J1は残り11節となったが、優勝争いはいつにも増して大混戦だ。果たして頂点に立つのはどこなのか? 3人のライターが予想した(データは第27節終了時点)。

【Jリーグ】大混戦のJ1で頂点に立つのはここだ! 識者が優勝...の画像はこちら >>

【決め手は経験と守備力】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

<優勝予想> 
◎本命 鹿島アントラーズ 
◯対抗 サンフレッチェ広島 
△穴 柏レイソル

 消化試合にバラツキはあるものの、スケジュールの3分の2以上を消化した現在も上位と下位は団子状態。とりわけ優勝争いについては、首位の京都サンガF.C.(27試合で勝ち点51ポイント)から6位のサンフレッチェ広島(28試合で勝ち点49ポイント)までの勝ち点差はわずか2ポイントしかない。

 7位の浦和レッズと8位の川崎フロンターレも、京都と同じ消化試合数で3ゲーム差の勝ち点9ポイント以内なので、客観的に見ればまだ十分に優勝を狙える位置にいる。

 そんな大混戦のなか、最後に優勝の決め手となるのは何か。いろいろな視点があると思うが、個人的には近年における「優勝争いの経験値」と、安定した成績を残すためには欠かせない「高い守備力」にあるのではないかと考える。

 その視点で言えば、目下2連覇中のヴィッセル神戸をはじめ、最後に優勝した2016年から常に上位5位以内でフィニッシュしている鹿島アントラーズ、そして直近3季連続で3位以内の成績を収めている広島の3チームが、「優勝争いの経験値」が高いチームだ。そのうえ、神戸は28試合で26失点、鹿島は27試合で26失点、広島に至っては28試合でわずか19失点と、いずれも「高い守備力」を誇っている。

 この3チームは甲乙つけがたいところだが、敢えて本命と対抗を選ぶなら、極めて主観的ではあるが、優勝を遂げた2023年をピークに安定感が失われつつある神戸を消去法で外さざるをえないか。特にまだ鹿島しか成し遂げていない3連覇は、並大抵のことでは達成できないとみる。選手層という点でも、9月からACLを並行して戦うには心もとない。

 したがって、鹿島と広島が最有力候補2チームで、強いて言うなら、リーグ戦に集中して戦える鹿島がラストスパートをかけるには有利な状況にあるので本命としたい。戦力的にも充実しており、小川諒也、千田海人、エウベルと、夏の戦力補強に余念がなかった。

 一方の広島は、9月からACLを戦ううえ、何より鹿島と比べて得点力で大きな差があるのがマイナス材料と言える(鹿島は40得点、広島は33得点)。

 そして、穴として推したいのが、攻撃サッカーを標榜して結果を残している柏レイソルだ。リカルド・ロドリゲス新監督が植えつけたポゼッションスタイルがゴールに結びつくようになり、しかも27試合でわずか5敗しかしていないのも大きなポイント。「優勝争いの経験値」はないが、見て楽しいサッカーで優勝できれば、Jリーグのトレンドに変化も生まれるはずだ。

【日程的に圧倒的に優位なのは京都】

篠 幸彦(スポーツライター)

<優勝予想> 
◎本命 京都サンガF.C. 
◯対抗 ヴィッセル神戸 
△穴 柏レイソル

 正直、どこが優勝するかは予想が難しい。それほどに勝ち点差もチーム力も拮抗しているし、ここからどんな展開もあり得る。そのなかでも優勝争いは、京都サンガF.C.、鹿島アントラーズ、FC町田ゼルビア、柏レイソル、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島までの上位6クラブが中心になっていきそうだ。

 本命に挙げるのは京都。リーグ戦のみに集中でき、日程で圧倒的に優位だ。第30~32節以外は週1ペースでの試合間隔で、残り11試合のうち7試合がホームゲームというのも京都の優位性をさらに大きなものにしている。

 また、上位対決、いわゆる6ポイントマッチを4試合(広島、町田、鹿島、神戸)残しており、そのうち3試合がホームゲーム。初優勝に向けた大一番で、プレッシャーは経験したことがないほどに大きいだろう。そうしたなかで、ホームの後押しを受けながら戦えることは強力なアドバンテージと言える。

 そんな京都に対抗するクラブとして挙げたいのは、現在2連覇中の神戸。

リーグ戦のほか、ACL、天皇杯、ルヴァンカップとすべてのコンペティションに残っている神戸は、一番ハードな日程を戦うことになる。

 本来であれば優勝争いにおいて不利であることは間違いない。ただ、神戸はそのハードな日程に慣れているし、優勝争いにおいてなによりも物を言うのは経験である。シーズンが佳境を迎えるほどに、神戸の2連覇という経験がアドバンテージになるだろう。大迫勇也武藤嘉紀という2枚看板がようやく復帰したことも強力な追い風だ。

 鹿島と悩んで穴に挙げるのは柏。夏の移籍期間でもチームスタイルにあった選手を積極的かつ的確に補強し、早速フィットしている。

 ルヴァンカップを勝ち残っているが、ACL組と比べれば、日程のアドバンテージは大きい。また、広島と町田との直接対決をホームで戦えることも柏にとっては心強い。プレッシャーのかかる最終盤で、ホームの後押しが劇的なフィナーレを助けるシナリオは大いにあり得る。

 鹿島、町田、広島が上記の3つと劣るとは思わない。ただ、優勝争いで重要となる日程と経験というふたつを加味した時に、わずかに京都、神戸、柏が優位となりそうだ。

ただ、これだけ拮抗したシーズンは前代未聞。最後の最後まで何が起こるかまったくわからない。

【安定した戦いで優勝争いを引っ張るクラブが存在しない】

浅田真樹(スポーツライター)

<優勝予想> 
◎本命 サンフレッチェ広島 
◯対抗 ヴィッセル神戸 
△穴 FC町田ゼルビア

 今季J1の優勝争いは史上稀に見る大混戦と言えば、なんとなく聞こえはいいが、実情はどこも決め手に欠けるどんぐりの背比べ。シーズン開幕前の順位予想で、「順位予想をしようにも優勝しそうなクラブがない」と記したが、我ながら概ね的を射ていたと思っている。

 安定した戦いで優勝争いを引っ張るクラブは存在せず、例年なら致命的な失速で脱落してしまったはずのクラブも、再び巻き返しが可能となり、もたつく先頭集団に追いついてしまう。

 それが大混戦の正体だ。

「優勝しそうなクラブがない」との印象はいまだ変わらず、正直、この先を見通すのは難しい。

 だとすれば、開幕前の予想を変える理由は思いつかず、初志貫徹で優勝予想の本命はサンフレッチェ広島、対抗はヴィッセル神戸とした。

 広島の優勝予想の根拠として、あえてそれらしい理由をつけるとすれば、失点数の少なさ。ここから先の戦いで、何連勝もして大きく抜け出すクラブが現われるとは考えにくく、このまま試合ごとに順位を入れ替えながら、最終的にどこが少しだけ前に出るのかの争いになるだろう。そこでは、いかに勝ち点の取りこぼしを減らすかが重要であり、水ものの得点力よりも、手堅い守りがものを言うのではないだろうか。

 ただ、上記2クラブのみならず、鹿島アントラーズも含め、複数回の優勝経験を持つクラブの戦いぶりにもたつきが目立ち、さすがの貫禄どころか、むしろ寂しささえ覚えてしまう。

 いっそここまでもつれたのなら、まだ優勝経験のないクラブ、すなわちFC町田ゼルビア、あるいは京都サンガF.C.が初戴冠を遂げるほうが、今季の結末にはふさわしいのではないかと感じてしまう。

 特に町田は、シーズン中盤の3連敗で一度は死んだはずが、大混戦のおかげで復活。夏場に入り、明らかな上昇気配をうかがわせているだけに、昨季惜しくも"大魚"を逃した悔しい経験が、ここに来てプラスに作用する可能性は十分にある。

 もちろん、7位以下にも優勝のチャンスがないわけではないが、基本的には上位6クラブに優勝争いは絞られたと考えていいだろう。

 ここまで来たら、勝ち点2差以内に6クラブがひしめくくらいの状況のまま、12月の最終節を迎えてほしい。

>>後編「大混戦のJ1下位順位予想 残留・降格の境目は?」へつづく

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