北海(南北海道)は夏の甲子園出場41回を誇る高校野球を代表する名門校だ。そんな北海でも、初戦はどうしても硬さが出てしまう。
【5失策が響き初戦敗退】
背番号13をつけた1年生の森健成が先発マウンドに上がったが、3連打とエラーで2点を許す苦しい立ち上がりとなった。さらに1点を追加されて迎えた5回裏の北海の攻撃、ようやく打線が動き出す。5安打で3点を奪って東海大熊本星翔(熊本)の先発・水野右京をノックアウト、試合を振り出しに戻した。
ところが7回は、北海にとって"まさか"の連続だった。
4回途中からマウンドに上がったエース・浅水結翔が先頭打者に四球を与え、送りバントをエラーしてノーアウト一、二塁。つづく1番の福島陽奈汰にバントヒットを決められて満塁のピンチを招いてしまった。
2番打者が打ち上げた打球をショートが落球。センターへのタイムリーヒットのあと、セカンドゴロエラーもあり、6失点を許した。
北海打線が奮起して7回に1点、8回に3点を取り返したものの、追いつくことができず7対10で敗れた。
北海の平川敦監督は言う。
「今日の敗戦はミスに尽きます。フォアボールとエラーが出ると負けますね。初回も7回もそうでした。
2四球を選び、3本のヒットを打ったキャプテンの佐藤瞭磨は言う。
「試合の入りのところで失点しないように気をつけていたんですけど、それができなかった。そのあと追い上げても点を取り返されて......。打席で自分の仕事はできたんですけど、自分の結果がどうこうよりも、チームを勝たせることができなかった、いい方向に進められなかったのが悔しいです」
【頑張れば最後に何かがある】
特に7回のミスの連鎖は想定外だったことだろう。地方大会で6試合戦って3つしかエラーをしなかった守備陣に大きな綻びが出てしまった。これが甲子園の、それも初戦の難しさだ。雨の影響でグラウンドが荒れていたことも北海には"凶"と出た。
1年生の夏に甲子園を経験した3年のセカンド・桜井悠也はこう振り返る。
「グラウンドがいつもとは違っていたかもしれませんが、相手チームも条件は同じ。打球は強かったんですけど、それを捕りきれなかった自分のミスです。相手に流れを渡してしまうようなミスでした。自分が捕ってダブルプレーでチェンジという場面だったのに......」
キャプテンの佐藤、二塁手の桜井とともにチームを引っ張ってきた吉井天星は言う。
「甲子園では思うようなプレーができなかったですし、ミスも多かった。
2安打、2打点をマークした桜井が言う。
「ミスを取り返して、チームに勢いをつけたいと考えていました。ああいうバッティングができたことはよかったですね。1年生の頃からずっと厳しい練習ばっかりだったんですけど、仲間たちと一緒にやってきて、野球の技術も、人間的にも成長したと思います」
【ピッチャー陣の強化をどう図るか】
本来の実力を発揮できないまま北海は甲子園を去ったが、平川監督は次を見据えている。
「今の3年生は2年前(2023年)の夏に、上級生たちに甲子園に連れてきてもらった。今回、3年生のおかげで来られた。甲子園での経験を1、2年生が今後に生かしてほしい。
この日、先発マウンドに立ち最速147キロをマークした森は、チームの中心的存在としての活躍が期待されている。
平川監督は続ける。
「森は立ち上がりに得点を奪われましたが、彼の持ち球である力強いストレートをリズムよく投げてくれました。昔はエース中心で戦うことが多かったですけど、いいピッチングを2試合も3試合も続けることはできない。甲子園で優勝しようと思ったら、3人か4人は必要です。
ウチはかなりウエイトトレーニングをやるので球速が上がるんですけど、その分、故障のリスクも考えないといけない。球数、イニング数には気を配っています。ピッチャー陣の強化をどう図るかだと思います」
今回の敗因となったミスをなくすためには、どうすればいいのか。
「エラーが続く状況では、監督が何を言っても難しいですね。ミスしても、切り替えてやるしかない。普段の練習から口酸っぱく言うしかない。ああいう場面を想定しながら、練習をするしかないと思います。
41回目の大会出場を果たした名門は、さまざまな課題を持って北海道に帰る。