開幕戦でフラムに引き分け、第2節でエバートンに敗れた三笘薫所属のブライトン。第3節はマンチェスター・シティを迎えてのホーム戦となった。
前半はアウェーチームの一方的なペースで進む。ワンサイドゲームとは言わないまでも、ブライトンが相手のペナルティエリア内に進出する機会は滅多になかった。
左ウイングに張る三笘に初めてボールが回ったのも、前半12分という遅さだった。直後には右足のアウトでクロスを蹴り込んでいる。ボールは狙った方向には飛ばず、チャンスには至らなかったが、パッと見、三笘の動きそのものは悪そうではなかった。過去2戦より、ピッチを踏みしめる足に力強さが増し、アタッカーとしての鋭さが強化された印象を受けた。
今季イチのプレーを見せたのは前半19分だった。
右ウイングのヤンクバ・ミンテ(ガンビア代表)が対峙するマンチェスター・シティの左SBラヤン・アイト=ヌーリ(アルジェリア代表)からボールを奪い、そのまま前進する。中央のCFダニー・ウェルベック(元イングランド代表)を経由して、三笘の鼻先にスルーパスが通った。相手の最終ラインの背後である。光ったのはその縦方向への推進力とステップワークだった。マーカーの右SBマテウス・ヌネス(ポルトガル代表)をかわしながら、右足でシュートに持ち込んだ。ゴール左隅に吸い込まれたかに見えたボールはGKジェームズ・トラフォード(U-21イングランド代表)の超美技に阻止され、ゴールポストをわずかに逸れたが、過去2戦は拝むことができなかった、切れ味鋭い高級なアクションだった。
だが、試合はそこからマンチェスター・シティの一方的なペースになっていく。ケガから復帰したロドリ(スペイン代表)、新加入のタイアニ・ラインデルス(オランダ代表)が中盤を支配。三笘が構える左サイド(相手の右サイド)もオスカー・ボブ(ノルウェー代表)、ベルナルド・シルバ(ポルトガル代表)、マテウス・ヌネスによって完全に支配された。
1トップを張るアーリング・ハーランド(ノルウェー代表)が決定機を迎えるシーンも増えていく。
【ピッチ中央を高速ドリブルで引き裂く】
24分、25分と立て続けにチャンスをつくり、そして迎えた34分のシーンだった。ボブ、オマル・マルムシュ(エジプト代表)の両ウイングが中央に入りゴール前をこじ開ける。最後はハーランドがプッシュしマンチェスター・シティが先制した。
ブライトンは、相手ボールに転じると右ウイングのミンテが定位置より低く構える、5バック然とした体勢で守りを固めた。ベタ引きで相手の攻勢に対峙していた。しかし、守備的に出たにもかかわらず、ゴールを奪われてしまった。作戦の整合性がとれなくなっていた。
ホーム戦である。このまま守り続けても岩は動かないと判断したのだろう。後半15分、マルムシュの折り返しをボブが外して追加点を逃れると、ブライトンベンチは思いきったメンバーチェンジに出た。4人を一気に代えたのだ。
効果は即、現れた。直後の16分、自軍深くでミンテがボールを拾う。その目線の先にいたのが三笘で、パスを受けるや迷いなくピッチの中央を高速ドリブルで前進した。タッチ数はトラップと最後のパスを含めて8回。その間に40メートル弱前進した。右足でボールを突くたびにスピードが加速。三笘はまさに疾風のごとく大胆にピッチを切り裂いた。
そして次の瞬間、傍らを走ったミンテに右足のインサイドでラストパスを送った。
するとその直後、マンチェスター・シティはCBのアブドゥコディル・クサノフ(ウズベキスタン代表)が、自軍のエリア内でハンドの反則を犯す。このPKをジェームズ・ミルナー(元イングランド代表)が決め、ブライトンは同点とした。
三笘はこの試合、見せ場を計3度作った。前半19分のシュートと後半16分の40メートルのドリブル&ラストパスは先述のとおりだが、もうひとつが後半44分のアシストプレーだった。
左SBのマキシム・デ・カイパー(ベルギー代表)が縦関係にある三笘めがけてロングボールをフィード。マンチェスター・シティのCBジョン・ストーンズ(イングランド代表)にいったん跳ね返されたが、そのこぼれ球をMFディエゴ・ゴメス(パラグアイ代表)が拾い、交替で1トップに入ったジョルジニオ・ルター(元U-22フランス代表)につける。
ルターはこのボールを三笘にダイレクトで落とした。三笘のアシストプレーもダイレクトだった。前線のスペースを走った交代出場のMFブラヤン・グルダ(U-21ドイツ代表)に、まさにここしかないというタイミング送った左足のパスである。三笘のサッカーセンス、とりわけ視野の広さが光る巧妙なワンプレーだった。
これをグルダが決め、ブライトンは逆転勝ちを収めた。これぞ痛快劇と言いたくなる鮮やかな勝利。三笘のプレーを採点するならば7~7.5だ。5.5が精一杯だった過去2戦を覆す上々のデキだった。
強者マンチェスター・シティ相手に、今季を占う試金石ともいうべき一戦で、三笘は結果を残した。曇っていた視界が一気に明るくなった印象だ。メキシコ戦、アメリカ戦も楽しみである。森保一監督にはウイングバックではなくウイングとして、より高い位置で起用してほしいものである。