チャンピオンシップの日本人選手たち(後編)

 今シーズン、9人もの日本人選手がプレーするイングランドの2部に相当するチャンピオンシップは、リーグの収益という側面で見ると、ヨーロッパ5大リーグ(イングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、イタリアのセリエA、ドイツのブンデスリーガ、フランスのリーグ・アン)に次ぐ6番目の規模を誇る。

 1部リーグと2部リーグの実力を示す指標は存在しないので、リーグのレベルを比べることは難しいが、お金があるリーグに優秀な選手が集まる傾向があることを考えれば、チャンピオンシップは競争力の高いリーグであることは間違いないだろう。

 そのチャンピオンシップに新天地を求めた日本代表FWのひとりが、古橋亨梧だ。古橋は今年の1月にセルティック(スコットランド)からリーグ・アンのレンヌにステップアップ移籍を果たしたが、残念ながら、クラブ内のゴタゴタもあって適応することができず。結局、チャンピオンシップ昇格を果たしたバーミンガム・シティに活躍の場を求めた。

【欧州サッカー】古橋亨梧が早くも初ゴール 高レベルのイングラ...の画像はこちら >>
 バーミンガム・シティには、昨シーズンからプレーする岩田智輝が所属しており、今夏はそこにジル・ビセンテ(ポルトガル)から藤本寛也も新たにフリートランスファーで加入。古橋と合わせると、計3人の日本人選手がプレーすることになった。

 岩田と古橋はさっそく開幕戦(イプスウィッチ戦)でスタメン出場を果たす。岩田は昨シーズン同様に4-2-3-1のボランチの一角を務め、古橋は1トップとしてプレー。試合は1-1のドローで終わったが、セルティック時代にゴールを量産した古橋は、レンヌ時代と違ってチャンピオンシップのサッカーにフィットしそうな期待感を漂わせた。

 続くシェフイールド・ユナイテッドとのカラバオ・カップ(EFLカップ)1回戦でも、岩田と古橋は同じポジションで先発。古橋は、開始早々にバーミンガム・シティでの公式戦初ゴールとなる先制点を叩き出すなど、さっそく自慢の決定力を披露して勝利に貢献した。

【さらに日本人選手が増える可能性も】

 ちなみに、この試合ではリーグ開幕戦ではメンバー外だった藤本もベンチ入り。出場機会こそなかったが、新天地での第一歩を踏み出している。

 もっとも、昇格組のバーミンガム・シティにとって、プレミアリーグ昇格のハードルは低くない。そこで昇格のキーマンとなるのが、昨シーズンから指揮を執るクリス・デイビス監督だ。

 現役時代はウェールズの年代別代表でプレー経験もあったデイビスは、ケガにより19歳で引退。その後、指導者の道を歩み始めると、レスター、リバプールなどでブレンダン・ロジャース監督の右腕として実績を積み、一昨シーズンはトッテナムでアンジェロ・ポステコグルー監督のアシスタントコーチを務めた。トップチームの監督としては、現在のバーミンガム・シティが初めてのキャリアとなる。

 だが、昨シーズンは就任初年度に3部で快進撃を繰り広げ、すべてのリーグにおけるシーズン最多勝ち点記録となる111ポイントを積み上げてチャンピオンシップ昇格に導いただけに、今シーズンのチャンピオンシップでも台風の目となる可能性もある。そのなかで、岩田と古橋、そして藤本の3人がどこまで活躍できるかが注目される。

 昨シーズンは昇格プレーオフ出場の一歩手前となる7位に終わったブラックバーン・ローバーズでは、加入2年目の日本代表FW大橋祐紀がプレーする。

 昨シーズンは初の海外挑戦でありながら、リーグ戦9ゴールをマークした大橋は、今シーズンのリーグ開幕戦(ウェスト・ブロム戦)でも1トップでスタメンフル出場。ブラッドフォード・シティ(3部)とのカラバオ・カップ1回戦ではベンチスタートだったが、後半73分から途中出場すると、4-2-3-1の右ウイングでプレーした。

 ブラックバーンといえば、かつてアラン・シアラーとクリス・サットンを擁して1994-95シーズンにプレミアリーグ優勝を遂げたこともあるクラブ。2011-12シーズンを最後にプレミアリーグから遠ざかっているが、昨シーズンは7位だっただけに、今シーズンは何としても昇格を果たしたいところだ。

 現在チームを率いているのは、就任2年目となるフランス生まれのバレリアン・イスマエル監督。現役時代は地元ストラスブールで活躍したCBで、キャリアの終盤はブレーメン、バイエルン、ハノーファーなどブンデスリーガでプレーし、引退後にドイツ人女性と再婚した関係でドイツ国籍を取得。指導者としての船出もドイツで、これまでギリシャ、オーストリア、イングランド、トルコなどで指揮を執る国際経験豊富な49歳の指導者だ。

 大橋は、昨シーズンからイスマエル監督からの信頼を勝ち取っていることを考えると、出場時間は確保されるはず。今シーズンは二桁得点を期待したい。

 ストーク・シティでは、今夏に川崎フロンターレから移籍したMF瀬古樹がプレーする。

 瀬古にとっては海外初挑戦ではあるが、ダービー・カウンティとのリーグ開幕戦では後半84分からボランチとして出場して新天地デビューを白星で飾る。カラバオ・カップ1回戦(ウォルソール戦)では初スタメンを飾って後半78分までプレー。チームはPK戦の末に2回戦に進出している。

 ストークはイングランド人マーク・ロビンズ監督が2年目の指揮を執る。基本布陣は4-2-3-1を採用していることを考えると、川崎でプレーしていた瀬古にとってはフィットしやすいシステムでもある。いずれにしても、できるだけ早くイングランドでの生活とチャンピオンシップに適応することが活躍のカギとなりそうだ。

 昨シーズンはQPR(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)にローン移籍していた斉藤光毅が、現在所属元のロンメル(ベルギー2部)から再びチャンピオンシップのクラブに移籍するという報道も出るなど、今後もチャンピオンシップの日本人選手が増える可能性もある。

 夏の移籍マーケットが閉じるまでは予断を許さない状況が続くわけだが、日本のサッカーファンにとっては、今シーズンもチャンピオンシップが目の離せないリーグになることは必至と言えそうだ。

編集部おすすめ