今中慎二が語る中日の現状とCS争い 前編

 8月19日時点でセ・リーグ5位の中日(47勝60敗2分け)。3位のDeNAまで5ゲーム差とクライマックスシリーズ(CS)進出を狙える位置にいるが、投打の現状はどうなのか。

かつて中日のエースとして活躍し、1993年に沢村賞を受賞、引退後は中日で投手コーチも務めた今中慎二氏に聞いた。

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【一時は7連勝も......勝てる試合を落とすケースが目立つ】

――先発ピッチャー陣をどう見ていますか?

今中慎二(以下:今中) 最近は、先発ピッチャーが序盤から5、6点取られて試合を壊すようなことがないですし、及第点じゃないですかね。勝ち星が伸びていないピッチャーもいますが、勝ち負けに関しては打線との兼ね合いがありますから。

――以前、先発ピッチャーが序盤からフォアボールを出し、リズムを崩すケースが多いと指摘をされていましたが、その点についてはいかがですか?

今中 以前よりは減ったとは思いますが、先発に限らず、いまだにそれはありますね。最近はリリーフ陣でそれがちょっと目につくかなと。どのチームも、この時期は先発よりリリーフのほうが疲れますから。

 リーグとしては、阪神は抜きん出ていますが、ほかのチームは決定打がない。どのチームにもチャンスがある、という言い方もできますけどね。

――クローザーの松山晋也投手が戦列に復帰しましたが、いない間はやりくりに苦労した印象です。

今中 彼がいない影響は顕著に出ましたね。しわ寄せじゃないですが、誰が9回に行くのか? みたいな感じになっていた。ベンチは期待感を持って送り出していたと思いますが、橋本侑樹やジュニオル・マルテ、清水達也も打たれたり......。勝ちパターンのピッチャーがことごとくやられるというのは、苦しい状況だったなと。

 7月に7連勝した時に勝率が5割手前くらいまでいきましたが、また借金が増えてしまっている。勝てる試合を落とすケースが目立っていますね。

――終盤に追いつかれたり、ひっくり返されたりするケースが見られますね。

今中 リリーフが打たれ、そういったケースが目立ってきているのは事実です。状態のいいリリーフ陣であれば、リードしていたら勝つ確率は非常に高かったのですが、やっぱり松山が抜けた穴が顕著に出たんでしょう。そういう意味では、松山が戻ってきたのは非常に大きいです。

【細川成也ら、点が取れそうな雰囲気は少し出てきた】

――ピッチャー陣が疲れてきている状況で、バッター陣の奮起がカギを握りそうですね。

今中 以前に比べれば打順もそこそこ決まりだしましたし、点が取れそうな雰囲気は少し出てきました。ただ、まだ改善の余地はあるというか、「もっと点を取らないといけない」という場面はあります。それと、誰かが調子よくなったと思ったら他の選手が不振に陥ったりと、なかなか足並みが揃いません。そのあたりがうまくかみ合えば得点力も上がるんでしょうけど......。

――打線強化のため、新外国人のマイケル・チェイビス選手をシーズン途中に補強しましたが、どんな印象ですか?

今中 まだ入団して間もないですし、現段階での評価は難しいですね。

いきなりホームランを打ったものの、その後はまだまだという感じです。ジェイソン・ボスラーは、一時期は打っていましたが、ここ最近は沈んできました。外国人選手を含め、中軸の選手らの調子がバチっと合えばまた連勝もできると思います。

―― 一方で、細川成也選手の状態は安定し始めましたね。特に7月は打率.333、6本塁打、17打点、OPS 1.063と好成績でした。

今中 試合終盤にひっくり返したり、追いついたり、といった価値ある一発が多いですね。(8月8日の)広島戦では、それまでの3打席でタイミングが合っていなくて、4打席目に初球を打ちにいったらバチっと合った、みたいな......。彼は謎なのですが、そういった怖さがあるんです。

 それと、2番に田中幹也が固定されていることもいいんじゃないかと。シーズン序盤は多くの選手の調子が悪くて打順がコロコロ変わっていましたが、田中は7月中旬くらいから2番に固定されていますよね。

――ピッチャーの話に戻りますが、今年はベテランが頑張っている印象です。

今中 大野雄大(15試合先発登板、6勝4敗、防御率2.38)が頑張っていますね。

それと松葉貴大(20試合先発登板、7勝8敗、防御率2.41)の存在も大きいです。特に、春先に松葉がいなかったら、今の位置にいられなかったと思いますよ。

 ただ、ベテランに頼らざるをえない状況であることも事実。現在の先発ローテーションに誰かが食い込んでいくと面白いですが、今はそういうことを期待できるピッチャーがいません。そんなに余力があるチームではないですから。

――今季加入したカイル・マラー投手(14試合先発登板、3勝6敗、防御率3.46)はいかがですか?

今中 それなりに試合を作っていますが、ランナーが出るとドタバタしますし、外国人ピッチャーならではの課題はありますよね。ボール自体はなかなかいいと思いますし、先発ローテーションに入っても全然おかしくはないです。日本の野球を1年経験すると慣れると思うので、本領を発揮するとすれば来年じゃないですか。来年もいれば、の話ですけど。

 先発では髙橋宏斗が勝ち始めましたし、リリーフでは松山が帰ってきました。ピッチャーを中心として守りの野球で、僅差の試合をいかにものにできるかがポイントになると思います。

(後編:今中慎二が説くCS争いのために必要な「勝負」 今はめったに見ないリリーフの3連投も「やってみる価値はある」>>)

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。

左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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