夏の甲子園2025 スカウトの選手評~2年生編

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「今年よりも来年だよ」

 あるスカウトがそうつぶやいたように、3年生とは対照的に2年生には来年のドラフトの超目玉になりそうな投手が複数いる。スポーツ紙では早くも「四天王」と呼ばれる彼らの現段階の評価を紹介する。

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【ドラフト1位候補の大型右腕】

 選抜でもリリーフで152キロをマークしたが、今大会では先発として長いイニングを投げられることを見せたのが菰田陽生(山梨学院)だ。2年生の現時点ですでに194センチ、100キロと堂々たる体格を誇る。

「リリースをうまく合わせる技術はある。ただ腕を思いきり振るのではなく、しっかり狙って投げている。あれだけのスピードがあって、しっかり制球できているのは魅力です」(パ・リーグスカウトA氏)

「なんと言っても、あのサイズは魅力。あの身長から大谷翔平(ドジャース)をイメージするけど、高校時代の大谷よりも体はできているからね。間違いなく来年の1位でしょう」(セ・リーグスカウトB氏)

 一部では空振りが取れないとの声があるが、逆に言えば、それでも打たれない(聖光学院戦では6回まで無安打投球)のは、ボールを捉えにくい投手とも言える。

「よく大型のピッチャーは『角度、角度』って言いますけど、実際バッターボックスでは地面と平行のほうが捉えられないそうなんです。菰田くんにはそれがあるんじゃないですかね。あとはエクステンション(ピッチャープレートからボールのリリースポイントまでの距離のこと)を意識している感じがします。元阪神のランディ・メッセンジャーの高さに、大谷のエクステンションみたいな感じと言えるでしょう」(パ・リーグスカウトC氏)

 最大級の褒め言葉が並ぶ投手としてだけでなく、パワーのある打者としての能力も魅力で"二刀流"としての期待も高まる。

【夏の甲子園2025】来年のドラフト候補「四天王」をスカウトはどう見たのか? 「間違いなく1位」「無双するかもしれない」
初戦の敦賀気比戦で完封勝利を飾った横浜・織田翔希 photo by Ohtomo Yoshiyuki
 その菰田よりも全国的に先に名前を売ったのが織田翔希(横浜)だ。この世代では誰よりも早く甲子園で150キロをマークし、今年春の選抜では優勝の立役者となった。

「菰田くん同様、織田くんも来年の1位でしょう。菰田くんと違って、織田くんは逆に細さ(185センチ、75キロ)が魅力。体ができてくれば、大きく変わる可能性がある。コントロールもまだまだアバウトですが、それもまだ伸びしろがあるということですからね」(セ・リーグスカウトD氏)

「サイズがあるし、上から投げ下ろす角度がありますよね。対戦したチームの監督に聞くと、健大高崎の石垣(元気)くんよりも織田くんの真っすぐのほうが速いという人もいました。スピードガンでは3、4キロほど織田くんのほうが遅いですけど、体感スピードは石垣くんより速いと。やっぱり、上から投げてスピンがかかっているのと、角度があるから打者の目線が上がってしまう。それでそう感じるんでしょう」(パ・リーグスカウトA氏)

「この夏はフォークを投げていましたよね。これまではチェンジアップとカーブしか投げてなかったんです。フォークの精度はまだまだですけど、あれが使えるようになれば球数も減ると思うのでいいですよね。来年の1位候補といっていいかなと思います」(パ・リーグスカウトC氏)

【夏の甲子園2025】来年のドラフト候補「四天王」をスカウトはどう見たのか? 「間違いなく1位」「無双するかもしれない」
金足農戦で3安打完封、14奪三振の快投を見せた沖縄尚学・末吉良丞 photo by Matsuhashi Ryuki

【急成長を遂げた2人の左腕】

 太ももサイズが驚異の71センチを誇る末吉良丞(りょうすけ/沖縄尚学)も、この夏の甲子園で名前を上げた。選抜ではボールが荒れる印象があったが、今大会は低めにビシッと投げきる制球力が光った。

「春はコマンド(コントロール)が低く、変化球もよくなかった。それがこの夏は、ずいぶんよくなった印象がありました。春からの成長をすごく感じました。ただ才能だけでやっているのではなく、しっかり練習して段階を踏んでいるという選手というのがわかる。そういう意味でも、来年も期待できる。もちろん、上位候補です」(パ・リーグスカウトA氏)

 選抜時はまだ精度の低かった落ちる球も習得。沖縄尚学の比嘉公也監督は投手育成に定評があるだけに、まだまだ伸びそうだ。

【夏の甲子園2025】来年のドラフト候補「四天王」をスカウトはどう見たのか? 「間違いなく1位」「無双するかもしれない」
聖隷クリストファーを初の甲子園へと導いた髙部陸 photo by Matsuhashi Ryuki
 上記3人は選抜にも出場し、大会前から注目されていたが、今大会で新たなスター候補に名乗りを上げたのが髙部陸(聖隷クリストファー)。174センチ、68キロと、4人のなかではもっとも華奢だが、投げるボールは遜色ない。

 甲子園で145キロをマークしたストレートに加え、130キロ台のカットボールの威力が抜群。強打の明秀日立、西日本短大付打線を手こずらせた。

「今大会は決して万全な状態ではなかったんだけど、よく投げたと思いますね。

コントロールはまだまだですが、球の強さやキレで抑えられるピッチャーですよね。これで制球力が上がれば、無双するかもしれない。それぐらいの能力はあります」(セ・リーグスカウトB氏)

「もともと真っすぐの質はよかったんですが、カットボールを覚えて劇的に変わりました。『こんなに変わるの?』っていうぐらい。ここにツーシームの精度が上がってくれば、打たれないでしょう。間違いなく上位候補ですね」(パ・リーグスカウトC氏)

 3年生の話題を振ると渋い顔を見せたスカウトたちも、2年生の話になると饒舌になった。それほど、彼らの将来が楽しみなのだ。

 体調不良のなか投げ続けた織田、仙台育英戦で169球を投げた末吉のように、疲労は相当溜まっているはず。とにかく、故障には気をつけてほしい。きっちり鍛えることができれば、来年春には大きくパワーアップした姿が見られるはず。その日を楽しみに待ちたい。

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