TIMレッド吉田×清水隆行

ジャイアンツOBの清水隆行さんに、懐かしいレジェンドから現役選手も含めて、ジャイアンツのベストナインを選んでもらい、そこから最強打線を組んでもらった。

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レッド吉田(以下、吉田) 清水さんが考えるジャイアンツベストナインを教えてください。

清水さんの現役時代から今の現役選手のなかでお願いします。まずはピッチャーからいきましょう。

清水隆行(以下、清水) 先発が斎藤雅樹さん。中継ぎは山口鉄也くん。抑えが上原浩治さんです。どうですか?

吉田 抑えは上原浩治さんで。

清水 そうすると斎藤さんと上原さんのふたりが選べるので。

吉田 やっぱり斎藤さんはすごかったですか?

清水 すごかったです。紅白戦でしか対戦はないんですけど、見たことのないボールでしたね。僕がルーキーで、斎藤さんもまだ若い時だったと思いますけど、サイドスローのピッチャーというのはそれまであまり経験がなくて、打てる打てないは別として、「すごい」と思った人は初めてでした。

 当時はまだまっすぐとスライダー系の曲がり球だけだったと思いますが、まっすぐは強いし、スライダーの曲がり方もすごかったです。20勝を立て続けにするような方なので当然ですが、本当に見たことない球でした。

これは打てないな、と思いましたね。

吉田 中継ぎの山口さんは?

清水 あれだけ投げて、左で強いボールを投げられて、タフで。特に左バッターのインサイドに投げるシュート系のボール、あれは大変だったと思います。

吉田 そして抑えは上原さん。

清水 メジャーでも胴上げ投手になるようなピッチャーですから。

吉田 続きまして、キャッチャーはいかがですか?

清水 キャッチャーは、阿部慎之助監督じゃないですか?

吉田 次はファースト。

清水 ファーストは清原和博さんですね。

吉田 清原さんって「練習の鬼」と言われていましたが、実際はどうでしたか?

清水 よくバットを振られていましたね。トレーニングに対してもストイックでしたし、試合が終わったあともひとりで汗だくになって振っている姿をよく見ました。食事管理も相当されていましたよ。鶏ささみを食べたりだとか、そういうのを取り入れ始めたのは清原さんが最初だったと思います。2000年ぐらいですね。

当時はまだ「たくさん食べて体作る」みたいな風潮でしたけど、そういう管理を始めたのは清原さんじゃないかと思います。

吉田 続きまして、セカンドにいきましょうか。

清水 セカンドは仁志敏久さんです。

吉田 仁志さんってやっぱり観察力がすごいですか?

清水 そうですね。あと、データもよく見ていたと思います。このピッチャーでこのバッターだったら打球方向はこうだ、とか、全部頭に入っていたと思います。ピッチャーの足元を強い当たりでパーンと抜けた打球を、逆シングルじゃなくて正面で取ったりするのが多かった。それはやっぱり観察力があるからじゃないですかね。よく相手を観察していましたよね。

吉田 続きましてサードにいきましょうか。

清水 サードは岡本和真くんです。守備もうまいです。

吉田 次はショート。

清水 これは坂本勇人くんですね。あれだけのヒット数を重ねていることももちろんすごいんですけど、それをショートというポジションをずっと守りながら達成したというのが、簡単にできることじゃないですよね。

吉田 坂本選手のこのショートの記録を抜く選手って、今後10年なかなか現われないような気がしますね。

清水 難しいと思いますね。技術はもちろんですが、そこに体力も必要ですから。いくら技術があっても、体力がなければケガをしてしまって、ここまで出場できないわけですから。坂本くんはそういう強さも持っていたと思います。

吉田 坂本選手が入団してきた時はどう思いましたか?

清水 まずは細いなと思いましたね。ドラフト1位で入ってきて、「すごくスリムな選手だな」という印象がありました。あとはすべてにおいて柔らかいなと。バッティングも守備もそうなんですけど、柔らかいなって。

でも、強さという部分では、まだちょっと足りていなかったと思います。それがどんどん付いてきて、僕の印象では、彼は向上心がすごくある選手ですね。

 あれだけヒットを打っていても、もっと打つためにどうすればいいかを常に考えて、変えていける。これでもう大丈夫っていうことがない選手だと思います。だから3割打っていても、「3割1分打つためにこうやってみよう」って考えられるし、それを実際にできてしまう。

 ひとつの打席のなかでタイミングの取り方をあれだけ変えられる選手っていないと思うんですよね。足を大きく上げてみたり、ノーステップで打ってみたり、追い込まれてからの対応も変えられる。考えることも大事だけど、あの場面で実践できるって簡単なことじゃないです。だから、あれだけの引き出しを持っているところがすごいところかなと思います。

吉田 レフト、センター、ライトにいきましょうか。

清水 レフトがラミレス、センター松井秀喜、ライト高橋由伸ですね。ラミちゃんは強い選手ですよね。

まずケガしないですし、ポジティブでチーム全体を鼓舞できる選手ですね。外国人選手ですけど信頼も厚いし、パワー、技術、そして頭がめちゃくちゃいいです。考えています。それには驚かされましたね。

 一緒にプレーさせてもらいましたけど、終盤の1点勝負の場面でファーストベースが空いていて、相手ピッチャーは左のセットアッパー。バッターはラミちゃんで、次が左バッター。ピッチャーとしては歩かせるかなって思う場面。もし僕がバッターボックスに立っていたら、1球目を打ちにいくのはちょっと勇気いりますよね。誘い球に手を出して凡打するのも嫌だし。でもラミちゃんは初球のインサイドをガーンと引っ張ってタイムリーを打ったんですよ。

「なんで打てたの?」と聞いたら、「ああいうファーストベースが空いている、歩かせてもいい状況の時、このキャッチャーの時はインサイドから入ってくることが多い」って言ってたんですよ。インサイドの厳しいところから入っていって、そこからボールを散らして、誘いながら打ち取るっていう。

ラミちゃんはそのインサイドを引っ張ってタイムリーにした。力と技術だけじゃないんだなと思いました。

吉田 今の話だけで飯が3杯いける(笑)。

清水 よかったですか? 来た甲斐ありました(笑)。これはすごいと思いました。技術だけで打ったんじゃなくて、そういうこともちゃんと見てるんですよね。

吉田 そして松井さん。

清水 これはもう間違いないです。

吉田 松井さんはやっぱり今まで見たバッターのなかでナンバー1ですか?

清水 バッターとしてはもちろんですが、とにかくチームの精神的支柱でした。当たり前のように「4番センター松井」がいて、最後まで試合に出続ける。

 松井がアメリカに渡るまで、彼がいないということがなかった。当たり前のようにいて、あのプレーをして、周りが打てなくてもホームラン2本ぐらい打ってチームを勝たせたり。そういうことがしょっちゅうありました。

 打ったからって浮かれたり、打てなかったからって落ち込んだり、そういうメンタルの波がないんですよね。毎日同じリズムのなかで、同じ行動をして帰る。

 それを周りが見て、チーム全体に安心感を与えていたと思います。バッターとしてのすごさもありますけど、僕だけじゃなくて、当時一緒にプレーしていた選手たちは、みんな同じことを言うと思います。

吉田 そして、高橋由伸さん。

清水 彼もそうですね。由伸も入ってきた時から雰囲気が違いましたよね。

吉田 イケメンですしね。

清水 そうなんですよ。それでいてカッコつけてないですからね。冗談もバカな話もしますし、人を寄せつけない雰囲気を出すようなこともない。技術的にもそうですが、人間的にもすばらしい。

吉田 ジャイアンツファンとしては、もう一度、由伸さんが監督になるチャンスを与えてほしいと思っています。前は引退してすぐでしたよね。当時は試行錯誤しながらやっていたと思いますが、今は俯瞰で野球を見ているので、また戻ってきた時にどんな野球をしてくれるのか、楽しみなんです。

清水 今はいろいろ見ていると思うので、いずれタイミングがきたらそういう時があるかもしれません。

吉田 松井さんと高橋さんのダブル監督っていうのもありですよね(笑)。

清水 史上初じゃないですかね(笑)。特別な存在のふたりですね。

【最強ベストナインの打順は?】

吉田 では、今選んだベストナインで打順を組んでください。※清水さんをDHで起用。

清水 1番は高橋由伸、2番は坂本くん。うわー、これ難しいな......。1回、1番、2番なしにしてもらっていいですか(笑)? 4番を松井にしてください。5番は清原さんです。

 やっぱり1番は由伸にしましょうか。2番に坂本くん。3番は岡本くんにして、6番がラミちゃん。7番はキャッチャーという負担も考慮して阿部慎之助監督。そして8番、仁志、清水でいきましょう。このメンバーで僕は1、2番を打てないので、8番、9番で仁志と清水のワンセットみたいな感じで(笑)。

吉田 このメンバー強力ですね。極端に言えば、来年のWBCこのメンバーで戦えますよね。

清水 全盛期なら(笑)。まとまりますか? 個が強いので。

吉田 まとまりはどうですかね(笑)。でも、すごいメンバーです。こういう布陣は、ゲームでやっている人が絶対いらっしゃいますよ。非常に今日は盛り上がりました。また次回、面白い情報が入った時にぜひ。

清水 面白い情報っていうのは、こういうところでは出せなかったりするんですよね(笑)。

【Profile】
清水隆行(しみず・たかゆき)/1973年10月23日、東京都足立区出身。1995年にドラフト3位で巨人に入団。2002年には最多安打のタイトルを獲得するなど活躍し、2009年に現役を引退。現在は野球解説者として活動している。

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