【MLB】佐々木朗希が中継ぎでのメジャー復帰濃厚 「期待外れ...の画像はこちら >>

前編:連覇に向かうドジャース 日本人2投手が担うもの

【ロバーツ監督からの厳しい評価と】

"令和の怪物"がメジャーのマウンドに戻ってくる−−。

 ロサンゼルス・ドジャースの3Aチーム、オクラホマシティの一員として、佐々木朗希は2度のテストを無事にクリアした。敵地で迎えた現地時間9月19日、21日のタコマ・レイニアーズ戦で、合計2イニングを無安打無失点3奪三振。

1度目の登板では最速100.1マイル(161.1キロ)の速球と鋭いスプリットでマイナーリーガーたちを圧倒すると、2度目はわずか8球で3者凡退に切ってとった。もちろん短いイニングではあるが、格の違いを感じさせる2登板ではあった。

「ロウキは非常によかった。球の状態もいい。(23日には)アリゾナに飛んで我々と合流する予定で、そこで話をしていく。チャンスを得るために必要な準備は済ませている」

 佐々木のマイナーでの登板内容と結果を聞いたドジャースのデイブ・ロバーツ監督はそう語り、佐々木のメジャー復帰を明言した。シーズン終盤の大事な時期にチームに呼び戻す決断をしたのは、ここから再合流させても十分に戦力になると感じられたからにほかならない。

 実際、その独特のフォームには躍動感があり、速球、スプリット、カッターには勢いとキレがあった。「(前回やったのは)覚えていないくらい前」というほど久々の中2日の登板も苦にせず、テンポのいい投球が目立った。何より、その表情が吹っきれたかのようにスッキリしているのも印象的だった。準備は整いつつあるのだろう。

 ここまで長い1年だった。

夢に見たメジャーの舞台で1勝こそ挙げたものの、本領を発揮できないまま5月13日に「右肩のインピンジメント症候群」で負傷者リスト(IL)入り。ILから復帰後も9月上旬までは3Aでのリハビリ登板でもなかなかいい結果が出ず、選手を擁護する言葉が多いロバーツ監督から珍しく厳しいコメントを頂戴したこともあった。

「パフォーマンスとして結果が出ていない。もっと球威やキレを上げる必要がある。3Aの打者相手ならもっと結果を出すべきだ。私たちはペナントレースを戦っているんだ。うちの投手陣に入るには、もっと緊迫感を持って支配的な投球を見せないといけない」

 その頃には、佐々木のルーキーシーズンはこのまま終わってしまうと誰もが考えたに違いない。

【来年以降に生かすためにも中継ぎで全力を】

 ただ、ブルペンに配置転換して迎えた過去2度の登板内容と結果は首脳陣に期待させるには十分なものがあった。今の佐々木はブルペンで結果を出そうと新しい役割を懸命に学んでいる。その姿から、復帰への意思と精神的な成長が感じられるのも事実である。

「チーム状況的には中継ぎを必要としている。"来年は先発"という前提でどっちがいいかという話をされて、別に何も強制はなかったですけど、特に今の時期、チーム状況的には中継ぎをやってくれればうれしいという感じで提案されました。

今季、ポストシーズンも含めて経験できることだったり、投げられる現実的なところを考えて、中継ぎのほうがチームのためにもなる。自分としてもいろんな経験ができるのかなと思いました」

 もちろんシーズン中の配置展開は簡単なことではない。ブルペンからの登板では、先発のようにじっくりと肩を温める時間はない。マウンドに立つまでのルーティンを大事にする佐々木は「中継ぎは難しい」と繰り返し述べ、「自分に適性があるとは思わない」とも述べている。

 マイナーでの登板時はだいたい出番がいつ頃になるかは決まっていたが、メジャー復帰後はそうもいかない。回またぎ、回の途中からの登板は可能なのか。チーム状態次第で連投はできるのか。さまざまな意味で未知数であり、どの程度貢献できるのかを推測するのは容易ではない。

 その一方で、佐々木の最大の武器である速球、スプリットというふたつの球種を1、2イニングで攻略するのは誰にとっても至難ではあるのだろう。準備の難しささえクリアすれば、ブルペンの貴重な武器になり得るかもしれない。

「シンプルに聞こえるかもしれないけれど、カギは100マイル(160キロ)以上の速球が投げられているかどうか。それだけの球速が出ていさえすれば、ロウキはそう簡単には打たれないよ」

 MLB.comの分析担当であるデビッド・アドラー氏はそう語り、速球に勢いが戻れば活躍は可能と明言していた。

 時を同じくして、ドジャースのブルペンは苦しんでいる。タナー・スコット、ブレイク・トライネンといったベテランたちは不調に悩み、チーム最大の弱点と目されるようになった。2年連続世界一に向け、チームがリリーフのテコ入れを必要としているまさにそのタイミングで佐々木は戻ってくる。

「(プレーオフのような)そういった環境でしか経験できないこともある。いろいろと吸収して来年につなげたい。少しでもチームに貢献できると思う」

 そう意欲を語った背番号17はこの秋、どんなストーリーを紡いでいくのか。

 佐々木がここまでドジャース入団時の期待に応えられていないのは誰も否定できない現実である。それでも特にニューヨーク、ロサンゼルスのような大都会のチームでは、最も重要な10月以降に活躍できればそれまでの停滞はほとんど帳消しになる。"期待外れの存在"から、"ブルペンの救世主"へ。

 厳しかった1年の最後に、ポストシーズンでチームを救う佐々木の復活のシナリオがまもなくスタートする。

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