木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第54回

 今年の夏も記録的な猛暑となりました。これはもう、夏はゴルフをしないほうがいいのではないか。

最近、マジでそう思います。

 ですが、ゴルフにまつわることを仕事にしており、定期的にラウンドをしなければなりません。いわば、酷暑をどう乗りきったか? ということがネタとなり、それが仕事になるため、猛烈な暑さのなかでも休むわけにはいかない......って、なんだかなぁです。

 今年も酷暑日に何度かゴルフをした経験で言うと、あまりの暑さで、どこのゴルフ場もお客さん自体は少なかった印象があります。暑い日にゴルフをし、ヘロヘロになって懲りた人がたくさんいたのではないでしょうか。

 スマホアプリでコースの予約状況を見ていると、猛暑日予報や熱中症警戒アラートが発表されるや、キャンセルが続出。大雨予報でキャンセルというのはわかりますが、今やピーカンでキャンセルですからね。すごい時代になりました。昔は暑いからプールに行っていたのに、暑すぎてプールが閉鎖される世の中ですから......。

 実際に最近のゴルフ場では、熱中症警戒アラートが出ると、キャンセル料を取らないケースがほとんど。それは、助かりますよね。

 さて、猛暑日のゴルフ、どんな感じでラウンドするのがいいのでしょうか。

 自分は基本、クールカートのように乗用カートに送風機能などが付いていないとラウンドしません。ここ2~3年でクールカートに馴染んでしまい、もはや夏場に通常の乗用カートに乗るのは無理です。

 これは、贅沢な話をしているわけではないですよ。自分の命を守る――という意味で言っているのです。

 加えて、家から持ってきたアイスバッグ(氷嚢)に氷を入れて、ラウンドの合間に顔や首の裏側にあてるのは必須です。グリーン周りでは照り返しがキツいので、日傘を差して対応することが多かったように思います。

 アイスバッグの氷は午前中に溶けてしまうので、午後には補充します。そうしないと、危険ですからね。ですが、クラブハウスの製氷機もフル回転しながら、製氷が追いつかないことも......。

 その点、この夏はお客さんが少し減ってよかったです。混んでいたら、午後の氷がもらえなかったかもしれません。

 ちなみに、自分が熱中症にかかる寸前の危険信号は、耳鳴りがして、手足がつることです。

そういった症状が出始めたら、プレーを抑え目にして体力温存に努めます。1~2ホールはそれで様子を見て、それでも体調が戻らなかったらプレーは休みます。

 そんな感じでゴルファーが命がけでラウンドしているなか、ゴルフ場の芝も暑さでバテバテ。枯れる寸前に追いやられています。

 8月の猛暑日、茨城のとあるゴルフクラブに行ったのですが、フェアウェーの芝が焼けて茶色になっている部分が結構ありました。ゆえに、ふだんは乗用カートのフェアウェー乗り入れもできるコースでしたが、その時期は乗り入れ不可でした。

 グリーンはベントでよく手入れされていましたが、芝がやや長めでスピードがいかんせん遅い。スティンプメーターで8フィートでした。芝を刈り込むと枯れやすくなるので、これは仕方がないのかも。

【木村和久連載】人も芝もヘロヘロ...夏のゴルフ反省会 どう...の画像はこちら >>
 翻(ひるがえ)って、自分のホームコースである扶桑カントリー倶楽部は、2グリーン。よって、8月と9月は高麗グリーンを使用して、メインのベントグリーンは休ませています。で、高麗グリーンの速さは、8.5フィート。
8フィートのベントグリーンよりは楽しめましたかね。

 グリーンの話をしましたが、今の日本の夏では1グリーンよりも2グリーンのほうが、運営面において効率的ではないですかね。そう思えてなりません。グリーンがふたつあれば、交互に使えますし、弱ったグリーンを休ませることができますから。

 そもそも日本にはなぜ、1グリーンのコースと2グリーンのコースがあるのか?

 日本にゴルフが伝来した時、最初は英国仕込みの寒冷地向きベントグリーンを導入しました。ところがその後、夏の暑さでグリーンが枯れてしまったとか。そこで、「このままじゃ、夏を越せない」となって、南国系の高麗グリーンを併用しようと、2グリーンが生まれたそうです。

 以降、戦後に造られたコースの多くは2グリーンでした。なにしろその当時、ゴルフ場の名設計家・井上誠一が2グリーンもやむなしと、2グリーンコースを量産。他の設計家もそれを見習ったようです。

 そうした状況に変化が見られたのは、日本初のベント・ワン・グリーンのコースとして千葉のオーク・ヒルズカントリークラブ(1982年開場/ロバート・トレント・ジョーンズJr設計)が開場してからです。

 この頃から、ゴルフ場の設計を外国人の設計家に依頼することが多くなります。

しかも、ベント芝の品種改良が進んでいたこともあって、バブル景気に向かうに連れて、新設のゴルフ場ではベント・ワン・グリーン化が進みました。

 そして現在、予想をはるかに超える気温上昇により、ベント芝の品種改良もその対応に間に合わず、このままだと1グリーンのコースは夏場の営業が苦しくなる、といった危機感を募らせています。

 そんななか、実験的に南国産のバミューダ系の芝をグリーンに植え始めるコースが現われました。

 以前、沖縄でバミューダ系のグリーンでバットを打ちましたが、球の転がりはいいけれど、ボールの曲がりが読めず、結構難しかったことを覚えています。癖の強さでは、高麗グリーンといい勝負かなと。

 現状を踏まえると、今後は多くのコースで、品種改良されたベント芝やバミューダ系の芝のグリーンへと張り替え工事が進むと予想されます。その際、18ホールの1グリーンコースでは、9ホールクローズとか、小さいサブグリーンなどを使うなどして、変則営業を強いられることも。あるいは、ゴルフ場自体、クローズになることも考えられます。

 ホームコースの扶桑CCは27ホールあって、ホール数に余裕があるため、効率的な運営ができています。昭和53年(1978年)開場と、2グリーン全盛時代に造られたコースです。予算があったら、おそらく今残っている高麗グリーンも、ベントグリーンに変えていたことでしょう。

 ですが、そんな余裕もなく、経営会社が変更。

今ではPGMの傘下となりました。

 結果的には、夏に強い高麗グリーンを残しておいてよかったと思います。たいして維持費もかからず、枯れることもなく、メンテナンスがラクですからね。現在休ませているベントグリーンは、耐熱シートなどをかぶせて養生しています。

 わずか2カ月ほどの高麗グリーンとのつき合いですが、それなりに楽しいです。グリーンが変わることで、コースのレイアウトも変わるので、違ったコースといった趣があり、プレーしていても妙な新鮮味を感じます。

 日本独自で「邪道」とも言われた高麗&ベントの2グリーン。そのレイアウトが今や、一番コスパが取れて管理がしやすいとは、何とも皮肉な話ですよね。

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