ラ・リーガ第3節、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は敵地でオビエドに0-1で敗れ、開幕以来3試合、勝ち星がない。24年ぶりに1部昇格のオビエドに黒星を喫したため、どうにか引き分けてきた2試合もネガティブに捉えられている。
代表ウィークでひと休みとなったが、ラ・レアルの現状とは?
開幕以来、ラ・レアルを双肩に担う久保建英のプレーは決して悪くはない。開幕のバレンシア戦で同点弾を叩き込み、エスパニョール戦では2点ビハインドから追いつく攻撃をけん引。オビエド戦も何度となくチャンスを作った。マルティン・スビメンディの後継者、ジョン・ゴロチャテギとのコンビは潤滑で、彼がつけたボールを自らゴールへ持ち込み、際どいシュートを放ち、ミケル・オヤルサバルなどとの連係でも技量の高さを見せた。
「(オビエド戦で)日本人(久保)はグレーな出来の試合だったが、挑むことはやめなかった。結果にはつながらなかったが、35分にはディフェンスをかわし、ゴールまで攻め寄せ、シュートを放っている。すばらしいプレーで、"たったひとりで世界を相手にする"という気概を感じさせた。後半も攻撃を引っ張るもネットを揺らせず、65分に下がったのは驚きだった」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は久保についてこう記しているが、敬意がこめられているのがわかるだろう。ただ、星の評価はゼロ(0~3の4段階評価)で厳しかった。それは久保をエースと見込んでいるからで、苦しい展開での活躍が義務づけられているのだ。
一方で、久保を巡る「移籍記事」の狂騒曲はようやく終わった。
プレミアリーグがリバプール、アーセナル、マンチェスター・シティ、アストン・ビラ、チェルシー、エバートン、ウェストハム、ニューカッスル、ボーンマス、ウルバーハンプトン、ラ・リーガがレアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード、セリエAがミラン、リーグアンがパリ・サンジェルマン、さらにはサウジアラビアのクラブなど、枚挙にいとまがない。
【"戦術"として久保の名前を利用】
しかし、90%以上が限りなく根拠がない噂話で、残りもやり取りはあっても、人物照会レベル。多くのネタ元になったスペイン国内サイトは、著しく信用度が低いものだった。話題稼ぎの虚構をニュースでばらまく、という繰り返しだった。
久保サイドとして、移籍の話を進めていた形跡は確かに見られる。しかし、ラ・レアルは2029年6月末までの契約を盾に、6000万ユーロ(約100億円)という移籍違約金をビタ一文まける気はなかった(元の所有権を持つレアル・マドリードとの取り決めで、半分がレアル・マドリードに流れてしまう。つまり実質的に3000万ユーロ以下で久保を手放す理由はなかった)。こうした大型移籍が成立するのはビッグクラブが本腰を入れたときだけで、少なくともリーグ開幕までには決まるものだ。
結局、多くのクラブがマーケティング戦術として久保を使っていた。同じポジション、タイプの選手を獲得するのに、その名前を使っていたのである。最たる例が、アトレティコだろう。
「ディエゴ・シメオネ監督が久保にラブコール」
移籍の噂がまことしやかに報じられたが、確定する気配は当初から微塵もなかった。
日本国内でも、特にウェブで「久保は○○へ移籍?」というニュースが飛び交ったが、ほとんど中身がなく、ないからこそ、バブルのように膨れ上がっていった。そうした気配は、選手本人にとっても有益ではない。チームメイトや周囲もこうした浮ついた話を耳にすると、ざわざわとした感じが消えないのだ。
久保はこうした喧騒を乗り越えるだけの力量とパーソナリティを持っている。しかし繰り返すが、移籍話が連日のように報じられるのは百害あって一利なし。情報ソースは疑うべきだ。
ラ・レアルは移籍期限ぎりぎりで元スペイン代表カルロス・ソレール、ベネズエラ代表ヤンヘル・エレーラとふたりのMFの獲得を決め、帳尻は合わせた。しかし動きは遅すぎたし、強化は今シーズンも及第点はつけられないだろう(ウマル・サディクやアルバロ・オドリオソラの売却にも失敗した)。ジョン・ゴロチャテギの台頭など、下部組織スビエタの底上げが救いではある。
9月13日(現地時間)、本拠地レアレ・アレーナで、ラ・レアルは首位に立つレアル・マドリードと対戦する。
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