アメリカ戦を見るうえで確認したかったポイントは、ふたつ。

 中2日で行なわれる2試合の間で大きくメンバーを入れ替えてもなお、チームとしての機能性を保てるのか。

 と同時に、大きくメンバーを入れ替えれば、必然的にこれまでの日本代表戦で出場機会が少なかった選手に多くの出番が回ってくることになるわけだが、彼らがどれだけのパフォーマンスを見せるのか。

 この2点に尽きると言ってもよかった。

 ワールドカップ本番では、さすがに今回のアメリカ遠征のように中2日で試合をこなすことはないが、だからといって、週に1試合しかない日常のリーグ戦ほど、試合間隔に余裕があるわけでもない。

 1カ月強の大会期間で、決勝に進出すれば8試合、ベスト8進出でも6試合を戦わなければならないのだから、かなりの過密日程である。

 だからこそ、ひとつでも上に勝ち進もうと思えば、できるだけ選手層を厚くしておく必要がある。ベストメンバー、すなわち限られた選手だけで戦い続ければ、たとえ大会序盤は勝ち進むことができても、試合を重ねるごとにパワーダウンしてしまうからだ。

 その意味において今回のアメリカ遠征は、新戦力の掘り起こしとチーム力の底上げのためには、またとないチャンスだったはずである。

 ところが、2試合を終えた今となっては、そんな絶好の機会を無駄にしてしまった印象ばかりが強く残る。

サッカー日本代表はアメリカ遠征という絶好の機会を無駄にした ...の画像はこちら >>
 率直に言ってアメリカ戦は、なかなかお目にかかれないほど、内容に乏しい試合だった。攻守ともにギクシャクした状態が長く続き、なかなか相手からボールが奪えないばかりか、どうにかボールを奪っても、今度はそれを前進させることができなかった。

 これでは0-2の完敗も、内容に見合った妥当な結果と認めるしかない。

 日本にも得点機がなかったわけではないが、それを言うなら、アメリカに3点目、4点目が入る可能性のほうが高かった。

 冒頭に記したふたつのポイントについて見ても、いずれも収穫を手にしたとは言い難い試合である。

 とはいえ、この結果を受けて、メキシコ戦に出場した主力組と、アメリカ戦に出場した控え組との間には力の差がある、とだけ結論づけてしまうのは、フェアな評価ではないだろう。

 もちろん、両者を比べれば、前者のほうが技術、戦術、経験など、あらゆる面で個人能力の高い選手が多かったことは否定しない。だが、メキシコ戦のメンバーは、これまでの試合を通じてコンビネーションの練度を高めてきた主力組の選手がほとんど。そこに何人かの新戦力候補を加えた顔ぶれだった。

 その一方でアメリカ戦は、ぶっつけ本番と言っていいような急造チームで臨んだのである。こんなチーム編成で、主力組と同じような試合をしろ、というほうが無理筋というものだ。

 アジアではなく、世界レベルのチームを相手にしてもなお、日本代表が2チーム分の戦力を抱え、誰が出ても同じレベルで戦えるかという点について、森保一監督自ら「答えが出たかなと思っている」と話していたが、もしアメリカ戦に出場した選手たちが、この結果をもって失格の烙印を押されてしまうのなら、もはや気の毒だとさえ言いたくなる。

 そもそも森保監督の考える2チーム分の戦力とは、こんなやり方で整えられるものなのだろうか。

 本当にワールドカップで優勝、あるいはベスト8進出を目指すなら、2チーム分の戦力が不可欠。そこには何の異論もないが、だとすれば、もっと積極的に戦力の底上げを促すような"アメリカ遠征の使い方"ができなかったのだろうか。

 具体的に言えば、2試合のメンバーを主力組と控え組に分けるのではなく、それぞれに主力組と控え組を同程度に混在させることはできなかったのか、ということだ。

 さらに言えば、中2日という試合間隔を考えると、肉体的負担はもちろん、各選手の所属クラブへの配慮も含めて、同じ選手を2試合ともに先発出場させることは難しい。必然的に2試合のメンバーを総入れ替えすることを、おそらく早い段階で決断せざるを得なかったはずである。

 実際、森保監督はメキシコ戦を前にした段階で、アメリカ戦でメンバーを大幅に入れ替えること、最大で総入れ替えもあることを明言していた。1試合目に主力組を先発で使ってみて、コンディション次第では2試合目も、と考えていたとは思えない。

 そうであるならば、もっとその方針に沿った選手を招集しておくべきだったのではないだろうか。

 現にアメリカ戦では、関根大輝を3バックの右や4バックの右センターバックに、長友佑都を3バックの左に、瀬古歩夢を4バックの左サイドバックにと、それぞれが本職とは言えないポジションで起用される事態に陥っているのである。

 結局、今回のアメリカ遠征では、主力組がそろえば一定以上(メキシコ相手でも内容で上回れるほど)の力が出せることがわかった一方で、それを脅かす選手は見当たらないこと。そして、選手を入れ替えながら短期間での連戦をこなしていく準備がまったくと言っていいほどできていないこと、が明らかになっただけだ。

 それでいて、主力組には冨安健洋を筆頭に負傷者が相次ぎ、ワールドカップ本番への影響まで心配される状態にある。つまりは、新戦力の発掘は進んでいないのに、肝心の主力組は戦力が目減りしていく一方なのだ。

 確かに日本は強くなった。だが、その強さはかなりの条件つきである。

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