TIMレッド吉田×清水隆行
ジャイアンツOBで現在は解説者としても活躍する清水隆行さんが、今シーズンの巨人軍を分析。さらにセ・リーグの今後の展望から4番打者についても語ってもらった。
【今季、巨人の戦力について】
レッド吉田(以下、吉田) 現在の巨人の戦力についてはどう思いますか?
清水隆行さん(以下、清水)岡本和真選手を故障で欠いて(8月16日に1軍復帰)、戸郷翔征選手も本調子ではないので、投打ともに厳しい状況です。しかし、チームは踏ん張っています。苦しいなかでも、なんとか5割付近で粘り強く戦っています。
吉田 二遊間も安定していると思います。吉川尚輝選手と泉口友汰選手はどうですか?
清水 泉口選手はチャンスをもらい、守備も堅実にこなしています。打撃も昨年と比べて強さが出てきており、今年はバットを短く持つなど工夫し、対応力も上がっています。
吉田 野球IQも高いですよね。
清水 アマチュア時代からバットをあそこまで短く持ってプレーをしたことは今までなかったと思いますが、自分でスタイルを変えて、それをモノにしました。今は打撃でもチームトップレベルの数字を残しています。状態が落ちたとしても、使いたい選手になってきているのではないでしょうか。
吉田 1年間通して出場するのは体力が必要ですか?
清水 これは実際に出てみないと分からない部分もあります。泉口選手も大変だと思いますが、ここはなんとか踏みとどまってほしいです。どんなに厳しい練習やランニングメニューをこなしても、1年間出続ける体力は試合に出ている選手しか身につきません。
疲れたなかでも何ができのるかがレギュラーには求められます。泉口選手も調子を落とした時期があったと思いますが、またホームランを打ち始めているので、これを乗り越えられれば来年以降、大きな自信になると思います。頑張ってほしいですね。
吉田 ジャイアンツファンとして見ていて、チーム自体は苦しんでいますが、雰囲気はいいですよね。
清水 全員で戦っている雰囲気がありますし、坂本勇人選手や小林誠司選手のような選手の存在は大きいと思います。若い選手たちを同じ方向に向かわせる役割として、彼らの存在は非常に大きいです。経験値も高いですしね。
吉田 そんななかで、吉川尚輝選手。4番も務めて、チームの中心人物だと思いますが、いかがでしょうか?
清水 年々レベルアップしていますよね。入団当初は体の強さやケガの問題もありましたが、ここ数年はそういったことも減ってきました。もともと守備と走塁は高いレベルでしたが、打撃も年々力強さが増しています。
【阪神が独走!セ・リーグ展望】
吉田 阪神タイガースが強いです。隙がない状態です。ジャイアンツも昨年優勝していますが、クライマックスで負けてしまい苦い思い出があります。なんとか1位で優勝してほしいですが、OBとしてエールをお願いします。辛口でも。
清水 辛いも甘いもなく、答えはひとつしかありません。これ以上離されると厳しいと思います。ただ、ついていくことでチャンスは生まれます。タイガースはピッチャーがいいので、上位にいるチームでピッチャーがいいと隙が生まれにくいです。点を取られないので、大きな連敗は考えづらいです。
ピッチャーに不安があってバッティングで勢いがあるチームは、歯車が合わなくなった時に大型連敗も考えられますが、今のタイガースは隙がありません。
吉田 2位から5位までは大きな差がないので、チャンスはありそうです。
清水 タイガースが抜けているので、ここでプレッシャーをかけるところまでは持っていきたいです。交流戦で阪神が負けてくれたと思ったら、他のチームも負けていて、順位があまり変わりませんでした。今年は珍しい交流戦でしたね。
吉田 清水さんなら誰を4番にしますか?
清水 4番は特別な打順ですが、現状ひとりに決めるのは難しいです。固定するのが理想ですが、今はそれができる編成ではないと思います。ピッチャーや選手のコンディション、相性、前後の並びのバランスを考えて決めるのがベストです。キャベッジ選手の状態がよければ理想ですが。
吉田 気になるのはキャッチャーですが、正捕手は必要ですか? それともローテーションがいいのでしょうか。清水さんの考えは?
清水 今の野球はキャッチャーの特徴やピッチャーとの相性、コンディションを見ながら起用するのが主流だと思います。
吉田 巨人は今4人のキャッチャーがいますが、1番使いたいキャッチャーは?
清水 どの特徴に注目するかによります。小林選手と甲斐拓也選手は経験もあり、守備力が高いキャッチャーです。いろんなピッチャーを見てきています。岸田行倫選手は総合力が高いキャッチャーですが、経験が少し足りません。バッティングもでき、脚力もあるので楽しみなキャッチャーですね。その時のチーム状態に合わせて起用するのがいいと思います。固定よりも、バッティングを期待して岸田選手を使うこともあるでしょう。実際、いい打順で出ていることもありますし、チャンスでも打っています。代打でもいい場面で起用されているので、打撃は高く評価されていると思います。
吉田 大城卓三選手のバッティングも捨てがたいですね。
清水 能力も高いですが、今シーズンは波に乗り切れずにここまできてしまった印象です。出場機会が限られるなかで難しさもあると思いますが、本来であれば20本前後は打てる力があると思います。
バランスとして、このキャッチャーでいこう、あのキャッチャーでいこうという起用法があるので、難しさもあると思います。打撃に関しては、打席に立たないとなかなか感覚がつかめないですよね。
吉田 このままの起用法でシーズンオフまでいくと思いますか?
清水 そう思います。相性も、相手チームよりも自分のチームのピッチャーとの相性が重視されます。赤星優志選手の時は小林選手など、いろいろありますよね。結果が出なくなればまた変わると思いますが、結果が出ている時は重視して決めていくと思います。
吉田 とりあえずはこのままの状態でいくでしょう。
清水 野手もキャッチャーも、いろいろと試行錯誤しながら打順も決めていくことになると思います。
【Profile】
清水隆行(しみず・たかゆき)/1973年10月23日、東京都足立区出身。