チャレンジャー・シリーズ 木下グループ杯 レポート#1

坂本花織「マイペースすぎた」自分に喝! 最後のシーズン初戦は...の画像はこちら >>

【ラプンツェルみたい...マイペースすぎに反省】

 初の日本開催となったチャレンジャー・シリーズ(CS)の木下グループ杯(9月5~7日)。坂本花織(シスメックス)は、得点を200点台に乗せながらも千葉百音(木下グループ)に13点弱の差をつけられる2位だった。

 それでも坂本は、「ショートプログラムもフリーも想定内」と明るい表情で言った。

「ちょっとマイペースに練習しすぎたというのが一番。かわいい言い方をすると、自分のキャラじゃないけど、ラプンツェル(※ディズニー映画の『塔の上のラプンツェル』)みたいに、ずっと閉じこもって外の世界を見てなかった感じです。練習のペースが遅かったし、その練習でも一回一回満足して、『これでオッケー』みたいな感じでやってしまいました。もう少し、やりすぎくらいやってもよかったなと思いました」

 例年なら夏の大会に出てからシーズンインする。だが、坂本にとって現役ラストシーズンの今季は、6月末の『ドリーム・オン・アイス』でショートプログラム(SP)とフリーの新プログラムを披露する早い準備ができていながらも、その後、間が空いて、シーズン初戦はこのCSになった。

「今まではシーズンが始まると自然に緊張感が出てきて、練習の時から『少し緊張してきたな』という感じも出てくるけど、今回の大会前にはなかなかそれができなくて。でも、これをきっかけに次は、自分で自分に喝を入れるじゃないけど、練習も『このままでいいの?』って感じでできるかなと思う。先生からも喝をもらいながらやれたらなと思っています」

【4年ぶりのタッグで挑むラストシーズン】

 9月5日のSPは2番滑走だった。『Time To Say Goodbye』は、坂本が「自分がこうやってでき上がったというのを滑りで示したい」と話すプログラムだ。

 スピードに乗った大きな滑りのなかで、「前年に比べて格段に不安はなくなったので、すごく安心してできる」という3回転ルッツと、得意のダブルアクセルは余裕を持って決めた。だが後半の連続ジャンプは、最初のフリップが2回転になってセカンドも付けられないミス。「ショートの3回転+3回転は練習でもノーミスの確率はけっこう低かったし、いつもどおりに鬼門にはなっていたので、本番でも出たなという感じ」とあっさりと話す。

 続くコンビネーションスピンからはしっかり立て直して65.25点を獲得。

SP4位発進となった。

「やっぱり3回転+3回転は得点源なんだなとあらためて実感しました。あそこでがっぽり10点くらいなくなったのが大きかった。でも、そこさえ決まればという感じだったし、他のところの手ごたえはすごくありました」

 このSPは4季ぶりにブノワ・リショー氏とタッグを組んだプログラムだ。

「直前までブノワ先生とビデオ通話をして、『ここをちょっと改善して』という感じでブラッシュアップしていた。細かくいろいろなところに注意して、丁寧にやっていきたいプログラムです。ジャンプ以外のところで点数を稼ぐとなったら、そういう(細かい)ところが大事になると思います」

【上げるか下げるか、すべて自分次第】

 SP終了時点でトップの千葉とは7.86点差だった。逆転を狙った翌6日のフリーでも坂本はミスをしてしまった。

「ショートに比べたら、やっぱり集中力とか緊張感というのは今日(6日)のほうがまだ『試合だな』という感覚にはなったけど、まだまだ『初戦』という感じが抜けなかったので反省点だなと思います」

 フリーは、自分のスケート愛を表現したいという『愛の賛歌』。最初のダブルアクセルをきれいに決めると、そのままスピードに乗った伸びやかな滑りを続けてジャンプをこなし、フライングシットスピンと、重厚感のあるステップシークエンスはともにレベル4。

 充実の滑りを見せていたが、そのあとの3回転サルコウが2回転になったうえにダウングレードの判定。3回転フリップ+3回転トーループが3回転+2回転とミスを連発。さらに、ダブルアクセル+3回転トーループのあと、とくに点数的には影響はなかったものの、得点が無効になる3回の2回転トーループを付けるミスもあった。

「リンクから上がったら、中野園子先生に『ダブルトーループを3回跳んだのに気づいてる?』と言われて、『えっ』となって......。もう完全に抜けていて、言われるまで気づかなかったです」

 フリーの得点は、138.39点。合計は203.64点として、SP2位の三宅咲綺(シスメックス)とマデリン・シーザス(カナダ)を逆転したが、フリーで143.48点を出した千葉にはさらに点差を広げられる2位となった。

 それでも、坂本に不安な表情はなかった。

「これも経験だと思っています。次の試合はGPシリーズの1戦目で、1カ月ちょっと時間がある。このあと自分を上げるか下げるかは本当に自分の練習次第だと思うので、しっかり練習を積んで、次のGPでは後悔のない演技ができるように頑張りたいです」

【21年間を詰め込んだプログラムに挑む】

 2018年平昌五輪以降、ブノワ・リショーと組んだのも含め、坂本は苦手の克服に取り組んでいた。だが、ラストシーズンと決めた今季、自分のスケーティングや大きさとスピードのある滑りを存分に見せたいと考え、「滑っていても心地よく、満足感が得られる」と自認するプログラムになっている。

 昨季までは場数を踏んでプログラムに慣れようとしていたが、今季、例年出場していたサマーカップには出ずにシーズン初戦をこのCSにしたのは、坂本のなかにプログラムに対しての自信もあったからだ。

 今後もう一度、プログラムを本格的にブラッシュアップする予定だという。自分らしさをしっかりと出せるプログラムだからこそ、坂本はこう話す。

「やっぱり21年間やってきたさまざまなものをプログラムの4分や3分弱で表現しきるというのが、自分のなかでまだちょっと難しいなと思うところもある。

どうやって凝縮したらいいんだろう、と」

 これから1試合1試合演技をするなかで、ひとつずつ見つけ出していくものがあるだろう。坂本は、このCSの悔しさも残る演技で、ラストシーズンへの本格的なスタートをきったと言える。

レポート#2へつづく

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