北海道稚内市のみどりスポーツパークで行なわれた『2025カーリング日本代表決定戦』は、ダブルラウンドロビン(出場3チームによる2回総当たりの予選リーグ)とタイブレークを終えて、3大会連続の五輪出場を目指していたロコ・ソラーレが敗退。決定戦には、ダブルラウンドロビンを1位通過したSC軽井沢クラブと、ロコ・ソラーレとのタイブレークを制したフォルティウスが進出した。

 決定戦では初戦をSC軽井沢クラブ、2戦目をフォルティウスが勝って、通算2勝2敗で最終戦を迎えた。勝ったほうが来年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の代表候補に内定する大一番。ダブルラウンドロビンを連敗スタートするなど、常に崖っぷちの状態にあったフォルティウスが後攻で試合開始となった。

 フォルティウスはアイスの状態を読みながら第1エンドをブランク(0-0)にすると、第2エンドでは1点を取らされる形となるが、先攻の第3エンドでは、逆にSC軽井沢クラブに1点を与えるような優位な盤面を作った。だが、SC軽井沢クラブのスキップ・上野美優が最終投でハウス端からフォルティウスの黄石ふたつを経由して、ほぼ真横のセンターにヒット&ロールするスーパーショットで2得点。フォルティウスは1-2と逆転を許した。

 このビッグプレーでSC軽井沢クラブの勢いが増すかと思われたが、その流れをきっちり止めたのがフォルティウスのリード・近江谷杏菜だった。追う展開となった第4エンドでコーナーにほぼ完璧なセットアップを見せる。このエンドは結果的にブランクエンドになったものの、続く第5エンドでも1投目でコーナーガード、2投目はセンターの相手の石を弾くヒット&ステイを決めて複数得点の土台を作った。

 相手のミスも絡んだところに、フォルティウスは続くセカンドの小谷優奈がコーナードローとヒットステイ。サードの小野寺佳歩も2本のカムアラウンド(※カードなど他の石の後ろに回り込むショット)と、各選手が狙いどおりのショットを2本そろえて、スキップの吉村紗也香にチャンスを残し大量3点を呼び込んだ。

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 フォルティウスの船山弓枝コーチの記録していたショット率では、この試合の近江谷は97%。

SC軽井沢クラブのリード・金井亜翠香も安定したショットを見せたが、リードの投げ合いという意味では近江谷に軍配が上がった。大会前、近江谷は「とにかくポジションごとに投げ負けないように」と抱負を語っていたが、見事に有言実行した。

 フロントエンドでアドバンテージを生んだことで、スキップの吉村も時間をかけずにブラシを立てることができた。自身のショットでも第8エンドと第10エンドのラストロックで迷わずドローを選択。「自分はできるんだっていう強い自信を持って最後は思いきり投げました」と振り返ったが、それもリードの近江谷がセンターとコーナーに正確なドローを投げ分けて、ウエイトや幅について有益な情報をチームにもたらし続けたからこそ、だろう。

 結果的に第5エンドの3点でフォルティウスが勝利を手繰り寄せ、大願成就。「やってきたことが間違ってなかったと確認できて、すごくうれしいです」とは殊勲の近江谷だ。

 一度、札幌に戻ったチームはさらなる強化を求めて今週末には渡航。2カ月ほどのカナダ遠征ののち、11月に帰国。その後、国立スポーツ科学センターでメディカルチェックなどを受けて、再びカナダへ飛んで、12月上旬にブリティッシュコロンビア州ケロウナで開催される五輪の出場切符をかけた世界最終予選に挑む。

 最終予選では、ノルウェー、アメリカ、トルコ、エストニアなど8チームで2枠を争うことになる。タフな戦いが続くが、そこで勝ち抜くにはこの日、近江谷らが見せたセットアップでのアドバンテージは不可欠だ。

近江谷が言う。

「最終予選も通過点として見られるぐらいに、自分たちの完成度をしっかり上げていきたい」

 目標は、五輪での金メダル。第一関門は突破した。続く関門突破へ、フォルティウスの旅は続く。

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