ホーム開幕戦となった第2節のエスパニョール戦で、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英は、前節バレンシア戦に続いて好プレーを見せている。
「ベストゲームではなかったが、重要な試合だった。
スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、久保に高評価を与えていた。
以下は、試合後の久保のコメントだ。「もっと主役になりたいです。周りの人が自分に求めている役割を果たすことで」
「ハーフタイム、後半に向けては『新しいシーズン、期待に応えるために試合の流れを変え、戦う姿勢を見せる必要がある』と入り、うまくいきました」
「今シーズン、自分が目指しているのは"数字"」
「スビ(マルティン・スビメンディ)とも話したんですけど、多くの主力が去って、ラ・レアルで重要な役を演じる番が自分に来たと思う」
それらに通底しているのは、ラ・レアルの選手としてのかつてないほどのリーダーシップだ。
今も久保の移籍の噂はくすぶり続けている。
「サウジアラビアのクラブが大金を用意している」「プレミアリーグのクラブはあきらめていない」「パリ・サンジェルマンとの交換トレード?」......。
だが、どれも今まで騒いできた噂レベルの域を出ない。まず、2029年6月末まで契約のあるラ・レアルが手放す意思がないのである。久保本人も大金をもらえるならどこでもいいわけでもない。また、すでに各国でシーズンが開幕し、途中加入がハイリスクなのも承知しているだろう。9月1日(現地時間)がラ・リーガの移籍期限だが、ネタ元の信用度が低い、話題稼ぎの移籍情報はいい加減にすべきだ。
ラ・レアルはエスパニョール戦の冒頭10分間、非常にいい形で試合に入っている。相手のプレスをいなし、ボールを前に進める。久保も自ら際どいシュートを打ち、アンデル・バレネチェアに惜しいクロスを送った。ミケル・オヤルサバルやジョン・アランブルとのコンビネーションで、何度もチャンスを作っていた。
【チームは敗北から救う】
ところが連続失点で、チームは意気消沈する。攻撃的スタイルは、守備の弱さが浮き彫りになった。ちぐはぐな印象で前半を終え、後半もなかなか反撃に転じられなかった。
だが60分、久保は自陣でジョン・ゴロチャテギからのフィードを受け、ドリブルでスペースを作ってパブロ・マリンにつなげた。マリンはゴール前に走り込んだバレネチェアにスルーパスを送り、これはディフェンスに防がれかけるもこぼれ、バレネチェアがゴールに蹴り込んだ。
そして68分にも、久保は敵陣でボールを受けると、軽やかなターンからインサイドに入った。ライン間のオヤルサバルにパス。オヤルサバルがオーリ・オスカールソンへラストパスを送ると、右足でファーサイドに流し込んだ。
久保にアシストはつかなかったが、それに等しいプレーで、チームを敗北から救っている。しつこいマークをしてきた左サイドバックのカルロス・ロメロを翻弄。中、外と仕掛けを使い分け、時間を追うごとに差を見せつけた。相手はラグビーのようなタックルでしか止められなかった。
この同点劇で言えるのは、ラ・レアルが後半に巻き返したこと、その旗手になったのが久保だったこと、そして選手交代が奏功した点だろう。三つの事象は、久保を起点にしていた。そこに今シーズンのラ・レアルの明るい兆しが見えた。
交代出場したMFゴロチャテギ、FWオスカールソンが入った約15分間、ラ・レアルは4-4-2の中盤ダイヤモンド型(4-3-3の可変とも言えるが)に近い布陣で戦っている。トップにオスカールソンが張り、オヤルサバルが少し下がり、マリンがトップ下的に。久保、バレネチェアが連係を活発化。アンカーのゴロチャテギがスビメンディを彷彿つとさせるプレーメイクを見せ、攻撃の圧力が倍増した。
このメンツは、ラ・レアルのパターンのひとつになるかもしれない。
何より、久保が攻撃リーダーとして中央や左までポジションを変えられると、変幻の攻撃を生み出せる。ゴロチャテギとのパス交換は実にスムーズで、他にも久保が縦パスを引き出すと、中央から複数の選手がゴールに向かって殺到する姿もあった。オヤルサバル、マリン、バレネチェアと近い距離で連係し、オスカールソンのような長身ストライカーがいることで配球のバリエーションも増えるのだ。
イマノル・アルグアシル前監督は優れた指揮官だが、布陣に関してはリスクを回避していた。近年は守備を優先するところもあった。たとえばセルヒオ・ゴメスをアタッカーで起用することが多かったのも、守備面の弱さを認識していたからだろう。しかし新監督セルヒオ・フランシスコは、エスパニョール戦でセルヒオ・ゴメスを左サイドバックに起用。守備面では弱点だったが、左足キックで局面の技術の高さを見せていた。
あらためて、久保がかつてのダビド・シルバのように攻撃をけん引することで、新たな時代を作れるのではないか。理想はトップ下、もしくはトップの一角だが、自由に動けるなら右MFも悪くない。大外から、得意のウィングプレーもできるからだ。
8月31日、ラ・レアルはアウェーでオビエドと対戦する。開幕から連敗中の昇格チームを相手に、勝ち点3が求められる。