大谷翔平も『ONE PIECE』ルフィに反応 ドジャースが『...の画像はこちら >>

前編:ドジャースが目指す史上初の観客動員400万人

ワールドシリーズ2連覇を狙うロサンゼルス・ドジャースのホームゲームでは、世界で人気を誇る日本の漫画・アニメやキャラクターとのコラボイベントが積極的に行なわれている。

直近の1カ月半では『ONE PIECE(ワンピース)』『鬼滅の刃』『ハローキティ』。

それぞれのイベントがある日には特製グッズがファンに配布され、多くのファンを楽しませている。

その背景にあるドジャースの意図と狙いとは?

【『鬼滅の刃 無限城編』とのコラボ特製キャップを無料配布】

 8月15日のドジャースタジアムで行なわれたロサンゼルス・ドジャースとサンディエゴ・パドレスの一戦は、『週刊少年ジャンプ』の代表作で世界的ヒット作『鬼滅の刃』とのコラボレーションイベントとなり、球場はいつもとは違う熱気に包まれた。

 入場ゲートでは劇場版『鬼滅の刃 無限城編』とのコラボ特製キャップが来場者に配布された。観客のなかにはドジャースTシャツに交じって『鬼滅の刃』Tシャツを着たファンも目立ち、特製キャップには主人公・竈門炭治郎のイラストがあしらわれ、つばには炭治郎の羽織をイメージした緑と黒の市松模様がデザインされていた。

 センターフィールドプラザにはフォトブースが設置され、巨大ポスター前でキャップをかぶったファンがポーズを取り、スタッフが撮影。写真は小型カードサイズにプリントされケース入りで配布されたことから、長蛇の列ができた。

 ドジャースのチーフ・マーケティング・オフィサー、ロン・ローゼン氏は7月のイベント発表時に「『鬼滅の刃』はドジャースファンが球場に持ち込む情熱に匹敵する熱い支持を受けている作品。相互の"ファンの世界"が一緒になって祝う一夜を楽しみにしています」とコメントしていた。その言葉どおり、『鬼滅の刃』ファンとドジャースファンが一体となり、会場はお祭り騒ぎの盛り上がりを見せた。

 始球式には炭治郎の着ぐるみが登場し、炭治郎の応援を受けて投球したのは、映画(英語版)で声優を務めるアレックス・ルさんだった。さらに試合後には劇場版『鬼滅の刃 無限城編』をテーマにしたドローンショーが行なわれ、イベントのフィナーレを飾った。

大谷翔平も『ONE PIECE』ルフィに反応 ドジャースが『鬼滅の刃』など日本の人気作品とコラボする理由
フォトブースでは『鬼滅の刃』のポスターをバックに撮影するファンサービス photo by Okuda Hideki

【ルフィもドジャースタジアムに】

 ドジャースは7月3日にも『週刊少年ジャンプ』の大人気作『ONE PIECE(ワンピース)』とのコラボイベント「ワンピース・ナイト」を開催し、先着4万人の来場者に麦わら帽子とルフィのトレーディングカードを配布した。

 この企画に、大谷翔平も反応。自身のインスタグラムのストーリーズを更新し、球場で配布されたルフィのトレーディングカードのイラストと同じデザインのフィギュアを公開した。

フィギュアのルフィは、背中に「LAD」と書かれたバットを背負い、グラブはニューバランス製のデザイン。さらに、ゴムゴムの実で伸びた右腕は精巧に作られており、形はドジャースの「D」。横から見ると「Dodgers」の文字が浮かび上がる仕様になっていた。

 この時もそれぞれの"ファンの世界"がひとつになり、スタジアムは試合開始前からいつもと違う熱気に包まれた。ファンはルフィのように麦わら帽子をかぶり、フォトブースで記念撮影。始球式には、実写版『ONE PIECE』でナミ役を演じたエミリー・ラッドさんが登場した。試合後には人気キャラクターが登場するオリジナルのドローンショーも行なわれた。

 8月5日には「ハローキティ&フレンズ ナイト」と銘打たれたイベントが開催され、来場者にはハローキティのミニバッグが配布された。この日限定のコラボ商品も登場し、ポップコーン容器やドリンクカップには、ドジャースのユニホームを着たハローキティがデザインされたものが使用された。開場と同時に売店には長蛇の列ができ、グッズを求めるファンで賑わった。

 始球式にはハローキティが登場し、マイメロディなどサンリオの人気キャラクターも加わった。ドジャース公式X(旧Twitter)の投稿では、サンリオキャラクターと山本由伸の共演動画が公開され、球団のユニホームを着たキティ、マイメロディ、クロミと山本が登場。

軽快な音楽に合わせてそれぞれがポーズを披露した。

【日本作品とのコラボイベントはドジャースの多様性の証】

 日本生まれの漫画・アニメやキャラクターとのコラボイベントが増えている背景には、多様な文化を積極的に取り入れてきたドジャースの長年の戦略がある。

 1年前にスタン・カステン球団社長にインタビューした際、「4月はYOSHIKI、7月はCreepy Nutsと、日本人アーティストを招いて球場で演奏させる狙いは何ですか」と尋ねたところ、彼はこう答えた。

「ドジャースはこれまでも国際的なイベントを頻繁に開催してきました。ロサンゼルスは世界で最も多様なコミュニティを持ち、さまざまな文化や背景を持つ人々が暮らしている。私たちは球場で、異なる伝統や文化を称えるイベントを行なってきたのです」

 現在、その流れは大谷、山本といった日本人スーパースターの加入と活躍によって、さらに加速している。ここに文化的な親和性の高い日本発の人気キャラクターを組み合わせることで、野球ファン以外の層にも効果的にアプローチできる。

 結果として、これまで野球に興味のなかった人々も球場に足を運び、そこで得た特別な体験をきっかけに「また来たい」と思うようになる。この好循環こそが、ドジャースがアニメとのコラボイベントを積極的に行なう大きな理由だ。

 それにしても圧倒的なのは、SNSを通じた情報拡散力だ。アニメやキャラクターのファンコミュニティは発信力が非常に高く、イベント告知や現地で撮影した写真・動画が自然発生的に広がっていく。特に大谷や山本のような世界的スターと人気キャラクターが同じフレームに収まれば、スポーツメディアにとどまらず一般ニュースやエンタメ媒体にも取り上げられ、その宣伝効果は一気に拡大する。

 こうした流れの背景には、「推し文化」の巧みな活用がある。

「推し」とは、アイドル、漫画やアニメのキャラクター、俳優、スポーツ選手など特に熱心に応援する対象のこと。「推し文化」は、その対象への応援や支持を軸に、生活や消費行動が形成される現象を指す。もともとはアイドルやアニメの世界から生まれた概念だが、近年ではスポーツ選手や実在の人物にも広がり、国境を越えて共感を集めている。

「推し」を持つファンは、そのモチーフを使った公式グッズやコラボ商品を積極的に購入し、試合やイベントなど直接「推し」に会える機会があれば遠方への移動もいとわない。さらにSNSで写真や動画、感想を発信し、ファン同士で交流する。この好循環こそが、イベントやコラボの波及効果を何倍にも高めているのだ。

つづく

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