかは不透明。昨季5位から、大幅に順位を下げるのではないだろうか。

 ブライトン&ホーヴ・アルビオンとボーンマスの英国南岸を本拠とする2クラブは、今季もトップハーフで終えると予想する。

前者はジョアン・ペドロやペルビス・エストゥピニャンら、数人の主力を放出しながら、国際的にはあまり知られていない新戦力を迎える恒例の夏を過ごした。三笘薫は今季もエースとして、ここでプレーするだろう。

 ボーンマスもミロシュ・ケルケズ、ディーン・フイセン、イリヤ・ザバルニーという主軸を手放し、知られざる逸材を迎えた模様。年々評価を高めるアンドニ・イラオラ監督の手腕が、今季も成否を分けるカギとなりそうだ。

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