今中慎二が語る中日の現状とCS争い 後編

(前編:今中慎二が語る苦境の中日に見えてきた希望 僅差の試合をモノにするため、守護神の復帰が「非常に大きい」>>)

 8月19日の時点で、セ・リーグは2位の巨人から5位の中日までが6.5ゲーム差にひしめき、クライマックスシリーズ(CS)進出争いが激化している。中日を中心に他のチームも含めた今後の展望について、かつて中日のエースとして活躍し、1993年に沢村賞を受賞した今中慎二氏に聞いた。

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【中日、広島も頑張らないと置いていかれる】

――まず5位の、今中さんの古巣・中日についてですが、7月に7連勝した後に4連敗するなど波がある印象です。

今中慎二(以下:今中) 連勝している時はいい部分が多いから連勝するわけであって、当然、連敗する時はその逆で悪い部分が出ます。ワンプレーがきっかけで連勝ムードから連敗ムードになったりもします。あの7連勝も、細川成也が土壇場でライデル・マルティネス(巨人)から逆転3ランを打ってから始まりましたしね。

――連敗時に出てしまう悪い部分というのは?

今中 エラーですね。エラーにならなくても、勝てる試合でミスして負けた途端に連敗するとか。7連勝の後も、尾田剛樹が後逸したり、2日連続で牽制死になったり......それで連敗ですからね。ミスした時の切り替えがうまくないですよね。

――ミスがチーム全体に伝染してしまうケースが見られます。

今中 そうなのですが、そこをなんとかしないといけません。個人がミスしても、それをなんとかカバーするのがチーム力なので。ミスした時の"反発力"のなさは、中日のウイークポイントだと思います。

――現在、CS出場圏内を十分狙える位置にいます。

今後、どういう戦い方をしていくべきでしょうか?

今中 疲労が蓄積していると思いますが、今頑張らないと生き残れません。例えば、これまではリリーフが2連投のところを3連投にするとか、ギアを上げることです。士気も上がりますし、やってみる価値はあると思うんです。どうしても今は、どの球団も3連投を避けていますよね。
 
 独走している阪神は必要ないのですが、中日にしろ、広島にしろ、ちょっと頑張らないと置いていかれるポジションにいるので。ゲーム差が開いてしまってからだと、頑張りようがないですからね。

――どんどん勝負をかけていくべき?

今中 そろそろムチを入れていかないと、置いていかれてしまいます。勝負をかけていかないといけない試合がどんどん増えていくと思います。「勝負をかけてやられるなら仕方がない」と割り切っていくべきなんじゃないのかなと。

 先のことを見据えてというスタンスでいると置いていかれる気がします。今までそういう傾向がけっこう見られたので。「勝負は9月に入ってから」などとよく言いますが、チームによって立場は違う。

そのあたりをどう考えていくかだと思います。

 ヤクルトはまだ下にいますが、7月中旬から後半にかけて8連勝していますし、村上宗隆や長岡秀樹が戦列に復帰して、今後も連勝する要素は出てきている。CSに出場するチームはみんな勝率5割以下かもしれませんし、ヤクルトに負けると状況が不利になっていきそうです。

【団子状態の4チームが抜け出すために必要なのは?】

――2位の巨人から5位の中日まで6.5ゲームと、あまり差がありません。

今中 8月は4位の広島と9試合ありますし(現在6試合を消化して2勝4敗)、中日の当面のライバルは広島じゃないですかね。頑張って広島より上にいかなければいけませんが、その広島には苦戦しています。正直、広島のほうがピッチャーの事情はきついと思いますが、接戦をことごとく落としてしまっています。

――巨人や、3位のDeNAはどう見ていますか?

今中 DeNAは牧秀悟の離脱が痛いですね。タイラー・オースティンが戻ってきているとはいえ、調子が上がるかどうかはわかりませんし。ただ、中日の打線がDeNAのピッチャー陣をなかなか打てないんです。対戦成績の悪さ(6勝11敗)の主な要因でしょうね。

 巨人は岡本和真が戻ってきましたが、彼の離脱は相当大きかったんじゃないですか。

吉川尚輝も離脱中ですしね。とにかく、どのチームも決定打がないんです。

――そこを抜け出すためのポイントは?

今中 取れる試合を必ず取っていかなければいけません。中日だけではなく、巨人、DeNA、広島も変な負け方をするとズルズル順位が下がっていってしまいます。

 中日は毎年なかなか点が取れませんが、打線のいいはずのDeNAや、巨人、広島も今年は点が取れていません。打てない4球団が固まっている状況です。得点力が上がらなければ抜け出していけないでしょうね。

――中日は阪神相手に8勝7敗と唯一勝ち越していますが、その要因は何だと思われますか?

今中 阪神との試合は基本的にロースコアの展開です。投手力がいいので、大味な試合はほとんどないんです。特にバンテリンドームでやる時は、阪神も点を取れない。そういった試合を競り勝ったりしているから、今の対戦成績になっているんじゃないですか。昨年までは、ロースコアの試合をことごとく負けていましたけどね。

 点の取り合いで阪神に勝った試合(8月7日の試合に8-3で勝利)がありましたよね。今年は(阪神以外の)どのチームも点を取れないので、ああいう点の取り合いに持ち込めるような試合が多くなれば、中日は上がっていくと思いますよ。

 先ほどもお話ししましたが、勝てる試合には勝ちパターンのリリーフを惜しまず投入するなど、勝負をかけていくこと。それと、打線の奮起もカギになってくるでしょうね。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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