夏の甲子園2025 準々決勝からの戦いを現地取材記者5人が予想(前編)

 夏の甲子園はいよいよ準々決勝を迎える。強豪横浜の盤石さ、京都国際や沖縄尚学の底力、山梨学院の伸びしろ、そして関東一の緻密な野球。

果たして、頂点に立つのはどのチームか? 現地を取材する記者たちが独自の視点から優勝チームを予想する。

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楊順行氏(ライター)

 大会前の私の予想は◎横浜、○健大高崎、東洋大姫路、▲仙台育英、京都国際、智弁和歌山、神村学園。このうち3校がベスト8に進んだ。

 組み合わせを見ると、やはり優勝候補の一番手は横浜だ。準々決勝の相手は、公立校で唯一残った県岐阜商。ハンデを背負いながらキラリと光る横山温大の活躍で甲子園を味方につけているが、横浜は二本柱の一角で、3回戦でも準備万端だった奥村頼人が満を持して登板するだろう。

 打線は中軸の阿部葉太が当たりを取り戻し、切れ目がない。なにより秀逸なのは、レベルが高い内野守備だ。津田学園との3回戦で、抜けていれば1点を失う場面で強い打球に飛びつき、内野安打にしたものの1点を阻止した二塁手の奥村凌大。目立たないが、むずかしいショートバウンドの送球もこともなげに処理する一塁手の小野舜友。

 松坂大輔がエースで春夏連覇した1998年のチームも守備の水準は高かったが、私見ではその時よりも上だ。失礼ながら、総合力では県岐阜商を大きくしのぎ、4強進出は堅いと見る。

 弱点があるとすれば、左打者が多いだけに左腕との対戦。それでも、近年はチェンジアップを武器にするサウスポーが多く、左打者にはそれを投げにくいから、むしろ狙い球をしぼりやすくなる。

 たとえば、かりに京都国際の西村一毅あたりと対戦しても、横浜打線はさほど苦にしないのではないか。夏連覇のかかるその京都国際は、準々決勝で山梨学院と対戦。3回戦で14得点と猛威をふるった山梨打線だが、西村が緩急をうまく使うだけに、攻略には苦戦するかも。

 関東第一と日大三の東西東京対決は、投手力で関東第一にやや分があると見る。沖縄尚学と東洋大姫路も同様で、尚学やや有利。仙台育英との3回戦を169球で完投した末吉良丞はおそらく先発を回避するだろうが、鳴門との2回戦で好投した新垣有絃が控える。

 対する姫路はここまで木下鷹大頼みで、消耗度が気になる。ただ、かつてのエース・阪下蓮が急ピッチで復調しているかもしれないし、4番の白鳥翔哉真を筆頭に、姫路打線の腰の据わったバッティングは大会屈指だけに、この対戦は興味深い。

 結論。4強は京都国際、関東第一、横浜、紙一重で沖縄尚学。

傾向としてこのところ関東が強く、横浜春夏連覇の確率が5割と見る。

【夏の甲子園2025】ベスト8出揃う 現地取材記者が予想する準々決勝以降の戦い 横浜の春夏連覇の可能性は?
沖縄尚学の2年生エース・末吉良丞 photo by Matsuhashi Ryuki
戸田道男氏(編集兼ライター)

 大会前の予想で優勝候補に挙げた沖縄尚学を、せっかく8強入りしたので変えずに優勝候補に推したい。

 しかし、大会前の予想は組み合わせ抽選が決まる前が締め切りで、横浜など横綱クラスとはむしろ序盤で当たったほうが自力で倒すチャンスがあるのでは、という仮定を基にした予想。

 実際、智辯和歌山は花巻東に、健大高崎は京都国際に初戦で敗れ姿を消したものの、横浜、東洋大姫路、さらに昨夏決勝を戦った京都国際、関東一をはじめ8強には数々の難敵が勝ち残った。

 沖縄尚学は3回戦で延長11回タイブレークの激闘の末、仙台育英を倒して勝ち上がったが、本当に優勝にたどり着くためにはこれからが前途多難。序盤で倒しておきたかった相手がまだごろごろ残るベスト8となった。

 準々決勝の相手は東洋大姫路。高畑知季、白鳥翔哉真らの中軸打者が好調で打線の力強さは前評判どおり。エースナンバーを背負う木下鷹大が軸の投手陣もまだ余力がありそう。

 対する沖縄尚学はエース左腕・末吉良丞が圧倒的な存在感を発揮し、打線も安谷屋春空、宜野座恵夢ら勝負強い打者が調子を上げてきた。とはいえ、頼みの末吉が169球の熱投から中1日で迎える大会4試合目。これほどの消耗は正直想定していなかった。

東洋大姫路戦に限って言えば、2回戦・鳴門戦で先発した右腕・新垣有絃がなるべく長いイニングを投げ、末吉の負担を減らす投球ができるかがカギか。

 仮に東洋大姫路を自力で倒して準々決勝をものにしたとしても、準決勝、決勝はさらに厳しい試合が続く。昨夏決勝を戦った経験値がじわじわと重みを増す京都国際、関東一、大型右腕・菰田陽生を先発に据えて盤石の戦いぶりを見せる山梨学院あたりは相当手ごわいことは間違いない。

 選抜で敗れた横浜に決勝でリベンジを果たして沖縄尚学の夏初優勝となればめでたしめでたしだが、果たして......。

【夏の甲子園2025】ベスト8出揃う 現地取材記者が予想する準々決勝以降の戦い 横浜の春夏連覇の可能性は?
山梨学院の身長194センチの大型右腕・菰田陽生 photo by Ohtomo Yoshiyuki
元永知宏氏(ライター)

 2023年夏から2025年春のセンバツまでの4大会で準決勝に進出した16の高校のうち、8校が関東勢だった。今大会でも、その勢力図に変わりはない。

 ベスト8入りした高校のうち、関東勢が4校(東海1、関西2、九州1)も残っている。優勝候補の健大高崎が夏連覇を狙う京都国際に初戦で敗れた以外、有力とされたチームは順調に勝ち上がった。

 選手の能力や経験値を比較すれば、横浜が日本一に最も近い位置にいるように見える。しかし、主戦の2年生投手・織田翔希は、1回戦の敦賀気比戦で127球を投げて完投勝利。2回戦の綾羽戦ではリリーフで5回3分の2(81球)を投げた。完封勝ちした3回戦の津田学園戦でも106球を投げたことを考えれば、今後は苦しくなるだろう。

 京都国際もそうだ。エース・西村一毅は初戦(2回戦)の健大高崎戦で160球投げて完投勝ち、3回戦の尽誠学園戦もリリーフで4回を68球。これからの3試合を勝ち切るだけの体力が残っているのか、不安は残る。

 そんななかで、「余力」と「伸びしろ」を考えて、山梨学院を優勝候補に推したい。

 初戦(2回戦)の聖光学院戦で先発マウンドに上がった2年生の菰田陽生は6回をノーヒットに抑えた。7回途中でマウンドを譲ったものの、球数はわずか80球。3回戦の岡山学芸館戦では5回3分の2(58球)を投げて1安打しか許さなかった。この日記録したストレートの最速は150キロ。春のセンバツからの成長を考えれば、決勝までの3試合で観客をうならせるピッチングを見せてくれるはずだ。

 菰田のあとに控える技巧派サウスポーの檜垣瑠輝斗も2試合、5回3分の2(67球)を投げて自責点0と好調だ。

 2年生投手を援護する打線は、派手さはないが、コンパクトに振り抜くスイングの強さがある。聖光学院戦で好投手の大嶋哲平から12安打で6得点、岡山学芸館戦では17安打を集めて14点を奪った。

指揮を執る吉田洸二監督は機動力を使った硬軟自在の攻めが身上。選抜を2度制した試合巧者の采配がハマれば、一気に頂点まで駆け上がる可能性が見えてくる。

つづく

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