石毛宏典が語る期待の野手とCS争い 後編
(前編:西武で飛躍した野手たちをOB石毛宏典が分析 2年目の身長197cmの内野手は「使いきる価値がある」>>)
パ・リーグ5位の西武は、クライマックスシリーズ(CS)進出圏内の3位オリックスまで、6ゲーム差(8月21日時点/以下同)。昨季とのチームの変化とともに、逆転でCS進出を果たすためのポイントを、西武OBの石毛宏典氏に聞いた。
【抜本的にチームを変えるための、コーチ陣への期待】
――先ほど(前編で)お話しいただいた西川愛也選手やルーキーの渡部聖弥選手らの活躍もあり、シーズン序盤はいい走り出しで貯金もできていました。ただ、現在は借金7のリーグ5位と厳しい状況になっています。
石毛宏典(以下:石毛) 確かに西川と渡部の活躍は目につきました。長谷川信哉や滝澤夏央も、走・攻・守でいい働きを見せることが増えてきましたし、新外国人のタイラー・ネビンも使える目途が立った。しっかりしなきゃいけないのは、源田壮亮と外崎修汰でしょう。
まぁ、昨年はあれだけ負け、ゼロからの立て直しが必要なチーム状況なので、それは簡単なことではありません。チームを作り直すために外部から指導者を招聘し、鳥越裕介のような"叱れる"コーチを呼んだり、改革を進めている最中ですからね。
――石毛さんはこれまでも厳しさの必要性を説かれていますが、やはり"叱れる"コーチが必要?
石毛 抜本的にチームを変えていかなければいけない時は、厳しく、正しく教えられる指導者が必要です。彼がソフトバンクのコーチ時代、厳しい指導で今宮健太ら多くの選手を育てたことはよく知られていますよね。指導者として彼の評価が高いことは、自分が知るソフトバンクの人たちからも伝え聞いていました。
今年4月、西武のレジェンドOBの企画に参加するためにベルーナドームへ行った時、グラウンドで西武の練習を見ていたんですよ。その時に鳥越を見かけたんで、「何で(西武に)呼ばれたのか、わかっているんだろうな?」と言ったんです。そうしたら「はい、わかってます! ただ、まだ様子見で......」などと返してきたので、「はよ、やれや!」と念押しをしましたけどね(笑)。
――石毛さんの現役時代の西武の同僚でもある、立花義家打撃コーチも18年ぶりに古巣の西武に復帰しました。
石毛 立花はとてもまじめで、熱のある指導ができる人間です。同様に、今年からコーチに就任した大引啓次(内野守備・走塁コーチ)も、まじめで選手に寄り添うタイプ。仁志敏久(野手チーフ兼打撃コーチ)も指導力に定評がありますね。
ただ、今の若い世代の気質に合わせることも必要になるだろうなと。いきなり「こうだ」と言うと抵抗があると思うので、「なぜその練習が必要なのか」という理由をしっかり説明してから手段を伝えたほうがいいでしょうね。チームの成績や試合などを見ていると、打つことに関してはまだまだ物足りないですが、走塁や守備の面では一定の効果が出ているように思います。
【CS争いのポイントは中堅やベテランの選手】
――打つほうに関しては、J.D.デービス選手をシーズン途中に補強するなど動きを見せている一方、右肩の違和感で出場選手登録を抹消されている1番バッター・西川選手の戦列復帰が待たれるところです。
石毛 そうですね。打線はクリーンナップも大事ですが、1番バッターが大事なんです。阪神の近本光司やソフトバンクの周東佑京らが固定されていると、格段に得点力が違いますよ。
あと、打順を試行錯誤していますが、各ポジションに絶対的なレギュラーがいるわけではないですし、ある意味仕方がないでしょうね。相手ピッチャーの相性なども考慮していると思いますし、休ませることも考えているはず。
でも、個人的な意見を言わせてもらえば、やはり各ポジションにそれなりの選手を育てて、オーダーも含めて固定することが理想です。それぞれの打順に役割がありますし、複数ポジションを高いレベルでこなすことは難しいです。
――現在、CS進出圏内の3位オリックスまで5.5ゲーム差。厳しいゲーム差ではありますが、ここから巻き返すためのポイントは?
石毛 応援してくれるファンのためにも勝たなければいけませんし、当然、3位も諦めてはいけません。3位を狙うのであれば、DHや代打で中村剛也と栗山巧を使ったほうがいいんじゃないのかなと。村田怜音がDHで出たりしていますが、彼はファーストを守る時もありますよね。あとは、先ほども名前を挙げましたが、源田と外崎がしっかりしなければいけない。2人とも32歳。
若手中心の起用にシフトして経験を積ませることも大切ですが、3位の可能性がある限りは勝ちにいく姿勢を見せなければいけませんし、経験のある中堅、ベテランの働きが必要不可欠です。ただ、3位を争うことになるオリックスは優勝経験者が多いチームですし、楽天もルーク・ボイトら外国人をシーズン途中に補強して戦力に厚みが出てきています。
非常に厳しい戦いになることは間違いありません。西武はピッチャー陣はいいですから、いかに1点をもぎとっていけるか。ポイントとなるような場面での1本を期待できるのがベテランなんです。
【プロフィール】
石毛宏典(いしげ・ひろみち)
1956年 9月22日生まれ、千葉県出身。駒澤大学、プリンスホテルを経て1980年ドラフト1位で西武に入団。黄金時代のチームリーダーとして活躍する。1994年にFA権を行使してダイエーに移籍。1996年限りで引退し、ダイエーの2軍監督、オリックスの監督を歴任する。2004年には独立リーグの四国アイランドリーグを創設。