チャンピオンシップの日本人選手たち(前編)

 2年前に行なわれたFA(イングランドサッカー協会)による労働許可証取得の規制緩和の影響もあり、イングランドでプレーする日本人選手が増加している。とりわけ一昨シーズンの3人から昨シーズン開幕時には8人に急増したチャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)では、今シーズン、9人もの日本人選手がプレーすることになった。

 すでに8月8日(現地時間)に新シーズンが開幕しているチャンピオンシップの日本人選手の顔ぶれをチームごとに見ていこう。

【欧州サッカー】イングランド2部で9人がプレー プレミアリー...の画像はこちら >>
 まず、プレミアリーグから降格したサウサンプトンには、昨シーズンからプレーする日本代表の菅原由勢に加え、加入初年度はトルコのギョズテペに1年ローンで移籍していた松木玖生が復帰したことで、ふたりの日本人選手が所属している。

 今シーズンからチームを率いるのは、英国人の両親を持つベルギー人監督のウィル・スティル。2022年10月から2024年5月まで、フランスのスタッド・ランスで日本代表の伊東純也(現ゲンク)を指導したことでも知られる現在32歳の青年監督だ。

 8月9日に行なわれた開幕戦(レクサム戦)では、菅原が3-4-2-1の右ウイングバック(WB)として先発出場を果たして後半60分までプレー。試合はホームのサウサンプトンが試合終了間際に劇的な逆転勝利を収め、白星スタートを切っている。

 リーグ開幕戦で出番のなかった松木も、12日のカラバオ・カップ(EFLカップ)1回戦のノーサンプトン(イングランド3部)戦で後半途中から3-4-2-1の左シャドーでプレー。右WBでスタメンフル出場を果たした菅原と同じピッチに立ち、チームの勝利に貢献。サウサンプトンでの公式戦デビューを飾った。

 サウサンプトンは、かつて元日本代表DFの吉田麻也(現ロサンゼルス・ギャラクシー)が8シーズンにわたって活躍したほか、元日本代表FWの李忠成や現日本代表MFの南野拓実(モナコ)もプレーしていたこともあり、日本でもお馴染みのクラブだ。近年はプレミアリーグに定着していたが、昨シーズンはわずか2勝で最下位に低迷し、1年でチャンピオンシップに降格する屈辱を味わった。

 それだけに、チームは1年でプレミアリーグ復帰を果たした一昨シーズンの再現を目指しており、菅原と松木にはその原動力となれるかどうかが問われる。

ウィル・スティル監督がたぐい稀なる戦術マニアであることを考えると、指揮官が目指すサッカーの戦術を理解し、与えられた役割を遂行できるかどうかが、活躍のカギとなりそうだ。

【日本人急増のきっかけとなった坂元達裕】

 コベントリー・シティで3年目を迎えるのは、日本代表経験もあるMF坂元達裕だ。

 昨シーズン、チームはリーグ5位に食い込んで昇格プレーオフに進出したものの、準決勝第2戦で延長戦の末、試合終了間際に決勝ゴールを許して涙を飲むという苦い経験をした。坂元は、その120分の激闘でもフル出場を果たすなど、これまでチームの主力として実績を残してきた。そういう意味では、チャンピオンシップで日本人選手が急増するきっかけを作った選手と言っても過言ではないだろう。

 今シーズンのリーグ開幕戦(ハル・シティ戦)はゴールレスドローで終わったが、坂元は4-2-3-1の右ウイングでスタメンフル出場を果たすと、続く12日のカラバオ・カップ1回戦のルートン・タウン(イングランド3部)戦では後半63分から途中出場。1-0の勝利に貢献し、チームは2回戦に駒を進めている。

 昨シーズンからコベントリーで指揮を執るのは、元イングランド代表のレジェンドのひとりとして知られるフランク・ランパード監督だ。

 2017年に現役を退いたランパードは、古巣チェルシーの下部組織のコーチを経験したあと、ダービー・カウンティ(2018年7月~19年7月)、チェルシー(2019年7月~21年1月)、エバ―トン(2022年1月~23年1月)、チェルシー(2023年4月~6月、ただし暫定)の監督を歴任し、昨年11月からマーク・ロビンズ前監督の後任としてコベントリーの新監督に就任。初年度は上々の結果を残すことに成功している。

 就任2年目の今シーズンは、世界的レジェンドが悲願のプレミアリーグ昇格に導くことができるかに現地のファンの注目が集まるところだが、日本のサッカーファンにとっては、坂元がこれまで以上の活躍をして昇格の力となれるかどうかが、最大の見どころになる。

 そのコベントリー・シティと同様、昨シーズンの昇格プレーオフ準決勝で敗退したブリストル・シティでプレーするのが、平河悠。

昨夏にFC町田ゼルビアからローン加入し、その実力が認められて今夏に完全移籍を果たした代表1キャップを持つパリ五輪代表MFだ。

 7月に就任したレッドブル系のゲルハルト・ストルバー監督の下、平河はシェフィールド・ユナイテッドとの開幕戦でスタメン出場。後半75分までプレーし、上々のパフォーマンスでチームの勝利に貢献している。

 注目しておきたいのは、ストルバー監督が採用する3-4-2-1のシステムのなかで、平河がWBでプレーしていることだろう。上記開幕戦と、後半から出場してゴールを決めたカラバオ・カップ1回戦(ミルトン・キーンズ・ドンズ戦)では左WBとして出場。途中出場が多かった昨シーズンも基本布陣が3バックになった終盤戦にWBを経験しているが、現状、指揮官が替わった今シーズンもその起用方法が継続されそうだ。

 平河は、日本ではスピードとハードワークが持ち味のアタッカーとして知られてきたが、ここにきてポリバレント性の部分でも進化を遂げている。当然まがら、このポジションに定着できれば、日本代表招集の可能性も高まるはずだ。そういう意味でも、今シーズンの平河のプレーぶりには注目が集まりそうだ。

 注目の選手&チームはまだまだある。
(つづく)

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