第4回(全4回):2025-26シーズン プレミアリーグ展望

プレミアリーグの新シーズンが、現地時間8月15日にいよいよ開幕する。英国の高級紙『ガーディアン』で長年にわたって執筆し、同メディアのポッドキャスト『フットボール・ウィークリー』にも頻繁に出演するジョン・ブルーウィン記者が日本人選手の期待値を示す(全4編)。

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三笘薫/ブライトン&ホーブ・アルビオン

 5月に28歳になった三笘薫はこの夏、キャリアの交差点に立っていた。プレミアリーグで3シーズンを過ごし、リーグ屈指のドリブラーの評価を確立したウイングは、アーセナルやバイエルン・ミュンヘンの獲得候補リストに記載されていると噂されていた。

 その信ぴょう性は定かではないが、選手自身は現所属先との契約を更新したいと考えているようだ。移籍市場は完全に閉じるまで予断を許さないが、おそらく今季も多くのサポーターの愛を感じられる英国南部のビーチタウンで、潮風のように颯爽とタッチライン際を駆けるのだろう。
 
「我々はチームのベストプレーヤーたちを引き止めようとしている」と話したのは、ブライトンのファビアン・ヒュルツェラー監督だ。「ミトマは昨季、充実した1年を送った。このクラブは何より、全員の協働を重視しており、ミトマを含め、誰もがそれを理解している。彼は真のチームプレーヤーだよ」

 地元出身の数学の天才にして元プロギャンブラーが保有するクラブは、このオフにも移籍市場で抜け目のない動きを見せた。左サイドで三笘と縦の関係を築きそうな新加入の左SBマクシム・デ・カイペルは、新たなパートナーについて、こう語っている。

「彼(三笘)のクオリティーは誰もが知っている。彼が相手を引きつけてくれれば、自分の使うスペースが生まれる。良い関係を築いていけそうな気がしているよ」

 昨季はリーグを8位で終え、欧州カップ戦の出場権にわずかに手が届かなかった。仕切り直しの新シーズン、クラブも三笘もあらためて野心を燃やしているはずだ。

2025-26シーズンの期待値(10点満点):8

遠藤航/リバプール

 リバプールでの2シーズンで、リーグカップとプレミアリーグのタイトルをひとつずつ手にした遠藤航。今夏の日本ツアーはまさしく"凱旋帰国"で、試合は日産スタジアムの入場者記録を更新するほどの大盛況だったと聞く。そのツアー中に、現在32歳の日本代表キャプテンはこう話した。

「アルネ(・スロット監督)と話して、自分に求めているものや、彼の戦術について訊き、自分はどこでプレーしても構わないと伝えました。6番でも、ライトバックでも、センターバックでも、チームに完全に貢献する姿勢は変わらない。日本では、センターバックでプレーしていたこともありました」

 ドイツ勢を中心に遠藤に興味を持つクラブは少なくないが、彼の表情を見ていると、リバプールの一員であることに誇りを持っているのがわかる。だから、おそらく彼は今季も伝統の赤いシャツをまとうだろう──たとえ先発の機会が限られようと。

 またチームは今夏、タイラー・モートンやジャレル・クアンサー、ナット・フィリップスを放出して、中盤と最終ライン中央の人材を整理。その背景にはきっと遠藤の存在がある。さらに強力になったように見える王者リバプールでも、遠藤の重要性に変わりはなさそうだ。

2025-26シーズンの期待値(10点満点):6

鎌田大地/クリスタル・パレス

 鎌田大地とオリバー・グラスナー監督が手を組めば、そのチームにはトロフィーが約束されるようだ。アイントラハト・フランクフルト時代の2022年ヨーロッパリーグに始まり、クリスタル・パレスでは1年目の昨季にFAカップ──クラブ史上初のメジャータイトルだ──を手にし、先週には新シーズン直前のコミュニティーシールドも掲げている。ふたりのケミストリーがもたらした成功だ。

 ただし昨季の鎌田は、イングランドのフットボールへの適応に時間を要した。

今季は序盤戦から継続的に好パフォーマンスを披露することが期待されている。移籍市場が閉じるまでに、人気銘柄のアダム・ウォートンが引き抜かれる可能性もあり、そうなるとなおさら、中盤で鎌田が文字通りの中心になっていかなければならない。

 マルチクラブ・オーナーシップの問題で、今のところパレスの言い分は認められず、新シーズンはヨーロッパリーではなく、カンファレンスリーグに参戦する見通し。いずれにせよ、昨季のFAカップ決勝で活躍し、クラブに初タイトルをもたらした鎌田は、サポーターからの評価も高まっている。29歳になったばかりの日本代表MFの2年目が楽しみだ。

2025-26シーズンの期待値(10点満点):7

田中碧/リーズ・ユナイテッド

 代役不在──1年目のリーズ・ユナイテッドでチームの心臓部を担い、チャンピオンシップ優勝とプレミアリーグ昇格の原動力となった田中碧は、地元メディアにそう評されている。

 ダニエル・ファルケ監督のチームに中央からエネルギーを注入し、ボールを持った相手にはタイミングよくタックルを仕掛け、奪った球はレンジの広い精緻なパスで攻撃につなげる。明るい性格で集団にポジティブな影響を与える26歳の日本代表は、推定移籍金290万ポンド(約5億7000万円)でリーズに加入。昨季のパフォーマンスを見れば、クラブ史上最高のお買い得選手のひとりと思えるほどだ。

 新シーズンは欧州初の1部リーグに挑戦する。しかも舞台は世界最高のプレミアリーグだ。昨季と同じプレーができるかどうかはわからない。ただし、この厳しいステージで主役級の活躍を続ける同じポジションの選手、アーセナルのイングランド代表MFデクラン・ライスは田中についてこう語った。

「リーズのあの日本人選手は、信じられないほど素晴らしい選手だ。僕が観たかぎり、トッププレーヤーだね。エネルギーに満ち溢れ、ボール捌きは実に巧い。ものすごく良い選手だよ」

 指揮官は田中の攻撃性を評価しているようで、プレシーズンにはナンバー10のポジションも任せている。新シーズン、彼がプレミアリーグに新鮮な驚きをもたらしても不思議ではない。

2025-26シーズンの期待値(10点満点):7

高井幸大/トッテナム・ホットスパー

 今夏まで、プレミアリーグの選手もファンも関係者も、高井幸大の名前を知る者はほぼ皆無だった。7月に川崎フロンターレからスパーズに加入した現在20歳の日本代表MFは、クラブの近年の方針──将来性の豊かな若手──に沿って獲得された新戦力だ。

 プレシーズン中に足底筋膜炎を発症したことで、未来への投資の意味合いはより強くなってしまった。回復に時間がかかるなら、今季中のデビューはお預けとなるかもしれないし、チームの他の若手と同様にシーズン途中にローンに出される可能性もある。192センチの長身は申し分ないが、パワーやスピードをプレミアリーグのレベルに高めなければならない。彼のポジションなら、なおさらだ。

 川崎は三笘や田中を輩出したクラブであり、高井のクオリティーも間違いなさそうだ。

コンディションを整えて、ノースロンドンに鎮座する英国随一のホームスタジアムで活躍する日は訪れるのだろうか。

2025-26シーズンの期待値(10点満点):5

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