アメリカ遠征(vsメキシコ、vsアメリカ)を終えたサッカー日本代表。強化試合は今後も続き、10月にはパラグアイ戦、そして、大注目のブラジル戦が待っている。
10月のパラグアイ戦とブラジル戦、国内開催とはいえ、アメリカ遠征に続いて、日本代表の現在地を知る、よいマッチメイクだと思う。日本は1対1で積極的に仕掛けてくる、個の強い国や選手を苦手としているだけに、南米勢との対戦は貴重なテストになる。
まず注目したいのは、アメリカ遠征で1点も取れなかったチームが、ホームの2試合でどうやって点を取るか。今回は勝敗よりも重視したい。
もちろん、ここで2連敗したら、それこそ「ワールドカップ優勝」どころではなくなるし、来年のワールドカップ本番に向けての盛り上がり、また、広くサッカー人気という意味でも厳しい状況になってしまうので、勝つに越したことはない。とはいえ、一定以上の強さの相手との親善試合で、守って守ってカウンターで勝ったとしても意味はない。単に守るだけではなく、点を取らないことにはワールドカップは勝ち上がれないわけだから。
パラグアイは伝統的に守備が売りのチーム。6位通過した今回のワールドカップ南米予選でも、18試合で14得点(10チーム中7位タイ)と攻撃はイマイチだったけど、失点は10(同2位タイ)と相変わらずの堅い守備を見せた。
そして、ブラジルだよ。
ただ、繰り返しになるけど、今回はブラジル相手といえども、守って守ってカウンターで勝っても、あまり意味がない。アトランタ五輪当時の日本は、まだワールドカップ本大会に出たことがなかった。ワールドカップ上位進出を目指す今とは状況が違う。だから、負けてもいいから、リスク覚悟で点を取りにいくサッカーをしてほしい。むしろ、ヘタに守り勝って、「これでワールドカップ優勝もいけるぞ」と勘違いするのが一番怖い。
ブラジルには、昔のような圧倒的な強さはない。特に攻撃的なポジションのいい選手が少なくなったね。それには明確な理由があって、ストリート育ちのサッカー選手が減ったからに尽きる。昔はデコボコのグラウンドで大人も子供も関係なくプレーし、また、遊びのなかで自然と技術を身につけていたのに、時代の変化とともに、サッカーは月謝を払って教わる習い事になってしまった。特に、大都市ではそうだ。
だから、教科書どおりのプレーができる選手は増えたけど、次は何をするのだろうという期待感を持たせてくれる、規格外の選手が出にくくなっている。ただ、贔屓(ひいき)目を抜きにしても、ヴィニシウスのように強烈な個性、テクニックを持った選手はまだいるし、チームとしても、依然としてワールドカップの優勝候補の一角に挙げられるくらいの強さはある。
今回の南米予選では、監督交代を2度するなど苦戦が続いた(5位通過)。でも、今年5月にブラジル代表史上初の外国人監督となるカルロ・アンチェロッティを迎えてからは、堅い守備をベースに持ち直している。手厳しい国内メディアも「まあまあ」と評価している。日本の力を知る相手として不足はないだろう。
【サッカーはあくまで11人と11人の個の勝負】
では、そのブラジルから、日本はどうやって点を取るのか。僕は、攻撃時の1対1の局面で、選手たちがどれだけたくさん勝負を仕掛けられるかが重要になると思う。3バックとか4バックといったシステムや戦術は二の次。サッカーはあくまで11人と11人の個の勝負。横パス、横パスと安全にボールをつないでいるだけではチャンスをつくれない。まずは個で勝負して勝つことがゴールへの第一歩になる。
今の日本代表には、所属クラブと違うポジション、役割を与えられている選手が多い。そして、選手もそれに忠実に従う。攻撃的なポジションの選手も守備を厭わない。それは日本のいいところでもあるけど、ちょっと真面目すぎないかな。
例えば、ヴィニシウスにもっと守備をしろと指示を出しても、「俺はドリブラーだ」と言って聞かないと思う。もしくは、聞いたフリをするだろう。そういうわがままな選手が日本にもひとりくらいいてもいい。
そういう意味で期待したいのは、三笘薫と久保建英だね。ブラジルのDF陣を相手にしても仕掛けられるドリブルの能力を持った選手だからだ。チーム全体のバランスを考えてプレーするのも大事だけど、時には自分の持ち味を出すことを優先してもいい。結果として得点につながれば、誰も文句は言わないし、賞賛されるのだから。思いきったプレーを見せてほしい。
(17)>>それでも「ワールドカップ優勝」を目指すサッカー日本代表に、セルジオ越後は「根拠がなさすぎる」「謙虚にベスト8を目指すべき」